劣後社債は普通社債より返済順位が低い
社債は、企業が投資家から資金を借りるために発行する債券である。投資家は利息を受け取り、満期には元本の償還を受けるのが基本的な仕組みだ。
ただし、発行体が倒産した場合、すべての債権者が同じ順番で返済を受けるわけではない。劣後社債は、普通社債などの上位債務に比べて弁済順位が低い。
一般的なイメージは次の通り。
| 順位 | 主な対象 | 見方 |
|---|---|---|
| 1 | 銀行借入、担保付き債務など | 優先的に弁済されやすい |
| 2 | 普通社債、一般債権 | 劣後債より上位 |
| 3 | 劣後社債 | 普通社債より下位、株式より上位 |
| 4 | 普通株式 | 最も損失を受けやすい |
つまり劣後社債は、株式ほどではないが、普通社債よりは損失を受けやすい位置にある。
発行条件の説明では、劣後状態が生じた場合に上位債権者が優先される設計であることが前提になる。名前に「社債」と付いていても、普通社債と同じ安全度ではない。
図解:返済順位と利回りの関係
なぜ劣後社債は利回りが高いのか
劣後社債の利回りが高くなりやすい理由は、投資家が負うリスクが普通社債より大きいからである。
主なリスクは次の通り。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 信用リスク | 発行体が倒産・財務悪化した場合、元本や利息が支払われない可能性がある |
| 劣後リスク | 普通社債などの上位債務が先に弁済される |
| 利払繰延リスク | 条件によっては利息の支払いが延期されることがある |
| 期限前償還リスク | 発行体の裁量で早期償還され、想定より早く運用が終わることがある |
| 金利リスク | 金利上昇時に債券価格が下がりやすい |
| 流動性リスク | 中途売却時に希望価格で売れない、または大きく値下がりすることがある |
日本証券業協会も、社債には信用リスク、価格変動リスク、流動性リスクがあると説明している。満期まで保有すれば必ず安全、という商品ではない。
劣後社債の場合、この通常の社債リスクに「返済順位が低い」という条件が上乗せされる。だから利回りが高い。
普通社債との違い
普通社債と劣後社債の違いを単純化すると、次のようになる。
| 項目 | 普通社債 | 劣後社債 |
|---|---|---|
| 利回り | 低めになりやすい | 高めになりやすい |
| 弁済順位 | 劣後債より上位 | 普通社債より下位 |
| 価格変動 | 発行体・金利環境で変動 | 信用不安時により大きく動きやすい |
| 商品性 | 比較的シンプル | 利払繰延、期限前償還、長期年限が付くことがある |
| 初心者向きか | 条件次第 | 仕組みを理解しないと難しい |
ここでつまずきやすいのは、「劣後社債も社債だから株式より安全」と考えてしまうことだ。
たしかに弁済順位だけを見れば、劣後社債は普通株式より上位に置かれる。ただし、発行体の信用不安が強まると、債券価格は大きく下がることがある。満期前に売る必要がある人にとっては、価格変動リスクもかなり現実的な問題になる。
期限付き劣後債と永久劣後債
劣後債には、大きく分けて期限付き劣後債と永久劣後債がある。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 期限付き劣後債 | 満期が定められている劣後債 |
| 永久劣後債 | 満期がない、または実質的に非常に長い劣後債 |
個人向けに販売される商品では、「初回コール日」が強調されることがある。たとえば「5年後に期限前償還可能」と書かれていると、5年満期のように見えやすい。
しかし、期限前償還は投資家の権利ではなく、発行体の判断で行われることが多い。5年後に必ず償還されるとは限らない。
ここはかなり重要だ。5年で戻ると思って買った商品が、実際には10年、20年、あるいはそれ以上の長期保有リスクを持つ場合がある。
メリットは高い利回りと定期的な利息収入
劣後社債のメリットは、普通社債や国債より高い利回りを期待しやすいことだ。
利息収入を重視する投資家にとって、一定のインカムを得られる点は魅力に映る。株式配当より利払い条件が明確に見える商品もあり、ポートフォリオの中で債券枠として検討されることもある。
ただし、利回りだけで判断すると危ない。
劣後社債の利回りは、元本毀損、利払繰延、中途売却価格の下落、発行体の信用悪化を引き受ける対価である。高利回りの商品ほど、なぜその利率が必要なのかを先に考えたい。
デメリットは損失時の深さ
最大のデメリットは、発行体が悪化したときの損失が大きくなりやすいことだ。
普通社債でも、発行体が倒産すれば元本や利息が支払われない可能性がある。劣後社債はさらに弁済順位が低いため、残余財産が少ない場合には回収が厳しくなる。
また、債券価格は金利にも影響される。一般に、金利が上がると既発債の価格は下がりやすい。年限が長い劣後債ほど、この価格変動の影響を受けやすくなる。
中途売却も簡単とは限らない。市場環境が悪い時や発行体の信用不安が出ている時は、買い手がつきにくくなり、売却価格が大きく下がることがある。
初心者が誤解しやすい3つの点
劣後社債で初心者が誤解しやすい点は、だいたいこの3つに集まる。
| 誤解 | 実際の見方 |
|---|---|
| 債券だから安全 | 劣後社債は普通社債よりリスクが高い |
| 利回りが高いからお得 | 高利回りには信用・劣後・流動性などの理由がある |
| 大企業や銀行が発行しているから安心 | 発行体が有名でも、経営悪化時には損失リスクがある |
特に金融機関の劣後債は、自己資本を補う目的で発行されることがある。銀行や保険会社の名前を見ると安心しやすいが、商品性まで安全になるわけではない。
「知っている会社」と「元本が安全」は別の話である。
買う前に確認したいチェックリスト
劣後社債を検討するなら、少なくとも次の点は確認したい。
- 普通社債ではなく劣後社債であることを理解しているか
- 弁済順位が普通社債より低いことを確認したか
- 利払繰延条項の有無を読んだか
- 期限前償還が「発行体の権利」なのか「投資家の権利」なのか確認したか
- 満期、初回コール日、実質的な保有期間を区別できているか
- 中途売却時の価格下落と流動性リスクを受け入れられるか
- 発行体の格付、財務状況、事業リスクを確認したか
- 生活資金や近く使うお金を投資に回していないか
このチェックに詰まるなら、無理に買う必要はない。劣後社債は、債券投資の入門商品というより、普通社債、金利、信用リスクをある程度理解した後に検討する商品である。
どんな人に向いているか
劣後社債が向いているのは、利回りだけでなく、発行体の信用力と商品条項を読める人である。
向いている可能性がある人は次の通り。
- 債券の価格変動と信用リスクを理解している
- 発行体の財務状況や格付を確認できる
- 途中売却しなくてもよい余裕資金で投資できる
- 利払繰延や期限前償還なしのケースも想定できる
- 一つの発行体に資金を集中させない
逆に、投資初心者、元本割れを避けたい人、預金の代わりを探している人、5年後に必ず資金を使う予定がある人には向きにくい。
安全資産として債券を持ちたいなら、まずは個人向け国債、高格付債券、分散型の債券ファンドなどから仕組みを確認した方がよい。
まとめ
劣後社債は、高い利回りと引き換えに、普通社債より低い弁済順位を受け入れる債券である。
押さえるポイントは次の通り。
- 劣後社債は普通社債より返済順位が低い
- 高利回りはリスクの対価である
- 利払繰延、期限前償還、長期年限に注意する
- 債券でも価格変動と元本損失の可能性がある
- 預金や国債の代わりとして見るとリスクを取り違えやすい
劣後社債は「債券だから安全」ではなく、「債券の中でも株式に近い性格を一部持つ商品」と考える方が実態に近い。
利回りを見る前に、最悪の場合に何が起きるかを読む。劣後社債では、その順番が大事である。