ペアローンの仕組み
通常の住宅ローンは、1人が契約者になります。
一方、ペアローンでは、
- 夫が住宅ローン契約をする
- 妻も住宅ローン契約をする
という形で、同じ住宅に対して2本の住宅ローンを組みます。
それぞれが自分のローンの債務者となり、相手のローンについて連帯保証人になるケースが一般的です。つまり「自分のローンだけ払えば終わり」という単純な形ではありません。
たとえば夫が3,500万円、妻が2,500万円を借りる場合、夫は自分の3,500万円の債務者であり、同時に妻のローンについて保証関係を負うことがあります。妻も同じです。
ここは金融機関によって扱いが違うため、契約前に必ず確認したいところです。
イメージ
住宅価格 6,000万円
夫ローン 3,500万円
妻ローン 2,500万円
住宅の持分も、借入割合や自己資金の負担割合に応じて設定されることが多いです。
夫 58%
妻 42%
ここで持分と実際の負担割合が大きくズレると、贈与や住宅ローン控除の計算で問題になることがあります。
メリット
1. 借入可能額が増えやすい
ペアローンでは、夫婦それぞれの収入をもとに審査を受けます。
単独ローンでは届きにくい物件でも、2人で借りることで購入可能額が広がることがあります。
例
| 項目 | 単独ローン | ペアローン |
|---|---|---|
| 年収 | 600万円 | 600万円+500万円 |
| 借入余力 | 限定的 | 増えやすい |
| ローン契約 | 1本 | 2本 |
ただし、借りられる金額が増えることと、無理なく返せることは別です。
銀行の審査に通る金額ではなく、出産、育児、教育費、転職、介護まで含めた家計の返済余力で判断したいところです。
2. 住宅ローン控除を2人で使える可能性がある
条件を満たせば、夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になることがあります。
共働きで所得税や住民税をそれぞれ負担している場合、単独ローンより控除を使いやすいケースがあります。
ただし、住宅ローン控除は「借りた人」「持分」「実際の負担割合」「住宅の要件」などで扱いが変わります。ペアローンにすれば必ず有利になる、という制度ではありません。
2026年6月時点では、国土交通省が住宅ローン減税について、令和8年1月1日から令和12年12月31日までの入居分に適用期限を延長する内容などを案内しています。ただし、省エネ性能、床面積、所得、入居時期、住宅の種類によって条件は変わります。
さらに、控除できるのは原則として本人の所得税・住民税の範囲です。借入残高が大きくても、税額が少なければ控除を使い切れないことがあります。
「2人で控除できる可能性がある」ことと、「必ず得になる」ことは分けて考えましょう。
3. 団体信用生命保険にそれぞれ加入できる場合がある
金融機関によっては、夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入できます。
それぞれのローンに対して保障が付くため、万一のときの安心材料になることがあります。
ただし、片方に万一のことがあっても、もう一方のローンまで自動的に完済されるとは限りません。ペアローン用の団信や夫婦連生団信など、商品ごとに保障範囲が違うため、ここは金利と同じくらい丁寧に確認したい部分です。
デメリット
1. 諸費用が増える
ペアローンではローン契約が2本になります。
そのため、
- 事務手数料
- 印紙代
- 登記費用
- 保証料
- 団信や疾病保障の上乗せ費用
などが増える場合があります。
金利だけを見ると有利に見えても、初期費用や総返済額まで入れると印象が変わることがあります。
2. 離婚時の整理が難しい
ペアローンでいちばん揉めやすいのは、離婚や別居が起きたときです。
離婚しても、住宅ローン契約は自動的には消えません。
- 家に誰が住むのか
- ローンを誰が払うのか
- 売却するのか
- 片方の名義を外せるのか
- 持分をどう清算するのか
こうした問題が残ります。
片方が住み続ける場合でも、もう片方がローンや保証関係から簡単に外れられるとは限りません。借りる前から、最悪の場合の売却や清算まで想定しておく方が現実的です。
3. 収入減少に弱くなることがある
共働きを前提に大きく借りると、片方の収入が減ったときに返済計画が崩れやすくなります。
たとえば、
- 育児による時短勤務
- 産休・育休
- 転職
- 病気
- 親の介護
などです。
ペアローンは「2人で稼げるから強い」仕組みに見えますが、裏返すと「2人の収入が前提になる」仕組みでもあります。
ペアローンが向いている人
ペアローンは、夫婦それぞれに安定した収入があり、将来も共働きを続ける見込みが高い家庭に向いています。
特に、単独ローンでは希望する物件に届かないものの、2人で返済しても家計に余裕が残る場合は選択肢になります。
目安としては、次のような家庭です。
| 向いているケース | 理由 |
|---|---|
| 夫婦とも収入が安定している | 2本のローンを継続して返しやすい |
| どちらも住宅ローン控除を使える税額がある | 控除メリットを活かせる可能性がある |
| 団信や保障内容を2人分確認できている | 万一のときの返済リスクを整理しやすい |
| 片方の収入減少時でも生活防衛資金がある | 出産・育休・転職時に家計が詰まりにくい |
ただし、借入可能額が増える分、購入価格も上がりやすくなります。
ペアローンでは「借りられる金額」ではなく、「片方の収入が減っても返せる金額」を基準に考えることが重要です。
ペアローンで後悔しやすいケース
ペアローンで後悔しやすいのは、購入時点の世帯年収だけを基準にしてしまうケースです。
たとえば、次のような場合は注意が必要です。
| 後悔しやすいケース | 起きやすい問題 |
|---|---|
| 借入可能額いっぱいまで借りる | 教育費や修繕費が増えたときに余裕がなくなる |
| 出産・育休後の収入を見込んでいない | 片方の収入減少で返済比率が急に上がる |
| 離婚時の売却・持分整理を考えていない | 住む人、払う人、名義の整理で揉めやすい |
| 団信の保障範囲を見ていない | 片方に万一があっても全額完済されない場合がある |
| 住宅ローン控除だけで判断する | 税額・借入残高・住宅要件で効果が変わる |
離婚した場合でも、住宅ローン契約は自動的には消えません。
家にどちらが住むのか、ローンを誰が払うのか、売却してもローンが残らないか。少し重い話ですが、借りる前に一度は考えておく方がよいです。
投資家目線で考えるポイント
住宅は、消費であり、資産でもあります。
ペアローンを組むときは、希望物件に届くかどうかだけでなく、家計のバランスシートで見たいところです。
無理な借入を避ける
銀行が貸してくれる金額と、安心して返せる金額は違います。
特にペアローンでは、世帯年収を強く見せやすいため、物件価格が上がりやすくなります。
判断軸は、借入可能額ではなく、住居費が手取り収入の中でどこまで収まるかです。
住居費
= 住宅ローン返済額
+ 管理費・修繕積立金
+ 固定資産税の月割り
+ 駐車場代など
この合計を見ずにローン返済額だけで判断すると、家計はきつくなりやすいです。
将来のライフイベントを考慮する
ペアローンは、今の共働き収入だけで判断しない方がよいです。
- 出産
- 育休
- 転職
- 介護
- 教育費
- 車の買い替え
- 住宅設備の修繕
これらが重なると、月々の返済余力は想像以上に小さくなります。
少なくとも、片方の収入が一時的に落ちても数か月から1年は持ちこたえられる現金を残しておきたいところです。
ペアローンと収入合算の違い
ペアローンと混同されやすいのが、収入合算です。
大きな違いは、ローン契約が2本か1本かです。
| 項目 | ペアローン | 収入合算 |
|---|---|---|
| ローン契約数 | 2本 | 1本 |
| 主な形 | 2人がそれぞれ借りる | 1人の借入にもう1人の収入を加える |
| 住宅ローン控除 | 2人で使える可能性あり | 契約形態や持分により異なる |
| 諸費用 | 高くなりやすい | 比較的抑えやすい |
| 借入可能額 | 増えやすい | 増えやすい |
| 手続き | 複雑になりやすい | ペアローンよりシンプルなことが多い |
どちらが有利かは、年収、持分、自己資金、団信、将来の働き方、税額によって変わります。
「借入額を増やす方法」としてだけ見るのではなく、家計リスクの分担方法として比較するのが大切です。
収入合算には、主に連帯保証型と連帯債務型があります。
| 形 | ざっくりした仕組み | 注意点 |
|---|---|---|
| 連帯保証型 | 主債務者1人のローンに、もう1人の収入を加えて審査する | 連帯保証人は住宅ローン控除を使えないケースが一般的 |
| 連帯債務型 | 1本のローンを2人で返済する | 持分や負担割合に応じて控除対象になる場合がある |
| ペアローン | 2人がそれぞれ別のローンを組む | 手数料・団信・保証関係が2人分になりやすい |
ここは読者が特につまずきやすいところです。
「夫婦で収入を合わせる」という意味では似ていますが、契約、控除、団信、保証の扱いはかなり違います。
よくある誤解
誤解1:借りられるだけ借りた方が得
違います。
住宅価格が上がると、ローン返済だけでなく、固定資産税、管理費、修繕費、家具家電、保険料も重くなります。
ペアローンでは借入可能額が増えやすい分、予算を上げすぎないブレーキが必要です。
誤解2:夫婦で借りればリスクが分散される
一部は分散されますが、新しいリスクも増えます。
片方の収入減少、離婚、健康状態の変化、転職などが起きると、単独ローンより整理が難しくなることがあります。
誤解3:住宅ローン控除だけで元が取れる
住宅ローン控除は大きな制度ですが、それだけで判断するのは危険です。
金利、手数料、団信、維持費、売却時の価格、将来の収入変化まで含めて考える必要があります。
税制メリットは「おまけ」ではありませんが、無理な借入を正当化するための理由にもなりません。
まとめ
ペアローンには、次のメリットがあります。
- 借入可能額を増やしやすい
- 住宅ローン控除を2人で使える可能性がある
- 希望する住宅に届きやすくなる
一方で、
- 離婚リスク
- 収入減少リスク
- 諸費用増加
- 団信や保証関係の複雑さ
もあります。
住宅購入で大切なのは、「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら無理なく返せるか」です。
ペアローンは便利な仕組みですが、家計に余白がない状態で使うと、あとから身動きが取りにくくなります。
借入前に、返済額、持分、団信、住宅ローン控除、離婚・売却時の整理まで、一度セットで確認しておきましょう。
ペアローンを検討する場合は、まず「借入可能額」ではなく「無理なく返せる金額」を確認しましょう。
複数の金融機関で金利・団信・手数料を比較し、将来の収入変化も含めて返済計画を立てることが大切です。
出典
- 国税庁「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」
- 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国土交通省「住宅ローン減税等の延長・拡充が閣議決定されました!」
- 三菱UFJ銀行「ペアローン・収入合算(住宅ローン)」
- 三菱UFJ銀行「ペアローンの仕組みとは?収入合算との違い」
- PayPay銀行「ペアローン・収入合算」
- りそな銀行「住宅ローンのペアローンとは?収入合算との違いとメリット・デメリット」