まず結論
貸倒引当金とは、貸付金や売掛金などが将来回収できなくなる可能性に備え、回収不能になりそうな金額をあらかじめ費用として見積もる会計処理です。
銀行だけの用語に見えますが、取引先に商品を売って後払いで代金を受け取る一般企業でも使われます。銀行では貸出先の返済能力、一般企業では売掛先の信用状態が主な確認ポイントになります。
計算のイメージ
考え方は、回収できないかもしれない金額を合理的に見積もることです。
貸倒引当金 = 債権残高 × 回収不能と見込む割合
たとえば、貸付金が1,000億円あり、そのうち2%が回収できないと見込むなら、貸倒引当金は20億円です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 貸付金残高 | 1,000億円 |
| 回収不能と見込む割合 | 2% |
| 貸倒引当金 | 20億円 |
ここで大事なのは、20億円の現金を別の金庫に移すわけではない点です。貸倒引当金は会計上の見積もりであり、将来の損失リスクを今の損益に反映するための処理です。
利益への影響
貸倒引当金を増やすと、その期の費用が増えるため、利益は減りやすくなります。銀行株の決算で「与信費用が増えた」「信用コストが上がった」と読まれる場面は、貸倒リスクの見積もりが利益を押し下げていることがあります。
反対に、景気や貸出先の状況が改善し、過去に積んだ引当金が多すぎると判断されれば、引当金を取り崩して利益が押し上げられることもあります。ただし、取り崩しによる利益は本業の稼ぐ力そのものとは分けて見たいところです。
貸倒引当金と実際の貸倒れの違い
貸倒引当金は「将来起きるかもしれない損失への備え」、実際の貸倒れは「本当に回収できなくなった損失」です。
| 項目 | 貸倒引当金 | 実際の貸倒れ |
|---|---|---|
| 性質 | 見積もり | 確定した損失 |
| タイミング | 損失が確定する前 | 回収不能が明確になった後 |
| 見るポイント | リスクへの備え | 損失の発生 |
貸倒引当金が多いから危険、少ないから安全、と単純には言えません。リスクが高いのに引当金が少ないほうが問題になる場合もありますし、保守的に多めに備えている場合もあります。
銘柄を見るときの使い方
銀行や金融機関を見るときは、貸倒引当金の金額だけでなく、増減した理由を確認します。
| 見る項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 引当金の増減 | 貸出先の信用リスクが変わっているか |
| 不良債権の状況 | 回収が難しい債権が増えていないか |
| 正味受取利息 | 利息収益で信用コストを吸収できるか |
| 景気感応度 | 景気悪化時に貸倒れが増えやすい業種へ偏っていないか |
実際に使うなら、決算短信や説明資料で「利益が減った理由」を読むときに役立ちます。貸倒引当金の積み増しで利益が減ったのか、本業の収益力が落ちたのかでは、受け止め方がかなり変わります。
まとめ
貸倒引当金は、将来の回収不能に備えて、あらかじめ損失リスクを費用として見積もる会計上の仕組みです。短期的には利益を減らしますが、リスクを見えやすくする役割があります。
投資で見るときは、「引当金が増えたから悪い」と決めつけず、なぜ増えたのか、貸出先の質はどうか、他の収益で吸収できるのかを合わせて確認する。ここまで見ると、表面的な利益の増減だけに振り回されにくくなります。