まず結論
投資詐欺は、怪しい商品だけを売るとは限りません。株、FX、暗号資産、IPO、未公開株、ファンド、AI運用など、実在する商品や技術に偽の運営会社、利益画面、著名人の名前を重ねます。
警察庁の2025年確定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額は1,288.0億円。前年より件数は48.5%、被害額は47.9%増えました。最初の接触はバナー等広告とダイレクトメッセージで全体の約8割を占めます。
知識量より、「先生の指示だから」「今を逃したくない」と確認手順を飛ばすことが危険です。入金前に5項目を一つずつ外部情報で確かめます。
最新事例に見る5つの手口
SNS投資グループ
著名人の無料セミナーや投資コミュニティを装う広告から、LINEなどの閉じたグループへ誘導します。グループ内では「先生」「アシスタント」と複数のサクラが登場し、利益報告を重ねます。偽サイトで利益を表示し、最初だけ少額を出金させた後、高額入金や出金手数料を求める流れです。
警察庁の公表例には、著名人を名乗る相手やサクラのいる投資グループを信じ、1億円を超える被害に遭ったケースもあります。
AI診断・自動売買
「AI診断」「高い勝率」「自動で運用」といった言葉でサイトへ集め、分析結果を受け取るためとしてSNSへ誘導します。金融市場でAIを使う運用自体は存在しますが、AIという表示だけでは、運営会社、運用実態、損失リスクを確認できません。
月利や勝率だけを示し、検証期間、最大損失、手数料、出金条件を説明しない勧誘は、技術ではなく数字の見せ方を疑う場面です。
暗号資産・偽取引所
正規の暗号資産交換業者で購入させた暗号資産を、指定したウォレットや偽取引所へ送らせます。画面には利益が表示されても、実際に運用されているとは限りません。出金時に税金、保証金、本人確認費用などを求められたら、追加送金を止めます。
ロマンス投資詐欺
SNSやマッチングアプリで関係を深め、「二人の将来資金を作ろう」と投資へ誘います。恋愛感情と投資判断が結びつくため、第三者へ相談しにくくなります。相手の本人確認と、紹介された事業者・投資先の確認は分けて考える必要があります。
IPO・未公開株の特別枠
「上場すれば値上がりする」「一般には出ない特別枠」と急がせ、偽の申込金や株式代金を払わせます。金融庁は、IPO銘柄の取引勧誘を行えない高速取引行為者の名称をかたる事例などを公表しています。
未公開株や有価証券の募集では、勧誘者の登録だけでなく、発行会社、契約書面、払込先、有価証券届出書の有無を確認します。金融庁の警告一覧に名前がないことだけで安全とは判断できません。
騙されないための5つのチェックポイント
1 どこで、誰から勧誘されたか
広告やDMからLINEなどへ移動し、知らない「先生」や「アシスタント」が加わったら、その場の説明を信用確認に使わないことです。著名人本人の公式サイトや、金融機関の公式窓口から情報をたどり直します。動画や認証マークも本人の証明にはなりません。
2 登録と連絡先を公式情報で照合できるか
金融商品取引業者や暗号資産交換業者などは、金融庁の「金融事業者一括検索機能」で確認できます。ただし、登録業者の名前や登録番号を盗用する詐欺もあり、登録があるだけで投資内容の安全が保証されるわけではありません。
検索結果に載る電話番号、ドメイン、法人名が、連絡している相手と一致するかまで照合します。
3 資金の送付先を説明できるか
個人名義口座、入金のたびに変わる口座、無関係な法人、指定ウォレット、電子マネーでの支払いは強い危険信号です。法人名義であっても、法人口座が悪用される場合があるため、名義だけでは判断しません。
4 損失と出金条件が書面で示されているか
正規の投資にも元本割れがあります。利益だけでなく、価格変動、手数料、解約・出金条件、損失の可能性が説明されているかを確認します。「出金には税金や保証金の先払いが必要」と後から言われた場合は、追加で払わず相談します。
5 家族や第三者へそのまま説明できるか
「限定」「今日まで」「誰にも言わないで」は、比較や相談の時間を奪う言葉です。商品名、事業者、仕組み、送付先、出金条件を紙に書き、相手と利害関係のない人へ見せます。説明できない部分が一つでもあれば、入金を止める理由として十分です。
被害に気づいた直後にすること
追加送金を止め、メッセージ、広告、アカウント、サイト画面、URL、振込明細、口座情報、暗号資産の取引IDを保存します。相手を問い詰めて履歴を消される前に証拠を確保します。
銀行振込なら、警察と振込先金融機関へ早く連絡します。警察相談専用電話は「9110」、消費者ホットラインは「188」です。投資詐欺を名目にした被害回復業者から、調査費や返金手数料を求められる二次被害にも注意が必要です。
まとめ
投資詐欺は、AIや暗号資産が危険だから起きるのではなく、実在するテーマに偽の人物、偽サイト、偽の利益を組み合わせて確認手順を外させます。
勧誘経路、登録と連絡先、送付先、出金条件、第三者確認。この5点を相手の説明とは別の経路で確かめ、分からない項目が残るうちは入金しない。それが、派手な利益率を見抜こうとするより実用的な防止策です。
出典
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」
- 警察庁・SOS47「SNS型投資詐欺」
- 金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」
- 金融庁「金融事業者一括検索機能」の運用開始について
- 確認日: 2026-07-26