金利のある世界とは何か
ここでいう「金利のある世界」は、現金を短期国債などに置くだけでも一定の収益を比較できる環境を指します。米国のTreasury Billは、購入価格と満期に受け取る額面の差が利息になります。
暗号資産の利回りを見るときも、まずこの基準と比べます。DeFiで高い利回りが表示されていても、それは米国債の利息に加えて、借り手、コード、価格変動、流動性などのリスクを引き受けた対価かもしれません。
USDTが担う役割
USDTは、暗号資産市場でドル単位の決済や担保として使われます。価格の大きい変動を避けたい取引参加者が、BTCやETHからUSDTへ移ることもあります。
ただし、USDTを持つだけで米国債の利回りを受け取れるわけではありません。Tetherが準備資産をどのように管理しているかと、利用者がUSDTをどこで運用するかは別の論点です。
金利が上がる局面
短期国債の利回りが上がると、発行体が準備資産から得る収益が増える可能性があります。一方、DeFiでは次のような変化が起きます。
- 安全資産で得られる利回りが上がり、低いDeFi利回りの魅力が薄れる
- 借入コストが上がり、レバレッジ取引や流動性需要が弱くなる
- 高い利回りを維持するには、より大きなリスクプレミアムが必要になる
- 利回りを求める資金が短期商品とDeFiの間を移動しやすくなる
金利上昇は暗号資産に一律の追い風でも逆風でもありません。発行体の収益には追い風でも、DeFiの借り手には負担になることがあります。
金利が下がる局面
安全資産の利回りが低下すると、投資家がより高い収益を求める可能性があります。DeFiの利用や暗号資産取引が活発になる場面もありますが、利回りの低下を無視して資金が流れ込むと、レバレッジや価格連動のリスクが膨らみます。
利回りが高いから資金が集まるのか、資金が集まるから利回りが下がるのか。数字だけでなく、借り手の需要と流動性を見ます。
3つの市場を同じ表で見る
| 対象 | 収益の源泉 | 金利変化の影響 | 追加リスク |
|---|---|---|---|
| 米国債 | 満期までの利息・差額 | 基準利回りが変わる | 金利・価格・為替 |
| USDT | 原則として保有だけでは利息なし | 準備資産の運用環境に影響 | 発行体・ペッグ |
| DeFi | 借入利息・手数料・報酬 | 借り手需要や資金移動に影響 | コード・清算・流動性 |
投資家の確認ポイント
「利回り何%」という表示を見たら、次の順で読み替えます。
- 米国債などの基準利回りはいくらか
- 上乗せ分は、誰のどんな需要が支払うのか
- USDTの価格連動が崩れた場合、損益はどうなるか
- 担保価値が下落したとき、どの価格で清算されるか
- 取引停止やスマートコントラクト停止時に資金を戻せるか
まとめ
金利のある世界では、USDT・DeFi・米国債を一つの「利回り商品」として扱わないことが大切です。米国債は基準利回り、USDTは決済・担保、DeFiはリスクを引き受けた上乗せ利回りとして役割が違います。
暗号資産の利回りを見るときは、数字の大きさより、誰が支払い、何が壊れると収益が消えるのかを確認します。
出典
- 米国財務省 TreasuryDirect「Treasury Bills」
- Tether「Legal」
- Tether「Transparency」
- 日本銀行「Financial System Report」
- IMF「How Stablecoins Can Improve Payments and Global Finance」