USDTは利息付き預金ではない
USDTをウォレットや取引所に置いているだけで、Tetherから利息が支払われるわけではありません。USDTの価値は米ドルへの連動を目指すもので、保有数量に応じたクーポンや預金金利を持つ商品とは仕組みが違います。
それでも「USDTが金利を生む」と言われるのは、発行体がトークン発行の見合い資産を管理し、その資産から収益を得る場合があるためです。
米国債ビジネスの流れ
短期の米国債、いわゆるTreasury Billは、額面より安く買い、満期に額面を受け取る差額が利息になります。Tetherの公式資料では、準備資産には現金・現金同等物・その他の資産が含まれ、準備資産の内訳は開示ページや報告書で示されます。
流れを簡略化すると次の通りです。
- 利用者や取引業者がUSDTを必要とする
- 発行体が条件に沿ってUSDTを発行する
- 発行体が受け取った資産を準備資産として管理する
- 一部を短期国債などで運用し、収益を得る
- 償還に備えて、売却しやすい資産や現金も保有する
この収益は、まず発行体の収益です。USDTを持つ利用者に、そのまま分配されるとは限りません。
利回りの3種類を混同しない
| 利回りの種類 | 収益の源泉 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 準備資産の運用収益 | 短期国債などの利息・差額 | 発行体・流動性・資産構成 |
| 取引所のサービス利率 | 貸借や顧客向けサービス | 事業者・出金制限 |
| DeFiの利回り | 借り手の利息・交換手数料・報酬 | コード・清算・価格連動 |
「年率○%」という数字だけでは、誰が支払うのか、何を失うと利回りが消えるのかが分かりません。特にDeFiでは、利回りの高さがスマートコントラクトや借り手への信用リスクの裏返しになる場合があります。
金利が上がると無条件に安全になるのか
短期国債の利回りが上がれば、同じ準備資産から得られる収益が増える可能性があります。ただし、発行残高が増えると、償還に応じるための資産も増やさなければなりません。利回りが上がったからといって、流動性や発行体の管理能力が自動的に高まるわけではありません。
また、米国債は価格変動のない現金ではありません。短期国債は満期が近いほど金利変動の影響を抑えやすい一方、売却時の価格、決済、通貨、取引相手の問題は残ります。
投資家が見るべき資料
- 準備資産の種類と満期
- 流通量と準備資産の関係
- 報告書の作成者と対象範囲
- 償還の対象者、最低額、手数料
- 利益が準備資産に残るのか、誰かに分配されるのか
まとめ
USDTが「金利を生む」とき、中心にあるのは発行体が準備資産を運用して得る収益です。USDTの保有者が自動的に利息を受け取る構造ではありません。
米国債の利回り、発行体の収益、DeFiの運用利率は似た数字に見えても、収益源とリスクが違います。利回りを見る前に、資金の流れと損失の経路を分けて確認します。
出典
- Tether「Legal」
- Tether「Transparency」
- Tether「FAQs」
- 米国財務省 TreasuryDirect「Treasury Bills」
- 日本銀行「Financial System Report」