まず結論
すかいらーくHDは、ゴーストレストランに近い運営モデルをすでに試している。2021年2月、東京・新中野にガスト、バーミヤン、から好しの3ブランドを同じ厨房で扱う「デリバリー・テイクアウト専門店」を開設した。客席を持たない宅配専門業態を広くゴーストレストランと呼ぶなら、この店舗はテイクアウトにも対応する複合型だ。
ただし、2026年8月13日に公表した第2四半期決算説明資料では、ゴーストレストランの新規出店計画や売上高、利益率を個別に開示していない。今回の決算を「ゴーストレストラン本格展開」と読む根拠はない。
面白い仕組みではある。問題は収益の見え方だ。既存店の厨房、調達、物流、アプリ会員を使えば売上を重ねやすい半面、注文処理が複雑になり、宅配手数料や配達費、人件費が増えれば利益は残らない。株価材料になるには、店舗数より増分利益の開示が欲しい。
2021年に何を始めたのか
すかいらーくHDは2021年2月26日、グループ初のデリバリー・テイクアウト専門店を新中野に開設した。当時の発表内容は次の通り。
- ガスト、バーミヤン、から好しの人気商品を同じ厨房で提供
- 既存店でカバーできない宅配エリアへ出店
- 2021年度に約10店の出店を予定
- エリア内の複数業態で配達員を共有する「共同デリバリー」を構想
- 当時は既存店約3,100店のうち約2,000店で宅配、ほぼ全店でテイクアウトに対応
さらに、ガストの厨房で「から好し」を扱う複合業態も展開した。2021年1月には、から好し併設ガストが600店を突破している。専用の新店舗を増やさなくても、既存厨房へ別ブランドの商品を載せられる。ここが、すかいらーく型の強みだった。
純粋なゴーストレストランとは少し違う
| 比較項目 | 一般的なゴーストレストラン | 新中野の専門店 | 既存店へのブランド併設 |
|---|---|---|---|
| 客席 | なし | なし | あり |
| 販売方法 | 主にデリバリー | デリバリー・テイクアウト | 店内・デリバリー・テイクアウト |
| 厨房 | 宅配用厨房 | 3ブランド共用 | 既存店厨房を活用 |
| 狙い | 初期投資や家賃の抑制 | 宅配空白エリアの補完 | 既存資産から売上を上乗せ |
| 3197で確認したい数字 | 注文数と採算 | 店舗別売上・利益 | 厨房生産性と増分利益 |
この違いは大きい。すかいらーくHDの優位性は、客席をなくすこと自体ではなく、多ブランドの商品開発、セントラルキッチン、物流、店舗網を組み合わせられる点にある。反面、既存店へのブランド追加は、厨房の作業負荷や提供時間、品質管理を複雑にする。
2026年時点の事業基盤
2026年6月末のグループ店舗数は、一時閉店中を含め3,214店。第2四半期決算資料では、約1,600万人のアプリ会員基盤を店舗、テイクアウト、宅配、通販につなぐワンストップ基盤と位置付けた。会社資料によると、アプリ会員は非会員に比べて来店頻度が1.57倍、組単価が108%となっている。
これは注文導線としては強い。自社アプリから既存客を宅配やテイクアウトへ回せれば、外部プラットフォームだけに集客を頼るより顧客接点を持ちやすい。ただ、会員数や利用頻度は利益額ではない。宅配チャネルの売上構成、客単価、配達原価、注文1件当たりの限界利益は開示されていない。
直近決算は増収増益、通期予想も上方修正
| 項目 | 2026年上期 | 前年同期比 | 修正後通期予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,425億円 | +9.7% | 5,000億円 |
| 事業利益 | 170億円 | +13.4% | 370億円 |
| 営業利益 | 169億円 | +20.9% | 350億円 |
| 中間利益 | 102億円 | +29.2% | 205億円 |
国内既存店は売上高が前年同期比106.5%、客数が101.6%、客単価が104.8%だった。会社は通期の営業利益予想を335億円から350億円へ、年間配当予想を26円から27円へ引き上げた。
数字は良い。ただし、会社は増収要因として国内既存店の成長、新店、業態転換を示しており、ゴーストレストラン型店舗の寄与は分けていない。決算の改善をそのまま宅配専門店の成功と結び付けることはできない。
株価材料として見る3点
1. 空き厨房ではなく、混雑時間帯の生産性
注文が少ない時間帯に別ブランドを追加できれば、厨房と人員の稼働率は上がる。ところが、夕食時など店内注文と宅配注文が重なる時間帯には、調理遅延や品質低下が起きやすい。見るべきKPIは導入店舗数ではなく、注文1件当たりの調理時間と人件費、キャンセル率、リピート率だ。
2. 売上より宅配の利益率
宅配売上が増えても、配達費やプラットフォーム手数料、包材費が重ければ利益は薄い。すかいらーくHDは2026年上期に営業利益率7.0%を確保したが、宅配チャネルだけの採算は分からない。宅配売上比率と増分利益が見えない限り、テーマ先行で高く評価しにくい。
3. 多ブランドの強みが複雑さへ変わらないか
ガスト、バーミヤン、から好しを一つの拠点から届けられれば、家族内の異なる需要を取り込める。半面、食材、調理工程、注文画面が増えるほど現場は複雑になる。原価低減とブランド追加を同時に進めても、提供時間や顧客満足が悪化しないか。ここは月次売上だけでは見えにくい。
リスクと確認点
- 2026年8月13日の会社資料に、ゴーストレストランの新規展開数や独立採算は開示されていない
- 2021年度に示した約10店の出店予定について、今回の資料では現在の店舗数を確認できない
- 宅配代行手数料、配達人件費、包材費が売上増を相殺するリスクがある
- 店内、テイクアウト、宅配の同時運営で厨房負荷が高まると、提供速度と品質に影響し得る
- グループ店舗数の増加にはM&Aで加わったしんぱち食堂111店が含まれ、すべてを既存ブランドの自律成長とは見なせない
まとめ
すかいらーくHDは、2021年に3ブランド複合のデリバリー・テイクアウト専門店を開き、ガストへの「から好し」併設も広げた。既存の厨房、物流、商品開発、アプリ会員を使えるため、ゴーストレストラン型モデルとの相性は悪くない。
ただ、2026年8月13日の決算で示されたのは全社の増収増益と通期上方修正であり、ゴーストレストランの再拡大ではない。テーマとしては分かりやすい。投資材料としてはまだ数字が足りない。宅配売上の構成比、注文単位の利益、専門店数が開示されて初めて、3,214店のネットワークがどれだけ稼ぐのかを評価しやすくなる。
本記事は公開資料を基に情報を整理したもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
関連ページ
出典
- すかいらーくホールディングス「すかいらーくグループ初『デリバリー・テイクアウト専門店』を新中野にオープン」、2021年2月26日公表
- すかいらーくレストランツ「『から好し』併設ガスト、600店舗突破」、2021年1月21日公表
- すかいらーくホールディングス「2026年度第2四半期決算説明会資料」、2026年8月13日公表
- すかいらーくホールディングス 決算説明会資料
- すかいらーくグループの宅配
- すかいらーくホールディングス ブランド別店舗数