決算サマリー

2024年9月期は、ティアフォーの上場前に監査対象として開示された連結実績である。売上高は38.71億円、売上総利益は14.28億円となったが、販売費及び一般管理費が86.58億円に膨らみ、営業損失は72.29億円となった。営業外では補助金収入28.49億円が計上されたものの、経常損失は48.34億円、親会社株主に帰属する当期純損失も48.34億円で着地した。

項目2024年9月期実績前年参考増減率・前年差会社計画進捗率
売上高38.71億円12.94億円参考 +199.1%--
営業損益-72.29億円開示なし---
経常損益-48.34億円-36.14億円参考 12.20億円の損失拡大--
親会社株主に帰属する当期純損益-48.34億円-37.93億円参考 10.41億円の損失拡大--
EPS-113.35円-471.66円参考 損失幅76.0%縮小--

前年参考は単体ベースを含むため、連結ベースの厳密な前年比ではない。読むべき点は、売上規模が立ち上がる一方で、営業段階では赤字が売上高を大きく上回っていたことである。

定量評価

指標直近実績比較対象見方
EPS成長率参考 +76.0%単体ベース前期比株式分割調整後の参考値。赤字EPSであり、利益成長とは読みにくい。
営業損失率-186.7%売上高38.71億円比売上より営業赤字が大きく、事業立ち上げ期の負担が重い。
売上総利益率36.9%売上総利益14.28億円粗利は出ているが、販管費86.58億円を吸収できていない。
ROIC開示なし-営業損失段階のため、通常のROIC評価は適さない。
PER算定不可非上場・赤字非上場期で市場価格がなく、赤字のためPER評価は使いにくい。

数字から見ると、2024年9月期は売上の芽が出た段階であり、利益の再現性を語るには早い。市場が見るなら、売上高よりも営業損失率と営業キャッシュ・フローの改善余地である。

ポジティブ要因

Mobility Serviceが最大区分

Mobility Serviceの外部顧客向け売上高は18.03億円で、全体の46.6%を占めた。地方自治体や交通事業者向けの自動運転車両、導入支援、運用支援が、同社の初期売上を支えた。

Solution Serviceも一定規模に

Solution Serviceは13.23億円、構成比34.2%となった。Autoware関連のライセンス、技術支援、ハードウェア販売、政府委託事業などが含まれ、研究開発型の売上基盤として機能している。

非財務KPIは立ち上がりを示す

実証実験・実装地域数は29地域、公道の車両運用台数は15台、閉鎖空間の車両運用台数は52台、開発プロジェクト顧客数は7社だった。商用化前の段階でも、導入実績と顧客接点は積み上がっていた。

財務活動で資金を確保

財務活動によるキャッシュ・フローは89.22億円のプラスだった。株式発行による収入74.73億円が中心で、研究開発先行の資金需要を株主資本で支えた形である。

リスク要因

営業赤字が売上の約1.9倍

営業損失は72.29億円で、売上高38.71億円の約1.9倍に相当する。売上総利益14.28億円は出ているが、販管費86.58億円が重く、通常の成長企業としてはまだ損益レバレッジが見えにくい。

営業キャッシュ・フローは大幅流出

営業活動によるキャッシュ・フローは45.73億円のマイナスだった。補助金受取23.37億円があっても、税引前損失48.30億円、売上債権、契約資産、棚卸資産の増加が資金を使った。

補助金収入への依存

営業外収益の中心は補助金収入28.49億円だった。補助金は研究開発を支える重要な資金だが、本業の売上総利益ではない。補助金なしの営業段階でどこまで赤字を縮められるかが課題である。

Development Serviceはまだ小さい

Development Serviceの売上高は7.44億円、構成比19.2%にとどまった。将来の量産化やライセンス収益につながる可能性はあるが、2024年9月期時点では全社損益を変える規模ではない。

財務安全性

2024年9月期末の自己資本比率は82.1%で、純資産は180.07億円、現金及び現金同等物は144.20億円だった。表面的な安全性は高い。ただし、営業キャッシュ・フローは45.73億円のマイナスで、投資活動も8.55億円のマイナスだった。株式発行で資金を厚くした一方、事業そのものはまだ資金を消費している。赤字の深い研究開発企業では、自己資本比率よりキャッシュ流出の速度が先に見られる。

業界動向との関連

自動運転は、地方交通の担い手不足、物流省人化、SDV、AI開発と結びつく長期テーマである。ティアフォーはAutowareを軸に、地方自治体、交通事業者、自動車OEM、研究機関にまたがるポジションを取る。ただし2024年9月期の数字を見る限り、業界は商用量産より実証・導入支援が中心であり、収益モデルはまだ固まっていない。

株価への示唆

2024年9月期は非上場期の実績であり、赤字決算のためPERによる理論株価試算は適さない。上場後にこの期の数字を読むなら、テーマ性よりも赤字の深さを先に見るべきだろう。売上高38.71億円に対して営業損失72.29億円、営業キャッシュ・フロー45.73億円のマイナスという構図は、期待先行のIPO評価では許容されても、上場後に継続的な評価を受けるには改善確認が必要になる。市場はまだ、Autowareの技術価値がどの程度の粗利と継続収益に変わるかを測っている段階である。

今期の総括

2024年9月期は、Mobility ServiceとSolution Serviceを中心に売上38.71億円を作り、実証・実装地域数29地域、開発プロジェクト顧客数7社まで進んだ。事業の立ち上がりは見える。一方で、営業損失72.29億円、営業CFマイナス45.73億円という資金消費も大きい。IPO前の先行投資期らしい決算である。

来期見通し

2025年9月期の実績は、売上高64.10億円、営業損失105.06億円、親会社株主に帰属する当期純損失47.99億円となった。売上高は2024年9月期から大きく伸びたが、営業赤字も拡大している。2024年9月期時点での読み筋としては、売上拡大が粗利と営業キャッシュ・フローの改善につながるかを次期で確認する必要があった。

総合判断

総合判断は弱気である。自己資本比率82.1%と現金残高144.20億円は厚いが、営業損失率-186.7%、営業CFマイナス45.73億円は重い。評価が変わるには、Mobility Serviceの導入支援やDevelopment Serviceの開発案件が、単発売上から継続収益と量産関連収益へ移ることが条件になる。

出典

  • 株式会社ティアフォー「有価証券届出書(新規公開時)」(2026年6月9日提出)