決算サマリー

2025年9月期は、自動運転の実証実験案件、車両販売、開発受託、政府委託事業の進捗が売上を押し上げた。売上高は64.10億円と前期比65.6%増えたが、販売費及び一般管理費は121.56億円まで膨らみ、営業損失は105.06億円へ拡大した。補助金収入55.25億円が営業外収益に入ったものの、経常損失は55.04億円で、損益の底上げにはなお距離がある。

項目2025年9月期実績2024年9月期実績増減率・前年差会社計画進捗率
売上高64.10億円38.71億円+65.6%--
営業損益-105.06億円-72.29億円32.77億円の損失拡大--
経常損益-55.04億円-48.34億円6.70億円の損失拡大--
親会社株主に帰属する当期純損益-47.99億円-48.34億円損失幅0.35億円縮小--
EPS-108.29円-113.35円損失幅4.5%縮小--

売上は強く伸びた。ただし、営業赤字は売上高を上回っており、売上成長だけでは市場が安心しにくい決算である。

定量評価

指標直近実績比較対象見方
EPS成長率+4.5%前期比赤字EPSの損失幅は縮小したが、金額面では-108.29円と赤字が続く。
営業損失率-163.9%前期 -186.8%率は改善したが、営業損失額は105.06億円に拡大した。
売上総利益率25.7%前期 36.9%車両販売や外注費増により、増収の割に粗利率は下がった。
ROIC開示なし-営業損失段階であり、通常のROIC評価は適さない。
PER算定不可非上場・赤字2025年9月期時点では市場価格がなく、赤字のためPER評価は使いにくい。

数字から見ると、事業規模は広がっているが、粗利率、営業損失、営業キャッシュ・フローの三つがまだ厳しい。市場は「成長しているか」より「赤字が縮む成長か」を見る局面である。

ポジティブ要因

売上高は前期比65.6%増

売上高は38.71億円から64.10億円へ拡大した。Mobility Serviceで実証実験案件と車両販売が伸び、Development Serviceでも既存プロジェクトのスケールアップと新規顧客獲得が進んだ。

Solution Serviceが最大売上区分

2025年9月期の外部顧客向け売上は、Solution Serviceが28.12億円で構成比43.9%を占めた。政府委託事業やソフトウェアライセンス、技術支援が売上拡大を支えた形である。

非財務KPIは前進

実証実験・実装地域数は29地域から50地域へ、開発プロジェクト顧客数は7社から9社へ伸びた。公道の車両運用台数も15台から25台へ増え、自動運転社会実装の活動量は増えている。

補助金収入が経常損失を圧縮

営業外収益には補助金収入55.25億円が計上された。研究開発型企業として公的支援を取り込めている点は、資金繰りと研究開発継続の下支えになっている。

リスク要因

営業赤字が売上を上回る

営業損失は105.06億円で、売上高64.10億円を大きく上回った。営業損失率は-163.9%で、売上の伸びがまだ営業利益に変わっていない。ここはかなり重い。

営業キャッシュ・フローの流出

営業活動によるキャッシュ・フローは72.82億円のマイナスとなり、前期の45.73億円のマイナスから流出が拡大した。補助金受取43.07億円があっても、税引前損失、売上債権、契約資産、棚卸資産の増加が資金を使った。

粗利率の低下

売上総利益率は25.7%となり、前期の36.9%から低下した。車両販売の拡大、仕入高、人件費、外注費の増加が背景で、規模拡大がそのまま高収益化につながっていない。

顧客・補助金依存の濃さ

2025年9月期は主要顧客であるアイサンテクノロジー向けが売上高の19.9%、NEDO向けが17.8%を占めた。大型案件や委託事業の進捗に左右されやすく、売上の継続性をまだ慎重に見たい。

財務安全性

自己資本比率は73.5%で、前期の82.1%から低下したが、表面的な財務健全性は高い水準にある。ただし、総資産は175.80億円、現金及び現金同等物は69.32億円まで減少した。営業キャッシュ・フローは72.82億円のマイナスで、売上債権や契約資産、棚卸資産も増えている。赤字企業では自己資本比率だけでは足りない。売上より利益、利益よりキャッシュで見る必要がある。

業界動向との関連

自動運転は、地方交通の担い手不足、公共交通維持、物流省人化、SDV化と結びつく政策テーマである。ティアフォーはAutowareを軸に、地方自治体、交通事業者、自動車OEM、研究機関をまたぐ立ち位置を取る。ただし業界はまだ実証から商用運用への移行期で、量産ライセンスや保守運用収入が厚く積み上がる段階には至っていない。テーマは強いが、利益モデルはこれから検証される。

株価への示唆

2025年9月期は非上場期の実績であり、赤字決算のためPERによる理論株価試算は適さない。上場後の評価で使われやすいのは、自動運転・AI・SDVというテーマ性、売上成長率、IPO需給、そして赤字許容度である。売上高64.10億円に対し営業損失105.06億円、営業キャッシュ・フローは72.82億円のマイナスという数字は、市場がまだ完全には信用しにくい。仮に投資家が強気に見る場合でも、Development Serviceの量産化案件やリカーリング収益が、粗利率とキャッシュ・フローに表れることが前提になる。

今期の総括

2025年9月期は、事業面では自動運転の実証地域数や開発顧客数が伸び、売上高も65.6%増と大きく拡大した。一方で、営業損失は105.06億円に広がり、営業キャッシュ・フローの流出も拡大した。IPO前の成長投資フェーズとはいえ、利益より先に資金消費が目立つ決算である。

来期見通し

2026年9月期の会社予想は、売上高84.84億円、営業損失112.39億円、親会社株主に帰属する当期純損失67.36億円である。売上は前期比32.4%増を見込むが、研究開発費95.50億円を予定しており、営業赤字はさらに拡大する。次期も黒字化より、自動運転レベル4の社会実装、AIベース車両開発、半導体開発を優先する計画である。

総合判断

総合判断は弱気である。売上高の65.6%増、実証地域数50地域、開発顧客9社という進捗は評価できるが、営業損失105.06億円と営業CFマイナス72.82億円は重い。IPO後に評価が変わるには、単発の実証・委託事業から、継続収益と量産関連収益へどれだけ移れるかの確認が必要である。

出典

  • 株式会社ティアフォー「有価証券届出書(新規公開時)」(2026年6月9日提出)
  • 株式会社ティアフォー「2026年9月期の業績予想について(訂正)」(2026年6月29日)