決算サマリー

2026年9月期は、2025年10月から2026年3月までの中間実績に、2026年4月から9月までの見込みを加えた通期予想である。売上高は84.84億円、営業損失は112.39億円、親会社株主に帰属する当期純損失は67.36億円を見込む。増収ではあるが、営業赤字は前期の105.06億円から拡大する計画で、黒字化の近さを示す内容ではない。

項目2026年9月期予想2025年9月期実績増減率・前年差2026年9月期中間実績中間消化率
売上高84.84億円64.10億円+32.4%43.69億円51.5%
営業損益-112.39億円-105.06億円7.33億円の損失拡大-41.02億円36.5%
経常損益-65.93億円-55.04億円10.89億円の損失拡大-23.85億円36.2%
親会社株主に帰属する当期純損益-67.36億円-47.99億円19.37億円の損失拡大-24.70億円36.7%
EPS-138.02円-108.29円損失幅が27.5%拡大-55.19円-

売上は伸びる。だが、売上84.84億円に対して営業損失112.39億円という構図は重い。市場は成長率だけでなく、赤字がいつ縮むのかをかなり冷静に見る局面である。

定量評価

指標直近実績・予想比較対象見方
EPS変化-138.02円前期 -108.29円損失幅は27.5%拡大。公募予定株式数を含めた訂正後の数値である。
営業損失率-132.5%前期 -163.9%売上増で損失率は改善するが、営業赤字額はなお112.39億円と大きい。
研究開発費対売上高112.6%通期研究開発費95.50億円売上を上回る研究開発投資が続き、利益より社会実装と量産化準備を優先している。
ROIC開示なし-営業損失段階のため、通常のROIC評価は投資効率を読み誤りやすい。
PER市場価格未形成上場前赤字予想であり、PERによる株価評価は実務上なじみにくい。

数字から見ると、ティアフォーは売上成長企業というより、赤字を許容して技術基盤と導入実績を積み上げる研究開発先行型のIPOである。

訂正開示の反映

2026年6月29日の訂正では、2026年6月9日公表の業績予想に対し、コード番号の記載追加、公募予定株式数を反映したEPSの修正、営業損失の説明文追加などが行われた。主要な売上高、営業損失、経常損失、当期純損失の通期予想額そのものは変わっていない。

項目訂正前訂正後読み方
2026年9月期予想EPS-148.62円-138.02円公募予定株式数1744万9600株を含めた予定期中平均株式数で再計算された。
2026年9月期中間EPS-55.47円-55.19円株式数前提の修正により損失幅が小さく表示された。
営業外費用の中間前年同期比+209.1%+208.9%端数処理に近い修正で、業績認識を変えるほどの差ではない。

この訂正は売上や損益の本体を変えるものではないが、IPO直前のEPS前提に関わる。投資家向けには、希薄化を含めた1株指標の読み替えが必要になる。

ポジティブ要因

Development Serviceの伸び

Development Serviceの通期売上高は24.85億円、前期比86.8%増を見込む。自動車OEMや特殊用途車両メーカー向けの開発支援が伸びる想定で、受託開発から量産化ロードマップへつながるかが見られる。

実証・実装地域数の積み上がり

実証実験・実装地域数は2024年9月期の29地域、2025年9月期の50地域に対し、2026年9月期中間時点で40地域となった。半期で前期通期に近づいており、自動運転レベル4の社会実装テーマとしての進捗は見える。

売上総利益率の改善

通期売上総利益は29.14億円、前期比76.6%増を見込む。売上総利益率は34.3%となり、ハードウェア仕入や外注費を抱えながらも、案件構成や規模拡大による粗利改善が想定されている。

補助金収入が研究開発を下支え

営業外収益は58.23億円を見込み、経済産業省やNEDOなどの研究開発補助金が多くを占める。補助金は本業利益ではないが、研究開発先行の資金負担を一部和らげる要素である。

リスク要因

営業赤字の大きさ

通期の営業損失は112.39億円で、売上高84.84億円を上回る。営業損失率は-132.5%であり、売上成長が直ちに損益改善へつながっているとは言いにくい。ここは市場が最も疑いやすい部分である。

研究開発費の重さ

研究開発費は95.50億円、前期比11.6%増を見込む。自動運転車両の量産化、AIベース車両開発、半導体開発に向けた追加費用が背景で、技術開発の遅れや投資回収の後ずれは赤字期間を長くする。

持分法投資損失と一過性費用

中間期には持分法投資損失7.86億円を計上した。会社は上場関連費用5.38億円と持分法適用関連会社の一過性減損5.51億円を足し戻すと、経常損失は前期並みと説明するが、実際の通期経常損失は65.93億円である。

IPO需給と希薄化

訂正後EPSは公募予定株式数1744万9600株を含めて算出された。オーバーアロットメントに関連する第三者割当増資分は考慮されていないため、上場後の株式数前提や需給の見方にはなお幅がある。

財務安全性

今回の業績予想資料には、貸借対照表、営業キャッシュ・フロー、フリーキャッシュ・フロー、自己資本比率は掲載されていない。そのため、財務安全性は損益計画と調達前提からの限定的な評価にとどまる。通期研究開発費95.50億円、営業損失112.39億円という計画は、資金調達を伴う上場局面では説明可能でも、上場後は売上総利益の積み上がりとキャッシュ消費の速度が厳しく見られる。売上より利益、利益よりキャッシュ。この順番で確認したい企業である。

業界動向との関連

日本では道路交通法改正により、限定条件下で自動運転レベル4の運行が可能となっている。国土交通省は2030年度までに自動運転サービス車両数1万台を目標に掲げ、経済産業省もモビリティDXやSDVを政策テーマに置く。ティアフォーはAutowareを中核にこの流れに乗るが、業界全体はまだ実証から商用運用へ移る途中である。制度面の追い風はあるが、投資家が見るのは導入地域数だけでなく、継続課金と量産案件がどれだけ粗利を生むかである。

株価への示唆

ティアフォーは上場前で市場価格が形成されておらず、2026年9月期も赤字予想であるため、PERによる理論株価試算は適さない。むしろ初期の株価形成では、自動運転・AI・SDVというテーマ性、グロース市場の地合い、海外投資家の需要、公募規模、そして赤字をどこまで許容するかが重なる。良い意味では、Development Serviceの86.8%増収予想や実装地域数の増加はテーマ株として見やすい。悪い意味では、営業損失112.39億円と研究開発費95.50億円が大きく、期待先行だけでは長続きしにくい。市場はまだ、量産化と収益化の距離を測っている段階だろう。

今期の総括

2026年9月期予想は、売上高84.84億円、前期比32.4%増という成長を示す一方、営業損失は112.39億円へ拡大する見通しである。Autowareを軸に実証地域、車両運用台数、開発顧客数は増えているが、研究開発費と人員増強が利益を大きく押し下げる。今期は利益獲得の年ではなく、上場資金も使いながら社会実装と技術開発を先に進める局面である。

来期見通し

2027年9月期の会社計画は、この資料では開示されていない。したがって、来期を数値で評価する段階にはない。確認したいのは、2026年9月期下半期に見込む売上高41.15億円、営業損失71.37億円、研究開発費の追加負担が計画通りに進むかである。Development Serviceの顧客数13社、Mobility Serviceの導入地域、Solution Serviceのライセンス収入が、単発案件から継続収益へどれだけ移るかが来期以降の読み筋になる。

総合判断

総合判断は弱気である。売上成長と政策テーマは明確だが、2026年9月期予想では営業損失が売上高を上回り、赤字の縮小より研究開発の加速が優先されている。上場前のためPERやROICでの評価もまだ難しい。次に見るべき点は、訂正後EPSそのものより、売上総利益率の改善が研究開発費を吸収する道筋と、上場後のキャッシュ消費がどの程度落ち着くかである。

出典

  • 株式会社ティアフォー「2026年9月期の業績予想について」(2026年6月9日)
  • 株式会社ティアフォー「2026年9月期の業績予想について(訂正)」(2026年6月29日)