チャットプラス 598A|2026年6月期 第3四半期 営業利益率48.0% AI AgentPlusへの単価移行が評価軸 強み ✓ ARR 11.98億円 ✓ ストック型収益 97.4% ✓ 自己資本比率 61.2% 確認点 ⚠ 総アカウント数は2249件へ減少 ⚠ ARRの伸びは四半期で濃淡 ⚠ 上場後の採用・開発投資

決算サマリー

項目3Q累計実績前年同期通期会社計画進捗率
売上高9.12億円四半期資料なし12.22億円74.7%
営業利益4.38億円四半期資料なし5.00億円87.5%
経常利益4.37億円四半期資料なし4.92億円88.9%
純利益2.87億円四半期資料なし3.22億円89.1%
EPS71.74円四半期資料なし80.50円89.1%

前年同期は四半期財務諸表を作成していないため、前年同期比は算出できない。通期計画に対する利益進捗は9カ月時点で87〜89%に達し、売上より利益が先行している。

定量評価

指標直近実績比較対象見方
EPS進捗率89.1%通期会社予想80.50円第4四半期に必要なEPSは8.76円
営業利益率48.0%前期通期36.2%SaaSの固定費吸収が進んでいる
ROIC直接開示なし投下資本内訳が不足軽い資産構造だが簡易算定は行わない
PER推移算定保留上場直後で履歴不足株価履歴が蓄積してから利益成長と比較する

第4四半期に通期計画達成のため必要な売上高は約3.10億円、営業利益は約0.62億円で、必要営業利益率は約20.1%となる。計画上は広告宣伝、人材採用、開発費などの増加を織り込んでいる。

ポジティブ要因

高利益率のSaaSモデル

3Q累計の売上総利益率は76.0%、営業利益率は48.0%だった。売上高の97.4%をストック型収益が占め、継続課金収入が固定費を吸収している。赤字先行型のSaaSとは収益構造が異なる。

AI AgentPlusが単価上昇を支える

新規上場申請資料では、AI AgentPlusのARRが2025年6月期末の3.46億円から2026年6月期3Q末の4.98億円へ増加した。全社の平均ARPAも46.3万円から53.2万円へ上昇している。

ARRと財務基盤の拡大

ARRは2025年6月期末の10.77億円から11.98億円へ増えた。現金及び預金は6.89億円から8.31億円、純資産は4.19億円から6.94億円へ増加し、自己資本比率は43.9%から61.2%へ改善した。

リスク要因

総アカウント数は減少

サービス別アカウント数の合計は2025年6月期末の2328件から2249件へ減った。AI AgentPlusは136件から197件へ増えたが、ChatPlusは2182件から2037件へ減少しており、顧客基盤の裾野は縮小している。

ARR成長は単価移行への依存度が高い

ChatPlusのARRは7.07億円から6.61億円へ減少し、AI AgentPlusとFAQPlusが補った。高単価サービスへの移行が止まれば、総アカウント数減少の影響がARRへ表れやすくなる。

上場後の成長投資

通期会社予想は販管費に採用、昇給、展示会、リスティング広告などを織り込む。これらを増やせば短期の利益率は下がり得る。市場が見るのは費用削減ではなく、投資後にARR成長が再加速するかどうかである。

小規模組織と競争環境

生成AI型チャットボットは大手クラウド、CRM、国産SaaSとの競争が激しい。少人数で高収益を実現している反面、営業・開発・セキュリティ対応を同時に拡張する際の採用力と組織運営が制約になり得る。

財務安全性

2026年3月末の総資産は11.33億円、純資産は6.94億円、自己資本比率は61.2%である。現金及び預金8.31億円に対し、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金の合計は0.52億円にとどまる。負債合計も前期末から0.96億円減少した。第3四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されていないが、貸借対照表から見た資金余力は厚い。

業界動向との関連

会社資料では、テキスト型自動対話システム市場が2024年度の182億円から2030年度に508億円へ拡大するとの外部調査を示している。人手不足と問い合わせ自動化は追い風だが、市場拡大だけで勝敗は決まらない。回答精度、既存業務システムとの連携、セキュリティ、導入後の運用負担が継続率を左右する。

株価への示唆

黒字、生成AI、SaaS、高利益率という組み合わせは上場直後の評価材料になりやすい。ただし、PERの過去レンジはまだなく、短期の株価だけで事業価値を測る段階ではない。ARR成長率、AI AgentPlusの契約数、平均ARPA、Churnを並べて見る必要がある。総アカウント数が下げ止まり、単価上昇と新規獲得が両立する場合に、利益成長の持続性が確認しやすくなる。

今期の総括

3Q累計は売上高9.12億円、営業利益4.38億円で、利益は通期計画の87.5%まで進んだ。高収益の源泉はストック型収益と高単価AIサービスへの移行である。課題はChatPlusの減少をアップセルだけで補う構造から、新規獲得も伴う成長へ戻せるかにある。

来期見通し

会社は2026年6月期に売上高12.22億円(前期比19.6%増)、営業利益5.00億円(同35.4%増)、経常利益4.92億円(同33.3%増)、純利益3.22億円(同30.9%増)を予想する。期末・年間配当予想は株式分割後で3円。通期着地後は、上場で得た信用力と資金余力を採用・開発へどう配分するかが次期成長率を左右する。

総合判断

総合判断は中立。営業利益率48.0%、ARR11.98億円、自己資本比率61.2%は強い。反面、総アカウント数は減少し、成長はAI AgentPlusへの単価移行に依存している。次回は通期ARR、サービス別契約数、Churn、成長投資後の営業利益率を確認したい。

出典

本記事は、チャットプラスが開示した決算資料と、日本取引所グループの新規上場会社資料を基に作成しています。

  • 「東京証券取引所グロース市場への上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」、チャットプラス、開示日: 2026-07-15
  • 「2026年6月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)」、チャットプラス、開示日: 2026-07-15
  • 「新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)」、チャットプラス、日本取引所グループ掲載日: 2026-06-11