決算サマリー

2026年6月期第3四半期累計の損益は次の通りである。

項目2026年6月期3Q累計利益率
売上高9.12億円-
売上総利益6.93億円76.0%
営業利益4.38億円48.0%
経常利益4.37億円47.9%
四半期純利益2.87億円31.4%

売上高9.12億円に対して営業利益4.38億円であり、営業利益率は48.0%である。

売上規模はまだ10億円前後だが、利益率はかなり高い。SaaSのストック型収益が中心で、売上の増加に対して固定費を抑えられていることが利益率に表れている。

ただし、上場後は採用、開発、広告宣伝、内部管理体制の強化に費用が増える可能性がある。現在の高い利益率をそのまま将来へ直線的に伸ばすより、成長投資後にどこまで利益率を維持できるかを確認したい。

2025年6月期通期との比較

2025年6月期通期と、2026年6月期3Q累計を並べると次の通りである。

項目2025年6月期通期2026年6月期3Q累計見方
売上高10.22億円9.12億円3Q時点で前期通期の89.3%
営業利益3.69億円4.38億円3Q時点で前期通期を上回る
経常利益3.69億円4.37億円3Q時点で前期通期を上回る
純利益2.46億円2.87億円3Q時点で前期通期を上回る
ARR10.77億円11.98億円ストック収益基盤は拡大

3Q累計時点で、営業利益、経常利益、純利益はいずれも2025年6月期通期を上回っている。

売上高は前期通期にまだ届いていないが、3Q時点で89.3%まで進んでいる。単純な四半期均等ペースでは、通期売上高は12億円前後が意識される水準である。

もっとも、IPO前後には上場関連費用や販売促進費、人材採用費が増える可能性がある。単純年換算で利益を評価しすぎないことは重要である。

直近4QのARR:伸びは続くが、伸び率は鈍化

直近4QのARR推移は次の通りである。

期末時点ARR
2025年6月期4Q10.77億円
2026年6月期1Q11.65億円
2026年6月期2Q11.71億円
2026年6月期3Q11.98億円

ARRは、2025年6月期4Qの10.77億円から2026年6月期3Qの11.98億円へ増加した。直近4Qで見れば、ストック型収益の基盤は拡大している。

ただし、四半期ごとの伸び方には濃淡がある。

期間ARR増加率
2025年6月期4Q → 2026年6月期1Q+8.2%
2026年6月期1Q → 2026年6月期2Q+0.5%
2026年6月期2Q → 2026年6月期3Q+2.3%

1Qで大きく伸びた後、2Qと3Qは伸び率が落ち着いている。ここをどう見るかが重要である。

高成長SaaSとして市場が評価するなら、ARR成長率の再加速が欲しい。一方で、利益率が非常に高いため、年率10%台後半でも高収益キャッシュマシンとして評価される可能性はある。

チャットプラスの場合、ARRの伸び方はアカウント数よりも単価構成に左右される。

サービス別ARR:AI AgentPlusが成長の主役

サービス別ARRを見ると、構造変化がはっきり出ている。

期末時点ChatPlusAI AgentPlusFAQPlusARR合計
2025年6月期4Q7.07億円3.46億円0.24億円10.77億円
2026年6月期1Q7.19億円4.17億円0.28億円11.65億円
2026年6月期2Q6.77億円4.62億円0.31億円11.71億円
2026年6月期3Q6.61億円4.98億円0.38億円11.98億円

ChatPlusのARRは、2025年6月期4Qの7.07億円から2026年6月期3Qの6.61億円へ減少している。

一方で、AI AgentPlusは3.46億円から4.98億円へ増加した。FAQPlusも0.24億円から0.38億円へ増えている。

つまり、直近の成長はChatPlus本体ではなく、AI AgentPlusとFAQPlusが支えている。

これは良い面と注意点の両方がある。

良い面は、生成AIを活用した高単価サービスへの移行が進んでいることだ。ChatPlusの下位プランが減っても、AI AgentPlusが伸びればARRは維持・拡大できる。

注意点は、ChatPlus本体の減少をAI AgentPlusが常に補えるとは限らないことだ。AI AgentPlusの伸びが鈍った場合、ARR成長率も鈍化しやすい。

アカウント数:総数は減少、単価構成は改善

サービス別アカウント数は次の通りである。

期末時点ChatPlusAI AgentPlusFAQPlus合計
2025年6月期4Q2,182136102,328
2026年6月期1Q2,172161122,345
2026年6月期2Q2,128175122,315
2026年6月期3Q2,037197152,249

合計アカウント数は、2025年6月期4Qの2,328件から2026年6月期3Qの2,249件へ減少した。

ただし、AI AgentPlusは136件から197件へ増加している。FAQPlusも10件から15件へ増えている。

この構図は、投資家にとってかなり重要である。

単純に「アカウント数が減っているから悪い」と見ると、チャットプラスの実態を見誤る。低単価アカウントが減り、高単価アカウントが増え、ARRとARPAが上がっているなら、事業の質はむしろ上がっている可能性がある。

一方で、総アカウント数の減少が続けば、新規獲得力や裾野の広がりには疑問が残る。今後は、AI AgentPlusへのアップセルで単価を上げるだけでなく、総アカウント数の下げ止まりも確認したい。

ARPA:平均単価の上昇が最大の評価材料

ARPAは、1アカウントあたりの年間収益である。

期末時点ChatPlusAI AgentPlusFAQPlus平均ARPA
2025年6月期4Q324千円2,549千円2,400千円463千円
2026年6月期1Q331千円2,592千円2,400千円496千円
2026年6月期2Q318千円2,643千円2,600千円505千円
2026年6月期3Q325千円2,528千円2,605千円532千円

平均ARPAは、2025年6月期4Qの463千円から2026年6月期3Qの532千円へ上昇した。

これは、チャットプラスの決算を見るうえで最も重要なポイントである。

総アカウント数は減っているが、平均単価は上がっている。つまり、同社は単なる低価格チャットボットSaaSから、高単価AIエージェントSaaSへ少しずつシフトしている。

特にAI AgentPlusのARPAは、ChatPlusの約8倍前後である。AI AgentPlusのアカウント数が増えるほど、全体の平均ARPAが上がりやすい。

今後の決算で見るべきなのは、AI AgentPlusの件数増加が継続するか、FAQPlusとのクロスセルが増えるか、そしてChatPlus本体の単価が維持されるかである。

Churn:低位安定は評価材料

Churnレートは、四半期最終月の直近12カ月平均の月次Churnレートである。

期末時点Churnレート
2025年6月期4Q1.8%
2026年6月期1Q1.8%
2026年6月期2Q1.8%
2026年6月期3Q1.9%

Churnは1.8〜1.9%で低位安定している。

SaaSでは、解約率が低いことは重要である。新規契約やアップセルでARRを積み上げても、解約が増えれば成長は相殺される。

チャットプラスの場合、総アカウント数は減っているものの、Churnレートが大きく悪化しているわけではない。これは、下位プランの減少やプランミックスの変化が、単純な解約悪化とは別の要因で起きている可能性を示している。

ただし、1.9%は年率換算すると無視できない水準でもある。AI AgentPlusのような高単価サービスで解約が増えると、ARRへの影響は大きくなる。今後はサービス別の継続率やアップセル率も見たい。

収益構造:ストック型収益が中心

2026年6月期第3四半期累計の収益分解は次の通りである。

区分売上高構成比
ストック型収益8.89億円97.4%
フロー型収益0.24億円2.6%
合計9.12億円100.0%

ストック型収益が97.4%を占めており、SaaS企業としての収益の見通しやすさは高い。

この点はIPO投資家にとって評価材料である。売上がスポット案件に依存している会社より、ARRを基礎にした収益構造のほうが、上場後の業績予想を立てやすい。

一方で、ストック型収益の比率が高いほど、ARR成長率の鈍化はすぐに市場から意識される。新規契約、アップセル、解約率の3つが、上場後の評価を左右する。

財務安全性:現金と純資産は積み上がる

2026年6月期第3四半期末の財政状態は次の通りである。

項目2025年6月期末2026年6月期3Q末増減
総資産9.54億円11.33億円+1.79億円
純資産4.19億円6.94億円+2.75億円
負債5.35億円4.39億円-0.96億円
現金及び預金6.89億円8.31億円+1.41億円

純利益の積み上がりにより、純資産は4.19億円から6.94億円へ増加した。負債は減少し、現金及び預金も増えている。

上場前の小型SaaSとしては、財務面に大きな不安は見えにくい。

ただし、自己資本の分母がまだ小さいため、ROEやPBRは大きく振れやすい。高ROEを過度に美談化せず、軽い資本構造で利益を出している会社として見るのが自然である。

投資家が見るべき論点

今回の開示で見るべき論点は3つである。

論点見るべきこと
ARR成長率2026年6月期2Q以降の伸びが再加速するか
AI AgentPlusアカウント数とARRが継続して伸びるか
利益率上場後の採用・開発・広告宣伝費増加後も高水準を維持できるか

最も重要なのは、AI AgentPlusの伸びである。

ChatPlus本体のARRは直近で減少している。したがって、株式市場がチャットプラスを高く評価するには、AI AgentPlusとFAQPlusがその減少を上回る速度で伸び続ける必要がある。

一方で、利益率の高さは明確な魅力である。3Q累計の営業利益率48.0%は、上場前の小型SaaSとして非常に高い。赤字先行型のSaaS IPOとは違い、チャットプラスはすでに利益を出しながら成長している。

ただし、利益を出しすぎていることは、裏返せば投資余地がまだ残っている可能性もある。上場後に研究開発、人材採用、販売促進へ投資するなら、短期的な利益率低下は必ずしも悪材料ではない。むしろ、ARR成長率を再加速できるかが重要である。

株価への示唆

チャットプラスは、IPOとしては見栄えが良い。

黒字、AI、SaaS、小型、ストック型収益、高利益率。これらは初値形成で好まれやすい条件である。

一方で、上場後のセカンダリー投資では、初値よりKPIを見るべき銘柄だと思う。

特に重要なのは次の4つである。

  • ARRが12億円台からどの速度で伸びるか
  • AI AgentPlusのアカウント数が200件台後半へ向かうか
  • 平均ARPAの上昇が続くか
  • Churnが1.8〜1.9%台で安定するか

これらがそろえば、時価総額50億円弱のIPOから、100億円規模を狙う小型AI SaaSとして見られる可能性がある。

逆に、AI AgentPlusの伸びが鈍り、ChatPlus本体の減少が続き、ARR成長率が一桁台へ落ちるなら、PERが低く見えても評価は伸びにくい。

総合判断

総合判断は「ポジティブ寄りの中立」である。

理由は、2026年6月期3Q累計の売上高9.12億円、営業利益4.38億円、経常利益4.37億円という高収益性が明確であり、ARRも11.98億円まで伸びているためである。

ただし、直近4QのKPIを見ると、総アカウント数は減少している。市場が本当に評価するには、AI AgentPlusとFAQPlusによる単価上昇が、今後もARR成長を支え続ける必要がある。

チャットプラスは、単なる低価格チャットボットIPOではない。

本質は、低価格で広く入った顧客基盤を、生成AI時代の高単価AIエージェントSaaSへ転換できるかである。

次に確認したいのは、2026年6月期通期決算でのARR、AI AgentPlusアカウント数、平均ARPA、Churn、そして上場後の成長投資方針である。

出典・注意

本記事は、東京証券取引所に掲載された新規上場会社資料を基にした投資家向けの決算メモである。通常の決算短信ではなく、上場申請資料に基づくため、四半期単独の損益など一部の情報は限定的である。記載内容は投資判断を推奨するものではなく、制度・会計・業績予想は変更される可能性がある。

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。