決算サマリー
2024年6月期は、レシピ動画メディア「デリッシュキッチン」を中心に広告ソリューションと小売向け支援を伸ばした時期だ。売上高は33.59億円、売上総利益は21.95億円だったが、販売費及び一般管理費が28.37億円となり、営業損益は6.42億円の赤字だった。
| 項目 | 2024年6月期実績 | 売上高比率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 33.59億円 | 100.0% | IPO資料掲載値 |
| 売上総利益 | 21.95億円 | 65.3% | 粗利率は高い |
| 営業利益(損失) | -6.42億円 | -19.1% | 販管費を吸収できず |
| 経常利益(損失) | -6.44億円 | -19.2% | 営業外費用も小幅に重い |
| 当期純利益(損失) | -7.71億円 | -23.0% | 減損損失1.24億円を計上 |
| EPS | -154.27円 | - | 赤字EPS |
| 営業キャッシュ・フロー | -5.87億円 | - | 売上債権増加などが重い |
| 現金及び現金同等物 | 18.95億円 | - | 期末残高 |
定量評価
| 指標 | 実績 | 見方 |
|---|---|---|
| 売上総利益率 | 65.3% | メディア・広告モデルらしく粗利は厚い |
| 営業損失率 | -19.1% | 粗利を販管費が上回る状態 |
| 自己資本比率 | 53.36% | 財務は極端に薄くない |
| 営業CFマージン | -17.5% | 利益だけでなく現金も流出 |
| EPS | -154.27円 | 赤字EPSでPER評価は使えない |
数字だけを見ると、売上総利益率は高い。しかし販管費が重く、営業赤字が残る。IPO後に投資家が確認したいのは、メディア規模の拡大よりも、広告売上の増加がどこまで販管費を吸収するかである。
売上構成
| 区分 | 売上高 | 構成比 |
|---|---|---|
| Marketing Solutionビジネス | 22.68億円 | 67.5% |
| Consumerビジネス | 4.00億円 | 11.9% |
| その他ビジネス | 6.90億円 | 20.5% |
| 合計 | 33.59億円 | 100.0% |
Marketing Solutionが全体の3分の2を占めている。食品メーカーなど広告主向けのタイアップ広告、ディスプレイ広告、店頭サイネージ広告が、エブリーの売上の中心だ。
ポジティブ要因
粗利率は高い
売上総利益率は65.3%だった。広告・メディア型のビジネスらしく、売上原価だけを見ると利益を残しやすい構造に見える。
Marketing Solutionが主力化
Marketing Solutionビジネスは22.68億円で、売上の67.5%を占めた。デリッシュキッチンのメディア接点を広告主向けソリューションへつなげる構図は、この時点ですでに見えている。
自己資本比率は50%台
2024年6月期末の自己資本比率は53.36%だった。赤字ではあるが、上場前企業として財務が過度に薄い状態ではなかった。
リスク要因
販管費が粗利を上回る
売上総利益21.95億円に対し、販管費は28.37億円だった。粗利は出ているが、組織、人材、広告営業、開発・管理コストを吸収できていない。
営業キャッシュ・フローは流出
営業活動によるキャッシュ・フローは5.87億円のマイナスだった。税引前損失に加え、売上債権の増加も資金を使っている。売上より利益、利益よりキャッシュ。IPO前の赤字企業ではここを外せない。
減損損失も発生
特別損失として減損損失1.24億円を計上している。通常の営業赤字に加えて、過去投資の見直しも損益を押し下げた。
財務安全性
2024年6月期末の総資産は24.74億円、純資産は13.20億円、自己資本比率は53.36%だった。現金及び現金同等物は18.95億円ある。一方で、営業CFは5.87億円のマイナス、投資CFも1.13億円のマイナスで、フリーキャッシュ・フローは約7.00億円の流出だった。財務はすぐに危ういというより、赤字縮小までの時間をどれだけ短くできるかが焦点になる。
株価への示唆
2024年6月期は非上場期の実績であり、赤字決算のためPER評価はできない。IPO評価でこの期を見るなら、デリッシュキッチンの知名度よりも、販管費を吸収できていない損益構造を先に見るべきだろう。粗利率は高い。問題は固定費を超える売上規模に届いていなかったことだ。
今期の総括
2024年6月期は、売上33.59億円、粗利21.95億円まで事業規模を作った一方、営業赤字6.42億円、営業CFマイナス5.87億円だった。メディア資産はあるが、上場企業として評価されるには、黒字化とキャッシュ創出の確認が必要な段階だった。
来期見通し
翌2025年6月期は、売上高42.50億円、営業損失0.24億円、当期純損失0.32億円となった。赤字は大きく縮小し、損益分岐点にかなり近づいている。
総合判断
総合判断は弱気である。粗利率65.3%、Marketing Solutionの売上構成は評価できるが、営業赤字と営業CF流出が重い。2024年6月期時点では「事業テーマは見えるが、利益化はまだこれから」という位置づけである。
出典
本記事は、株式会社エブリーのIPO関連資料を基に作成しています。
- 日本取引所グループ「新規上場申請のための有価証券報告書 株式会社エブリー」、公表日: 2026年6月30日