決算サマリー
| 項目 | 第1四半期実績 | 前年同期 | 前年同期比 | 上期会社予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,323.88億円 | 5,495.86億円 | +33.3% | 1兆6,200億円 | 45.2% |
| 営業利益 | 2,114.07億円 | 1,446.94億円 | +46.1% | 4,580億円 | 46.2% |
| 経常利益 | 2,156.26億円 | 1,473.47億円 | +46.3% | 4,640億円 | 46.5% |
| 純利益 | 1,643.41億円 | 1,178.01億円 | +39.5% | 3,490億円 | 47.1% |
| EPS | 361.36円 | 257.13円 | +40.5% | 767.51円 | 47.1% |
売上高の伸びを営業利益の伸びが上回り、営業利益率は前年同期の26.3%から28.9%へ2.6ポイント改善した。会社は上期予想を、売上高1兆6,200億円、営業利益4,580億円へ上方修正している。第1四半期時点の進捗率は各利益で46%台から47%台であり、上期計画に対しておおむね順調な出足とみられる。
セグメント
東京エレクトロンの報告セグメントは「半導体製造装置」の単一セグメントである。このため、事業別利益ではなく、決算説明資料で開示された地域別売上高と用途別構成から需要の偏りを確認する。
| 地域 | 売上高 | 構成比 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 2,229億円 | 30.4% | +5.1% |
| 台湾 | 1,861億円 | 25.4% | +66.9% |
| 韓国 | 1,524億円 | 20.8% | +72.6% |
| 日本 | 646億円 | 8.8% | +0.5% |
| 北米 | 590億円 | 8.1% | +35.9% |
| 欧州 | 242億円 | 3.3% | +72.9% |
| 東南アジアほか | 229億円 | 3.2% | +46.8% |
台湾と韓国の合計構成比は46.2%に達し、両地域の大幅増収が全社成長をけん引した。中国は最大市場を維持したが、伸び率は5.1%にとどまった。地域別数値は億円単位に丸められているため、合計は連結売上高とわずかに一致しない。
新規装置売上高は5,313億円で、用途別構成はロジック・ファウンドリーなどの非メモリーが57%、DRAMが32%、不揮発性メモリーが11%だった。前年同期からDRAM比率が6ポイント上昇しており、AIサーバー向けの高性能メモリー投資も成長に寄与した。保守・改造・部品を含むフィールドソリューション売上高は1,880億円と、前年同期の1,412億円から約33%増加した。
財務安全性
| 指標 | 2026年6月末 | 2026年3月末 |
|---|---|---|
| 総資産 | 2兆9,554.05億円 | 2兆8,609.97億円 |
| 純資産 | 2兆1,429.01億円 | 2兆699.96億円 |
| 自己資本比率 | 71.7% | 71.5% |
| 現金及び現金同等物 | 4,084.13億円 | 5,054.14億円 |
自己資本比率は71.7%と高く、財務基盤は引き続き強い。第1四半期の営業キャッシュ・フローは1,187.45億円、投資キャッシュ・フローはマイナス385.20億円で、フリーキャッシュ・フローは802.25億円のプラスだった。一方、配当や自己株式取得などにより財務キャッシュ・フローはマイナス1,784.77億円となり、現金残高は期首から減少した。
定量評価
| 指標 | 実績 | 評価 |
|---|---|---|
| 売上高成長率 | +33.3% | AI向け先端半導体投資を背景に高成長 |
| 営業利益成長率 | +46.1% | 増収率を上回り、利益率も改善 |
| EPS成長率 | +40.5% | 純利益の増加を反映 |
| 営業利益率 | 28.9% | 前年同期比2.6ポイント改善 |
| 上期営業利益進捗率 | 46.2% | 第1四半期として順調な水準 |
| ROIC | 算定保留 | 四半期資料だけでは投下資本の期間平均を適切に置けない |
| PER | 算定保留 | 本記事では同時点の市場株価を参照していない |
売上成長と利益率改善が同時に進んでいる点は評価できる。特にフィールドソリューションの増収は、装置販売だけに依存しない収益基盤の拡大につながる。ただし、四半期だけの高い伸び率を通期へ単純に延長するのは適切ではない。
ポジティブ要因
台湾・韓国向けが大幅増収
台湾は66.9%増、韓国は72.6%増となった。AI向けロジックと高性能メモリーの設備投資が同時に伸びたことで、装置需要の裾野が広がっている。
利益率が改善
売上総利益率は46.8%と前年同期から0.6ポイント、営業利益率は28.9%と2.6ポイント改善した。増収効果に加え、製品構成や稼働率の改善が利益成長を押し上げたとみられる。
上期予想と中間配当を上方修正
上期営業利益予想は4,580億円となり、前年同期比51.1%増を見込む。中間配当予想も1株361円から384円へ23円引き上げられた。業績拡大を株主還元へ反映する姿勢は評価材料となる。
リスク要因
通期予想は未開示
会社は通期業績予想を第2四半期決算時に開示する方針である。上期の高成長が下期にも続くか、顧客の投資時期や製品構成を含めて確認する必要がある。
在庫と運転資金の増加
棚卸資産は3月末から384.34億円増加し、営業キャッシュ・フローでは棚卸資産の増加が362.69億円の資金負担となった。受注対応の先行投資であれば将来売上につながるが、需要変動時には在庫調整リスクとなる。
中国需要と輸出規制
中国は売上構成比30.4%を占める最大市場である。前年同期比の伸びは5.1%に鈍化しており、現地顧客の投資動向、装置の国産化、各国の輸出規制変更が業績を左右する可能性がある。
業界動向との関連
生成AI向けデータセンター投資は、先端ロジック、HBMを含むDRAM、先端パッケージの設備需要を押し上げている。今回の地域別・用途別構成は、台湾の先端ロジック投資と韓国のメモリー投資が並行して回復していることを示す。一方、半導体設備投資は顧客の投資計画に左右されやすく、短期間で受注や売上の地域構成が変わる点には注意が必要である。
株価への示唆
営業利益の46.1%増、利益率改善、上期予想の上方修正は、業績面では株価を支える材料となる。ただし、市場がAI関連の高成長をどこまで織り込んでいるかにより、決算後の反応は変わる。本記事では同時点の株価を取得していないため、PERや理論株価による評価は行わない。
今期の総括
第1四半期は、台湾・韓国向け装置販売とフィールドソリューションが伸び、増収率を上回る増益を実現した。営業利益率の改善と上期予想の引き上げを合わせると、業績の方向は強い。単一地域や単一用途だけに依存せず、ロジックとメモリーの双方が成長した点も重要である。
来期見通し
当面の焦点は、上期予想の達成度と第2四半期決算時に公表予定の通期予想である。上期会社予想は売上高1兆6,200億円、営業利益4,580億円、純利益3,490億円。中間配当は384円を見込むが、期末配当と年間配当は未定となっている。
総合判断
総合判断は強気である。売上高33.3%増、営業利益46.1%増、営業利益率28.9%という実績に加え、上期予想と中間配当予想が引き上げられたことを評価した。ただし、通期予想が未開示であること、中国向け需要と輸出規制、在庫増加は継続確認が必要である。これは特定銘柄の売買を推奨するものではなく、株価は業績、市場期待、需給によって変動する。
出典
- 東京エレクトロン「決算関連資料」(2027年3月期第1四半期決算短信・決算説明会資料、2026年7月30日)
- 東京エレクトロン「配当情報」