決算サマリー

項目2026年3月期2025年3月期増減率見方
営業収益1兆8,656億円1兆7,626億円+5.8%コントラクト・ロジスティクスの拡大とエクスプレスの単価改善が寄与
営業利益283億円142億円+99.2%エクスプレスの赤字解消と価格適正化で営業段階は回復
経常利益262億円195億円+34.1%営業利益ほどではないが増益
親会社株主に帰属する当期純利益136億円379億円-64.0%前期の大型不動産売却益の反動などで減益
1株当たり当期純利益43.07円111.87円-最終利益の減少を反映
営業利益率1.5%0.8%+0.7pt低水準ながら改善

今回の決算は、見出しだけなら「営業益倍増、純利益大幅減」です。重要なのは、営業利益の改善が本業の単価・法人物流から出ている一方、純利益は前期の一過性利益の反動を強く受けている点です。したがって、評価では営業利益率と営業キャッシュ・フローを優先して確認します。

セグメント

セグメント外部顧客への営業収益前期比セグメント利益確認点
エクスプレス事業1兆5,579億円+1.5%22億円宅急便中心の国内輸配送。価格適正化で赤字から黒字に転換
コントラクト・ロジスティクス事業1,646億円+69.6%62億円ナカノ商会の連結子会社化と新規案件が押し上げ
グローバル事業975億円+13.5%81億円国際フォワーディングは伸びたが、利益は減少
モビリティ事業220億円+7.5%52億円車両整備、燃料販売、商用EV関連を含む成長領域
その他235億円-3.9%66億円情報システム開発など

エクスプレス事業は、営業収益1兆5,579億円、セグメント利益22億円でした。前期はセグメント損失128億円だったため、宅急便数量だけでなく、価格適正化と法人向け施策が利益改善に効いたかを継続確認します。

コントラクト・ロジスティクス事業は、営業収益1,646億円まで拡大しました。M&Aの寄与が大きいため、次の焦点は買収効果が一巡した後も新規案件と利益率が残るかです。

財務安全性

項目2026年3月末2025年3月末見方
総資産1兆2,801億円1兆2,674億円ほぼ横ばい
純資産5,820億円6,003億円自己株取得や配当で減少
自己資本比率44.6%46.5%低下したが、会社の目安45%程度に近い
営業キャッシュ・フロー722億円477億円収入が改善
現金及び現金同等物2,378億円2,080億円手元資金は増加

財務は大きく崩れていません。ただし、自己株取得や配当、リース活用の増加もあり、自己資本比率は44.6%へ下がりました。会社は財務健全性の目安として自己資本比率45%程度、D/Eレシオ0.3から0.5倍程度を掲げています。還元と成長投資を続けるには、営業キャッシュ・フローの改善が続くことが条件になります。

定量評価

指標実績見方
自己資本当期純利益率2.4%前期6.5%から低下。純利益の一過性要因に注意
総資産経常利益率2.1%前期1.6%から改善
営業利益率1.5%前期0.8%から改善したが、物流業としてコスト耐性はなお重要
配当性向106.8%純利益減少で高水準。2027年3月期予想は60.7%
2027年3月期予想EPS75.79円会社計画どおりならEPSは回復方向

定量面では、ROEより営業利益率の回復を先に見る局面です。純利益は一過性の影響を受けたため、2027年3月期に営業利益420億円、純利益240億円の会社計画へ近づけるかが評価の分かれ目になります。

ポジティブ要因

営業利益の回復

営業利益は前期の142億円から283億円へ増えました。エクスプレス事業の赤字解消、価格適正化、法人向け物流の強化が見えた点は、今回の決算で最も前向きな材料です。

コントラクト・ロジスティクスの拡大

コントラクト・ロジスティクス事業は、営業収益が69.6%増でした。M&Aの寄与を含むため単純な自律成長とは分ける必要がありますが、宅急便依存から法人物流へ広げる方向性は確認できます。

営業キャッシュ・フローの改善

営業キャッシュ・フローは722億円の収入となり、前期から244億円増えました。利益改善がキャッシュ創出にもつながっている点は、配当や投資を支える材料です。

リスク要因

コスト上昇

人件費、燃料費、委託費、車両関連費用の上昇は引き続き重い論点です。物流業は固定費と現場コストの影響が大きく、単価改善が遅れると営業利益率が再び圧迫されます。

宅急便数量の伸び悩み

エクスプレス事業は国内ネットワークが強みですが、個数成長だけに頼りにくい成熟市場です。数量より単価、法人案件、オペレーション効率で利益を作れるかが焦点です。

M&A効果の持続性

コントラクト・ロジスティクス事業の増収にはナカノ商会の連結子会社化が寄与しています。買収効果が一巡した後の成長率、のれん償却、統合コストは継続して見る必要があります。

純利益と配当性向

2026年3月期の配当性向は106.8%でした。会社は配当性向40%以上を目標としていますが、最終利益が低い年は配当性向が跳ね上がります。配当の持続性は営業CFと翌期利益の回復を合わせて確認します。

業界動向

国内物流は、ECの定着、人手不足、再配達削減、燃料費、2024年問題後の労働時間制約が重なっています。ヤマトHDにとっては、宅急便の数量拡大だけでなく、法人顧客の在庫・配送・国際物流まで踏み込む提案力が重要になります。

同時に、商用EVや車両整備を含むモビリティ領域は、中長期の脱炭素対応と結びつきます。まだ営業収益の規模は小さいものの、配送ネットワークを持つ会社として、車両運用やエネルギー関連サービスをどう収益化するかは見たいテーマです。

株価

短期の株価反応は、営業利益283億円という回復感と、純利益64.0%減という見出しの弱さがぶつかりやすい内容です。投資家は最終利益だけで判断せず、営業利益率が0.8%から1.5%へ改善した点と、2027年3月期の営業利益420億円計画の達成可能性を見ます。

PERで見る場合、2026年3月期EPS43.07円は一過性要因を含む低い分母です。2027年3月期予想EPS75.79円を使うと見え方は変わりますが、その前提にはコスト吸収と価格適正化の継続があります。株価評価では、来期計画への進捗、宅急便単価、法人物流の利益率、燃料費の動きを合わせて確認したい決算です。

今期総括

2026年3月期は、営業段階では回復が見えた一方、最終利益は前期の特別利益反動で大きく減った年度でした。事業面では、エクスプレス事業の黒字転換、コントラクト・ロジスティクスの拡大、モビリティ領域の育成が確認できます。

総じて、決算の質は悪くありません。ただし、営業利益率はまだ1.5%で、コスト上昇に対する余裕は厚くありません。ヤマトHDを見るうえでは、「宅急便の量」よりも「単価、法人物流、キャッシュ、配当余力」を並べて追う局面です。

来期見通し

会社は2027年3月期について、営業収益1兆9,200億円、営業利益420億円、経常利益420億円、親会社株主に帰属する当期純利益240億円を見込んでいます。第2四半期累計では営業利益・経常利益をゼロ、純損失15億円とする計画で、利益は下期に偏る前提です。

配当は中間23円、期末23円、年間46円の予想です。年間配当は前期と同額ですが、2027年3月期予想の配当性向は60.7%で、利益回復を前提にしています。

総合判断

総合判断は中立です。営業利益の回復、営業キャッシュ・フローの改善、法人物流の拡大は評価できます。一方で、純利益は減少し、配当性向は高く、物流コスト上昇への耐性もまだ十分とは言い切れません。

次に見るべき点は、2027年3月期計画のうち営業利益420億円へどのペースで近づくかです。宅急便の単価改善、コントラクト・ロジスティクスの利益率、燃料費・人件費の吸収、営業CFの継続改善を確認します。

出典