NTT(9432)2025年度通期決算 kabutrack.com 増収増益、投資拡大局面 データセンター・法人DXが伸長、資本比率は20.8%へ低下 営業収益 14兆4,091億円 +5.1% 営業利益 1兆7,062億円 +3.4% 当社帰属利益 1兆370億円 +3.7% 資本比率 20.8% 低下 来期は営業増益計画、最終利益は減益計画。投資負担と成長回収を確認。

決算サマリー

項目2025年度実績前期実績増減率2026年度会社予想
営業収益14兆4,091億円13兆7,047億円+5.1%15兆600億円
営業利益1兆7,062億円1兆6,496億円+3.4%1兆7,100億円
税引前利益1兆5,256億円1兆4,553億円+4.8%1兆5,000億円
当社帰属利益1兆370億円1兆0億円+3.7%9,800億円
EPS12.61円11.96円+5.4%12.10円
年間配当5.30円5.20円+0.10円5.40円

通期では増収増益を確保しました。営業収益は全セグメントで増え、営業利益はグローバル・ソリューション事業と地域通信事業が伸びました。ただし、来期の当社帰属利益は減益予想で、増収基調がそのまま最終利益に直結する計画ではありません。

セグメント

セグメント営業収益前期比営業利益前期比
総合ICT事業6兆4,581億円+3.9%9,421億円-7.7%
グローバル・ソリューション事業5兆46億円+7.9%4,882億円+50.7%
地域通信事業3兆2,102億円+3.1%3,074億円+4.0%
その他(不動産、エネルギー等)1兆7,526億円+1.5%-16億円赤字転落

総合ICT事業は増収ながら減益でした。グローバル・ソリューション事業は大型案件、データセンター事業、グローバルITサービスの拡大が利益を押し上げました。地域通信事業はレガシー収入の減少を抱えつつ、光サービスやコスト改善で増益です。その他は不動産・エネルギー等を含み、当期は営業赤字となりました。

財務安全性

項目2025年度末前期末
総資産46兆7,212億円30兆625億円
株主資本9兆7,276億円10兆2,216億円
資本合計10兆2,175億円11兆3,446億円
株主資本比率20.8%34.0%
有利子負債の株主資本比率161.5%97.9%
営業CF1兆4,852億円2兆3,640億円

総資産は住信SBIネット銀行の連結子会社化、有形固定資産、その他金融資産の増加で大きく膨らみました。株主資本比率の低下は、事業再編と投資拡大局面の副作用として見ておきたい点です。

定量評価

指標直近実績見方
営業収益成長率+5.1%通信・ITサービス・データセンター需要が支えました。
営業利益率11.8%前期の12.0%から小幅低下しました。
EPS成長率+5.4%増益と自己株式取得効果が下支えしました。
配当性向42.0%来期予想は44.6%です。

収益規模の安定感は高い一方、資産拡大後の利益率とキャッシュ創出力が今後の評価軸になります。

ポジティブ要因

グローバル・ソリューション事業の利益が大きく伸びた

グローバル・ソリューション事業の営業利益は4,882億円で、前期比50.7%増でした。大型案件、データセンター、フルスタックソリューションの拡大が寄与しています。

データセンターとAI関連投資の方向性が明確

生成AIの普及でネットワーク、データセンター、クラウド、法人DXの需要は強く、NTTデータグループ完全子会社化も成長分野への投資判断を速める狙いがあります。

増配を継続した

2026年3月期の年間配当は5.30円、2027年3月期予想は5.40円です。小幅ながら増配を続け、通信大手としての株主還元姿勢を維持しています。

リスク要因

株主資本比率が大きく低下した

株主資本比率は前期末34.0%から20.8%へ低下しました。金融子会社化の影響を含みますが、成長投資の回収が遅れると財務指標への見方は厳しくなります。

総合ICT事業は増収減益だった

最大セグメントの総合ICT事業は営業収益が増えた一方、営業利益は前期比7.7%減でした。競争環境、販売費、ネットワーク投資負担の見方が残ります。

営業キャッシュ・フローは減少した

営業CFは1兆4,852億円で、前期の2兆3,640億円を下回りました。大型投資と還元を続けるには、キャッシュ創出力の回復も確認点になります。

業界動向との関連

通信業界は、成熟した国内通信収入だけでなく、法人DX、クラウド、データセンター、AI基盤、金融サービスとの連携で成長余地を探る局面です。NTTは国内インフラの安定収益を持つ一方、グローバルITサービスとデータセンター投資を拡大しており、評価は「安定配当株」だけでなく「大型成長投資をどう回収するか」に移っています。

株価への示唆

株価を見る前提は、2027年3月期会社予想EPS12.10円です。通信大手としての安定性と増配は下支え材料ですが、最終減益計画と資本比率低下は上値を抑えやすい材料です。以下は感応度の目安であり、実際の株価を保証するものではありません。

シナリオ想定PER予想EPS理論株価の目安
慎重10倍12.10円121円
中立11倍12.10円133円
強気13倍12.10円157円

データセンターやグローバルITサービスの利益成長が続く場合は、評価倍率の切り上げ余地があります。一方で、投資負担、金利、通信料金競争、金融子会社化後の資産リスクが意識される場合は、低いPERで見られやすくなります。

今期の総括

2025年度は、国内通信の安定収益を土台に、グローバルIT、データセンター、金融への事業拡張を進めた年度でした。損益は増収増益で着地しましたが、貸借対照表の姿は大きく変わっており、今後は成長投資の回収力がより問われます。

来期見通し

会社は2026年度に営業収益15兆600億円、営業利益1兆7,100億円、税引前利益1兆5,000億円、当社帰属利益9,800億円を見込んでいます。営業利益は小幅増益予想ですが、当社帰属利益は前期比5.5%減です。配当予想は年間5.40円で、配当性向は44.6%の計画です。

総合判断

総合判断は中立です。増収増益、グローバル・ソリューション事業の伸び、増配継続は評価できます。一方で、株主資本比率の低下、営業CFの減少、来期最終減益計画を踏まえると、短期的には「安定収益への安心感」と「大型投資後の資本効率懸念」の綱引きになりやすい決算です。

出典