決算サマリー

項目2026年3月期2025年3月期増減率見方
売上高7兆7,986億円7兆2,438億円+7.7%ソフトバンク事業とArmを含むAIコンピューティング事業が増収
税引前利益6兆1,349億円1兆7,047億円+259.9%投資損益の改善が主因
親会社の所有者に帰属する当期利益5兆23億円1兆1,533億円+333.7%SVF2の評価益が大きく寄与
基本的1株利益873.51円195.20円+347.5%2026年1月1日の株式分割後ベース
投資損益合計7兆2,865億円3兆7,011億円+96.9%OpenAI関連の公正価値評価が利益を押し上げ
営業キャッシュ・フロー-4,288億円2,036億円赤字転落税金支払いなどで会計利益とキャッシュがずれた

この会社は投資会社としての性格が強く、一般的な営業利益中心の見方だけでは読み違えやすい企業です。今回の決算では、連結損益計算書の主な利益指標は税引前利益と親会社帰属利益で確認します。

なお、2026年5月15日に決算短信の訂正が出ています。訂正対象はサマリー情報の配当支払開始予定日で、業績数値そのものの修正ではありません。

セグメント

セグメント売上高投資損益セグメント利益確認点
持株会社投資事業-2,181億円-4,721億円T-MobileやAlibabaの評価損を、NVIDIA、Intel、OpenAI関連の評価益が一部補った
ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業-6兆9,919億円6兆4,446億円OpenAI関連を中心にSVF2の累計投資損益が黒字化
ソフトバンク事業7兆409億円140億円9,650億円通信、法人、金融、PayPay周辺が増益を支えた
AIコンピューティング事業6,403億円56億円-1,373億円Armの増収は続くが、研究開発とAmpere買収関連費用が重い

最大の変化はソフトバンク・ビジョン・ファンド事業です。SVF2ではOpenAI関連の評価益が大きく、同事業のセグメント利益は6兆4,446億円まで改善しました。ただし、これは投資先評価の変動を強く受ける利益です。上場済み株式や未上場投資の評価が変われば、翌期以降の損益も大きく振れます。

ソフトバンク事業は、売上高7兆409億円、セグメント利益9,650億円でした。投資損益ほど派手ではありませんが、通信、法人、金融を含む事業基盤の安定性を見るうえではこちらが重要です。

AIコンピューティング事業は、Armを中心に売上高が6,403億円へ伸びた一方、セグメント損失は1,373億円に拡大しました。次世代技術の研究開発、Ampere買収完了に伴う費用、半導体・AIインフラ投資の先行負担が続いています。

財務安全性

項目2026年3月末2025年3月末見方
資産合計60兆7,495億円47兆5,443億円投資資産と資金調達の両方が大きい
資本合計20兆4,684億円15兆8,276億円利益計上で資本は増加
親会社所有者帰属持分比率29.0%25.7%改善したが、評価資産の変動に左右される
現金及び現金同等物5兆3,622億円3兆1,946億円財務CFの流入で手元資金は増加
営業CF-4,288億円2,036億円税金支払いでマイナス
投資CF-4兆5,072億円-2兆5,818億円AI・投資関連の資金流出が大きい
財務CF6兆3,773億円2兆2,541億円借入・社債など資金調達の影響が大きい

親会社所有者帰属持分比率は29.0%へ改善しました。とはいえ、投資会社としてのバランスシートは市場価格、為替、未上場株評価、資金調達環境に影響されます。自己資本比率だけで安全性を判断するより、手元流動性、債務償還、投資資産の換金可能性を合わせて見る必要があります。

定量評価

指標実績見方
親会社所有者帰属持分当期利益率34.3%大幅な利益計上で高いが、投資評価益を含む
資産合計税引前利益率11.6%資産規模に対する税引前利益は大きく改善
基本的1株利益873.51円前期比で大幅増、株式分割後ベース
2027年3月期配当予想年11.00円中間5.50円、期末5.50円の予想

PERだけで見ると、投資評価益の増減で分母の利益が大きく振れます。ソフトバンクグループでは、PERよりもNAV、保有株式・未上場投資の評価、AI関連投資の将来価値、財務レバレッジを組み合わせて見るほうが実態に近いです。

ポジティブ要因

SVF事業の大幅改善

ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業は、OpenAI関連を中心とした評価益により通期で大きく黒字化しました。SVF2の活動開始来累計投資損益が黒字化した点は、過去の評価損局面からの転換として大きい材料です。

ソフトバンク事業の安定収益

国内通信を中心とするソフトバンク事業は増収増益でした。PayPay、PayPayカード、法人向けクラウド、スマートフォン販売など複数の収益源があり、投資事業の振れを和らげる基盤として機能しています。

資本の厚み

資本合計は20兆4,684億円まで増え、親会社所有者帰属持分比率も29.0%へ改善しました。大型投資を続ける企業として、資本の厚みが増した点は前向きに見られます。

リスク要因

利益の再現性

今回の利益は、SVFやOpenAI関連の評価益に大きく依存します。未上場投資の評価や上場株式の株価が変われば、次の決算で利益が逆方向に振れる可能性があります。

キャッシュ・フローとのずれ

当期利益は大きい一方、営業キャッシュ・フローは4,288億円のマイナスでした。投資会社では会計上の評価益と現金収入が一致しないため、利益額だけで資金余力を判断しないほうがよいです。

AIコンピューティングの先行負担

AIコンピューティング事業は、Armの成長と同時に研究開発費、買収関連費用、半導体開発負担が増えています。AI投資が将来の企業価値に結びつくかは、数四半期ではなく中期で確認するテーマです。

金利・為替・資金調達

財務費用は7,718億円、為替差損は2,710億円でした。グローバルに投資と借入を行う企業だけに、円相場、米金利、社債市場の環境変化は損益とNAVの両方に影響します。

業界動向

AIインフラ、半導体、生成AIの投資テーマは続いています。ソフトバンクグループは、Arm、OpenAI関連、AIコンピューティング事業を通じてこの流れに強く関わっています。ただし、AIテーマは期待先行で評価が膨らみやすく、金利上昇やハイテク株の調整局面では評価益が逆回転しやすい領域でもあります。

国内ではソフトバンク事業が通信、法人DX、決済、金融の複合収益を持っています。投資事業の変動が大きい会社だからこそ、国内通信・金融基盤の利益安定性は市場が確認し続けるポイントです。

株価

株価への示唆は、短期ではOpenAI関連を含むAI投資への期待、SVF評価益、Armの成長見通しに左右されやすいです。一方で、会計利益の大きさだけで株価を判断すると、投資先評価の反落を見落とす可能性があります。

投資家が見るべき点は、親会社帰属利益5兆円という見出しより、その利益がどの投資先評価から来たのか、現金化できる資産がどれだけあるのか、資金調達コストが上がっていないかです。株価評価では、決算EPSだけでなくNAVディスカウント、保有株式の時価、未上場投資の評価方法を合わせて確認します。

今期総括

2026年3月期は、ソフトバンクグループらしい大きな振れ幅のある決算でした。売上は事業会社ベースで増え、国内通信・金融は安定していました。一方、利益の主役はSVFとOpenAI関連の評価益であり、会計上の利益拡大と現金収入は別物として見る必要があります。

総じて、決算数値は強いものの、評価益依存と営業CFのマイナスを踏まえると、単純な好決算とは言い切れません。AI投資の価値がどこまで持続するかを見極める局面です。

来期見通し

2027年3月期の連結業績予想は開示されていません。投資先の公正価値評価、為替、金利、上場株式の株価が利益を大きく動かすため、会社側も通常の売上・利益予想を出しにくい構造です。

配当は2027年3月期に年11.00円を予想しています。2026年1月1日付で普通株式1株につき4株の株式分割が行われたため、2025年3月期の年44.00円や2026年3月期の中間22.00円とは、分割前後の単純比較に注意が必要です。

総合判断

総合判断は中立です。純利益5兆円、SVF事業の大幅改善、ソフトバンク事業の安定収益は明確なプラス材料です。一方、利益の中心は公正価値評価で、営業キャッシュ・フローはマイナス、AIコンピューティング事業は先行投資で赤字が拡大しています。

この決算は、強い利益数字を評価しつつ、投資先評価の持続性とキャッシュの裏付けを慎重に見る内容です。次の焦点は、OpenAI関連評価の変動、ArmとAIコンピューティングの収益化、国内ソフトバンク事業の利益維持、資金調達コストです。

出典