2つ目は、中東リスクの再燃です。ホルムズ海峡周辺で、米軍がイランのドローンを撃墜し、沿岸監視レーダー施設を攻撃しました。さらにイランがクウェートとバーレーン方面へ弾道ミサイルを発射したと報じられています。原油は必ずしも一方向に上がっているわけではありませんが、供給不安プレミアムが再び乗りやすい状態です。

3つ目は、6月12日(金)のメジャーSQです。先物主導で値幅が出やすい週に、米金利、中東、米CPI、SpaceX上場観測まで重なります。短期筋にとっては動かしやすい。現物投資家にとっては、無理に初動を取りにいくと振らされやすい週です。

今週の日経平均は、

想定レンジ:61,000円〜65,500円

を中心に見ます。

先週までのように「AI・半導体を買えば指数が上がる」という単純な相場ではありません。今週はまず、63,000円を保てるか。割れた場合、62,000円、さらに61,000円近辺で長期資金が入るかを見る局面です。

強気相場が終わったと決めつける必要はありません。

ただし、相場の温度は変わりました。ここからは上値を追う週ではなく、どこで売りが止まるかを測る週です。

週末に何が変わったのか

先週までの日本株は、かなり強い地合いでした。

AI、半導体、電線、重電、防衛、銀行。テーマは多く、日経平均も高値圏で推移していました。円安も支えになり、海外投資家の買いも入りやすかった。少なくとも表面上は、リスクオンの形でした。

しかし、6月5日(金)の米国市場で空気が変わりました。

米5月雇用統計が強かったことで、米長期金利は上昇し、ハイテク株に売りが出ました。APの市場まとめでは、S&P500が2.6%安、ナスダック総合が4.2%安、ダウ平均が695.15ドル安。とくにAI・半導体に近い大型グロース株の売られ方がきつかった。

日本株にとって嫌なのは、下げの理由が一つではないことです。

米金利だけなら、銀行や保険、バリュー株が支える余地があります。中東リスクだけなら、資源、防衛、商社へ資金が逃げることもあります。SQだけなら、イベント通過後に落ち着くこともある。

今回は、それが同時に来ています。

米金利上昇でハイテク株が売られ、中東リスクでリスク許容度が落ち、SQ週で先物の売りが増幅される。こういう時は、個別の好材料があってもいったん指数に引っ張られます。

週明けはまず、夜間先物の63,820円をどこまで現物市場が織り込むかです。

寄り付き直後に投げが出て、その後に下げ渋るならまだ良い。問題は、寄り後も戻せず、TOPIXまで広く売られる場合です。その場合は、単なる先物主導の下げではなく、現物のリスク削減が始まっていると見た方がいい。

今週の日経平均レンジ

今週の日経平均の想定レンジは、次の通りです。

61,000円〜65,500円
水準見方
65,500円近辺米株反発と中東沈静化が重なった場合の戻り上限
65,000円先週までの強気相場へ戻れるかを見る節目
64,000円夜間先物急落後の最初の戻り確認ライン
63,000円週初に守りたい心理的節目
62,000円先物主導の投げが一巡するかを見るライン
61,000円中東リスク悪化、米CPI上振れ時の下値めど

個人的には、週前半にいきなり強気へ戻るより、まずは下値確認の時間が必要だと思います。

日経平均先物はすでに63,820円まで下げています。これは、先週までの強気ポジションの一部が強制的に外れた水準です。ここからさらに下へ走るか、いったん買い戻されるかは、月曜寄り付き後の30分だけでは判断しにくい。

見たいのは、次の3つです。

  • 63,000円近辺で現物の買いが入るか
  • 半導体だけでなくTOPIX大型株にも売りが広がるか
  • 為替が円安で支えるのか、リスクオフの円買いに変わるのか

日経平均は値がさハイテクの影響が大きい指数です。米ナスダックが4%超下げた翌週は、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループあたりの反応を見ないと、指数の本当の強さが分かりません。

今週は、上がる銘柄を探すより、下げ止まる銘柄を探す週です。

焦点1:米雇用統計で「利下げ待ち相場」が崩れた

5月の米雇用統計は、かなり市場の見方を変えました。

非農業部門雇用者数は17.2万人増。事前予想は9万人前後だったため、かなり強い数字です。4月分も11.5万人増から17.9万人増へ上方修正されました。失業率は4.3%で横ばいです。

この数字を受けて、市場は「米景気が弱いからFRBが利下げする」という読みを修正しました。

正直、ここが一番きつい。

株式市場は、景気がそこそこ強く、金利は下がる、という都合の良い組み合わせを買っていました。ところが、雇用が強いならFRBは急いで利下げる必要がありません。インフレが粘れば、むしろ高金利が長引く。米CPIが強ければ、利上げ再開の話まで市場に残ります。

この地合いでは、PERの高いグロース株ほど売られやすい。

日本株では、次のような反応になりやすいです。

領域影響見方
半導体・AIマイナス米ナスダック安と金利上昇の直撃を受けやすい
グロース株マイナス割引率上昇でバリュエーションが圧迫される
銀行・保険中立からややプラス金利上昇メリットはあるが、株安時はリスク削減売りも出る
高配当株相対的に底堅い利回りと業績安定性が見直されやすい
内需ディフェンシブ相対的に底堅いただし原材料高や円安には注意

銀行株を単純に「金利上昇で買い」と見るのも少し危ないです。

米金利上昇は金融株に追い風の面がありますが、同時に株式市場全体のリスク許容度を下げます。信用コストや海外景気警戒が強まると、銀行株も無傷ではいられません。今週の銀行は、攻めの主役というより、相場全体が崩れた時にどこまで耐えるかを見る温度計です。

焦点2:中東リスクは「原油高」より「リスク許容度低下」が問題

中東情勢も、週末に再び市場の警戒材料になりました。

米中央軍は、ホルムズ海峡方面へ向けられたイランのドローンを撃墜し、その後、イラン南部の沿岸監視レーダー施設を攻撃したと報じられています。さらに、イランがクウェートとバーレーン方面へ弾道ミサイルを発射し、米軍が多くを迎撃したとの報道もあります。

ここで注意したいのは、原油価格だけを見ないことです。

原油が一日で急騰していなくても、ホルムズ海峡周辺の緊張が高まれば、市場はリスク資産を減らします。特に日本株は、エネルギー輸入国、円安、海外勢の先物売買、半導体比率の高さが重なります。

中東リスクが日本株に効く経路は、だいたい次の4つです。

経路日本株への影響
原油・LNG価格電力、空運、外食、小売のコスト懸念
インフレ期待米金利上昇を通じてグロース株に逆風
リスクオフ先物売り、円買い、現物の利益確定につながりやすい
防衛・資源テーマ一部銘柄には短期資金が向かいやすい

資源株や防衛株は、週初に逆行高しやすいかもしれません。

ただ、ここも追いかけすぎは禁物です。ヘッドラインで急騰した銘柄は、停戦や交渉再開のニュースで一気に剥がれることがあります。防衛関連も、長期テーマとして見るのか、数日の需給として見るのかで全く違います。

今週の中東リスクは、原油そのものよりも、市場のリスク許容度を削る材料として見た方がいい。

焦点3:メジャーSQ週、先物主導の値幅に注意

6月12日(金)は、日経225先物・オプションの6月限SQ算出日です。

3月、6月、9月、12月のSQはメジャーSQです。現物株の寄り付きに絡んで需給が大きくなりやすく、週前半から先物主導の仕掛けが入りやすい。

今回は、そこに夜間先物の急落が重なりました。

SQ週の怖さは、材料が後から説明されることです。実際にはポジション調整やオプションのガンマ、裁定取引の巻き戻しで動いているのに、後から「米金利」「中東」「CPI」で説明される。もちろん材料は本物ですが、値幅は需給で増幅されます。

今週は、特に次の動きに注意したいです。

  • 月曜寄り付きのギャップダウン後に、先物の買い戻しが入るか
  • 63,000円割れでオプション絡みの売りが増えるか
  • SQ前日の木曜にポジション調整が一巡するか
  • SQ通過後、金曜後場に現物買いが戻るか

SQ週は、短期トレーダーにはチャンスがあります。

ただ、現物投資家は違います。今週のような外部環境では、寄り付きの値動きに飛びつくより、売りが一巡した銘柄を引き付けて見る方が現実的です。

セクター戦略:避難先と押し目候補を分ける

今週は、セクターを一つの方向で見ない方がいいです。

「地政学リスクだから資源株」「金利上昇だから銀行株」「AIは押し目」という単純な整理だと、かなり振らされます。大事なのは、避難先として買われる銘柄と、売られた後に拾う銘柄を分けることです。

逆行高を狙いやすい領域

セクター代表例見方
資源・エネルギーINPEX、石油資源開発、商社原油・天然ガスの供給不安プレミアムが乗りやすい
防衛・重工三菱重工業、川崎重工業、IHI地政学ヘッドラインで短期資金が入りやすい
高配当・ディフェンシブ通信、医薬品、食品指数急落時の相対的な待避先
銀行・保険メガバンク、大手損保金利上昇メリットはあるが、全面リスクオフ時は選別

この領域は「買われやすい」が、「安全」とは違います。

特に資源と防衛は、週初に強く寄り付いた場合、その後の利食いも速い。ヘッドラインを見てから飛び乗ると、短期筋の出口にされやすい局面です。

押し目を待ちたい領域

セクター代表例見方
AI電力・電線フジクラ、住友電工、古河電工構造テーマは強いが、地合い悪化時は連れ安待ち
半導体装置東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ米金利とナスダック安の影響を受けやすい
データセンター周辺重電、空調、電源、光部材中期テーマは残るが、短期過熱の冷却が必要
グロース株SaaS、ネット、IP関連金利上昇局面では決算確認まで無理をしにくい

AIインフラのテーマは、壊れていません。

ただし、テーマが強いことと、月曜の寄り付きで買うことは別です。フジクラや住友電工のような電線株、東京エレクトロンやアドバンテストのような半導体株は、週前半に投げが出てからの方が見やすい。

今週は、良い銘柄ほど安く買う準備をする週です。

上がっている時に強気になるより、下げた時にどの銘柄を残すかを決めておく方がいい。

今週の重要イベント

今週は、国内イベントよりも米国の物価指標と中東ヘッドラインの方が市場を動かしやすいです。

日付国内イベント・指標海外イベント・指標
6月8日(月)1〜3月期GDP改定値(8:50)週末の中東情勢を受けた原油・為替・米金利の反応
6月9日(火)5月マネーストック(8:50)米4月貿易収支
6月10日(水)5月国内企業物価指数(8:50)米5月CPI
6月11日(木)対外・対内証券売買契約等の状況(8:50)米5月PPI
6月12日(金)6月限メジャーSQ算出日SpaceX上場観測、米ハイテク需給に注意

今週の最大イベントは、6月10日の米CPIです。

雇用統計が強かった直後だけに、CPIまで強いと市場はかなり嫌がります。インフレが粘る、利下げが遠のく、米金利が上がる、ナスダックが売られる。その流れが東京市場にも直撃します。

反対に、CPIが落ち着けば、週初の売りは少し行き過ぎだったという見方も出ます。

6月11日のPPIも重要です。企業側の物価圧力が残っていると、CPIだけでは安心しにくい。6月16〜17日のFOMCを前に、金利見通しを再調整する週になります。

今週の決算注目銘柄

決算は個別材料ですが、今週は地合いが悪い中での発表になります。好決算でも指数に引っ張られることがある。逆に、期待値が低い銘柄は悪材料出尽くしで反発することもあります。

日付銘柄見方
6月8日(月)学情(23012Q決算。週初の地合い悪化と重なるため、数字より初動需給に注意
6月10日(水)ANYCOLOR(5032本決算。今期見通し、還元策、在庫評価の扱いが焦点
6月11日(木)ビジョナル(41943Q決算。グロース株逆風の中で成長期待を維持できるか
6月12日(金)神戸物産(30382Q決算。円安、原材料、価格転嫁、既存店の防衛力を見る

ANYCOLORは、かなり注目度が高いです。

ただし、金利上昇局面ではグロース株への目線が厳しくなります。好決算でも、来期ガイダンスや株主還元に物足りなさがあると売られやすい。市場は、売上成長だけではなく、利益率、在庫、キャッシュ、還元まで見てきます。

神戸物産は、今の相場では別の意味で重要です。

円安と原材料高が意識される局面で、低価格小売・食品流通の防衛力を測る銘柄です。価格転嫁が進んでいるのか、客数が落ちていないのか。相場全体が荒れる時ほど、こういう内需の数字は見られます。

投資スタンス:月曜の初動ではなく、火曜以降の残り方を見る

今週の投資スタンスは、かなりシンプルです。

月曜の初動で判断しすぎない。

夜間先物が大きく下げているため、週明けは売りが先行しやすいです。寄り付きで大きく下げる銘柄もあるでしょう。ただ、その下げが本当のリスク削減なのか、先物主導の一時的な投げなのかは、初日だけでは分かりません。

見るべきは、火曜以降に残る銘柄です。

  • 下げた後に出来高を伴って戻す銘柄
  • 寄り底で終われる大型株
  • 地合い悪化でも決算期待が残る銘柄
  • 防衛、資源、高配当だけでなく、AIインフラの本命株がどこで止まるか

逆に、避けたいのは「安くなったから全部買う」ことです。

今週の下げは、単なる利益確定とは限りません。米金利、中東、SQ、CPIが同時に来ています。安いと思って買ったら、翌日の米CPIでさらに下げる可能性もあります。

現金比率を少し高めに残し、買うなら分割。週初より週後半、寄り付きより引け味。今週はそこを見たい。

相場の急落局面では、最初に買う勇気より、二段目を待つ余裕の方が効くことがあります。

リスクシナリオ

今週の下振れリスクは、かなりはっきりしています。

リスク何が起きるか
米CPI上振れ米金利上昇、ナスダック続落、半導体売り
中東情勢悪化原油・為替・防衛株は荒れ、指数はリスクオフ
SQ絡みの先物売り63,000円割れから62,000円方向へ値幅が出る
円高転換輸出株の下支えが弱まり、指数の戻りが鈍る
SpaceX上場絡みの米ハイテク需給悪化AI・宇宙・半導体周辺に利益確定売りが出やすい

一方で、上振れシナリオもあります。

中東情勢が落ち着き、米CPIが市場予想を下回り、SQ前の売りが買い戻される場合です。その場合、週初の下げはかなり速く埋めにいく可能性があります。

ただ、その場合でも65,500円近辺ではいったん戻り売りを見たい。急落直後の反発は強く見えますが、全員が安心して買い直すには時間が必要です。

まとめ

2026年6月8日週の日本株は、これまでの強気相場が試される週です。

日経225先物は週末夜間で63,820円まで急落しました。米雇用統計の上振れで利下げ期待が後退し、米金利上昇がハイテク株を直撃。そこに中東リスクとメジャーSQが重なります。

今週の日経平均の想定レンジは61,000円〜65,500円。

週初は下値確認から入りやすく、63,000円を守れるかが最初の焦点です。崩れた場合は62,000円、さらに61,000円方向も想定しておきたい。一方、米CPIが落ち着き、中東情勢が悪化しなければ、SQ通過に向けて買い戻しが入る可能性もあります。

資源、防衛、高配当は避難先。AI電力インフラ、半導体は押し目候補。ただし、週初に急いで飛びつくより、売りが一巡した位置を見たい。

相場はまだ壊れたと決める段階ではありません。

でも、潮目は変わりました。今週は「何を買うか」より、「どこで売りが止まるか」を見る週です。

出典・参考資料

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。