ROE / ROA GUIDE ROE・ROA・自己資本比率 高ROEの理由を、B/Sから読む ROE 株主資本の効率 ROA 総資産の効率 自己資本比率 財務の耐久力 高ROEは、ROAと自己資本比率で中身を見る。

ROE・ROA・自己資本比率の早見表

まずは、3つの指標をまとめて見る。

指標何を見るか分母投資家が確認すること
ROE株主資本を使ってどれだけ稼いだか自己資本株主資本の効率
ROA会社全体の資産でどれだけ稼いだか総資産事業全体の資産効率
自己資本比率資産をどれだけ自己資本で支えているか総資産財務の安全性

ROEは株主目線の効率を見る。ROAは会社全体の資産効率を見る。自己資本比率は財務の耐久力を見る。

この3つは、バラバラの指標ではない。第5回で扱った貸借対照表(B/S)の「右側」と「左側」にそのままつながっている。

B/Sで見るROEとROAの違い

ROEとROAの違いは、貸借対照表で見るとかなり分かりやすい。

ROEとROAは、B/Sの見る場所が違う 総資産 現金・売掛金・在庫 設備・投資有価証券など ROAの分母 負債 借入金・社債など 自己資本 株主資本・利益剰余金など ROEの分母

ROAは左側の総資産を見る。会社が持っているすべての資産を使って、どれだけ利益を出したかを見る指標だ。

ROEは右下の自己資本を見る。株主から見て、返済義務のない資本を使ってどれだけ利益を出したかを見る指標である。

同じ利益でも、分母が違えば意味は変わる。ここがROEとROAのいちばん大事な違いだ。

ROEとは:株主資本の効率を見る

ROEは Return On Equity の略で、自己資本利益率と呼ばれる。

日本取引所グループは、ROEについて「当期純利益を、前期及び当期の自己資本の平均値で除したもの」と説明している。実務では簡便的に、次のように理解すると分かりやすい。

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROEが高い会社は、株主資本を効率よく利益に変えていると見られやすい。

ただし、ROEだけでは足りない。

ROEは分母が自己資本なので、自己資本が小さい会社ほど高く見えやすい。借入を多く使って自己資本を薄くしている会社でも、利益が出ていればROEは高くなる。

つまり、ROEは「株主資本の効率」を見る指標であって、「会社全体の安全性」を見る指標ではない。

ROAとは:会社全体の資産効率を見る

ROAは Return On Assets の略で、総資産利益率と呼ばれる。

ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

会社によっては、分子に営業利益や事業利益を使って、事業そのものの資産効率を見ることもある。どの利益を使っているかは、資料ごとに確認したい。

ROAは、借入金も自己資本も含めた会社全体の資産をどれだけ効率よく使っているかを見る指標である。

たとえば、工場、設備、在庫、売掛金、現金、投資有価証券を大量に持っている会社で、利益が少なければROAは低くなる。逆に、少ない資産で高い利益を出せる会社はROAが高くなりやすい。

ROAを見ると、借入でROEを押し上げているだけの会社か、資産全体を効率よく使っている会社かを見分けやすくなる。

自己資本比率とは:財務の耐久力を見る

自己資本比率は、総資産のうち自己資本がどれくらいあるかを見る指標である。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

自己資本比率が高い会社は、負債への依存が低く、一時的な赤字や景気悪化に耐えやすいと見られやすい。

ただし、これも業種差が大きい。不動産、銀行、リース、電力、鉄道などは、ビジネスモデル上、資産や負債が大きくなりやすい。自己資本比率は、同業比較と過去推移で見るのが基本だ。

ROE、ROA、自己資本比率を並べると、かなり見え方が変わる。

高ROEでも自己資本比率が低ければ、財務レバレッジで数字が高く見えているだけかもしれない。ROAも高く、自己資本比率も極端に低くないなら、事業そのものの効率が高い可能性がある。

高ROEの罠:ROEだけで判断しない

ROEが高い会社は、投資家から評価されやすい。

ただし、ROEだけで優良企業と判断するのは危ない。

例として、同じ1,000万円の利益を出すA社とB社を比べる。

項目A社B社
総資産1億円1億円
借入などの負債2,000万円9,500万円
自己資本8,000万円500万円
自己資本比率80%5%
当期純利益1,000万円1,000万円
ROE12.5%200%
ROA10%10%

B社のROEは200%で、数字だけ見ると非常に高い。

しかし、B社は自己資本が500万円しかない。自己資本比率は5%で、少しの赤字や資産価値の下落でも財務が大きく傷みやすい。ROAはA社と同じ10%なので、事業全体の資産効率が特別に高いわけではない。

このケースで分かるのは、高ROEの理由を分解する必要があるということだ。

高ROEの理由見方
利益率が高い事業の採算が良い可能性
資産効率が高い少ない資産で稼げている可能性
自己資本が薄い財務レバレッジで高く見えている可能性
一時的な純利益が大きい特別利益や税効果で押し上げられている可能性
自社株買いで自己資本が減った資本政策の影響を受けている可能性

ROEは便利だが、結論ではない。

ROA、自己資本比率、営業利益率、キャッシュフローと合わせて見ることで、数字の質が見えてくる。

ROE・ROA・自己資本比率を見る順番

実際の銘柄分析では、次の順番が使いやすい。

  1. ROEを見る
  2. ROAを見る
  3. 自己資本比率を見る
  4. 営業利益率を見る
  5. 営業キャッシュフローを見る
  6. 過去3年から5年の推移を見る
  7. 同業他社と比べる

ROEが高いなら、まず理由を考える。利益率が高いのか。総資産回転率が高いのか。自己資本が薄いのか。

実際に決算を見ていると、ROEが高い会社を見つけたときほど、次に自己資本比率を確認したくなる。数字が魅力的に見えるほど、その理由を疑うからだ。

ROAが低いなら、資産を多く持ちすぎていないかを見る。現金、在庫、売掛金、設備、投資有価証券が重くなっていないかを確認する。

自己資本比率が低いなら、借入に見合う利益と営業キャッシュフローがあるかを見る。金利上昇時に支払利息が重くならないかも確認したい。

数字は良い。問題は、その理由だ。

東証がPBR1倍割れ企業への対応を求めて以降、市場はROE改善策にも敏感になっている。ただし、機関投資家が見ているのはROEの水準だけではない。利益率の改善なのか、資本政策なのか、単なる自己資本の薄さなのか。そこまで分解される。

デュポン分解でROEの中身を見る

少し慣れてきたら、ROEを3つに分解して見る方法もある。

ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

これはデュポン分解と呼ばれる考え方である。

分解要素見ること
売上高純利益率売上に対してどれだけ純利益が残るか
総資産回転率総資産を使ってどれだけ売上を作れるか
財務レバレッジ自己資本に対してどれだけ資産を持っているか

高ROEの理由が利益率なのか、資産効率なのか、レバレッジなのかを分けると、同じROEでも評価が変わる。

たとえば、利益率が高く、総資産回転率も高い会社なら、事業そのものが強い可能性がある。財務レバレッジだけでROEが高い会社なら、借入や自己資本の薄さによる数字の押し上げかもしれない。

ROEを見たら、分解する。ここまでできると、指標の読み方はかなり実践的になる。

よくある質問

ROEとROAはどちらを重視すべきですか?

どちらか一方ではなく、セットで見る。株主資本の効率を見るならROE、会社全体の資産効率を見るならROAである。ROEが高くてもROAが低い場合は、財務レバレッジで押し上げられていないかを確認したい。

ROEは何%以上なら良いですか?

一般に10%前後を一つの目安として見る投資家は多い。ただし、業種差、利益の一時要因、自己資本比率、株価水準を無視して判断するのは危ない。ROEは単体ではなく、ROAや自己資本比率と合わせて見る。

ROAは何%以上なら良いですか?

一律の目安は置きにくいが、5%前後を一つの参考水準として見ることはある。ただし、製造業、金融、不動産、小売、ソフトウェアでは必要な資産構造が違う。同業比較と過去推移を見るのが基本である。

自己資本比率が高ければ安心ですか?

財務の耐久力という意味では安心材料になりやすい。ただし、自己資本比率が高くてもROEやROAが低い場合、資本を効率よく使えていない可能性がある。安全性と資本効率は分けて見る必要がある。

高ROEの会社は買いですか?

高ROEだけでは判断できない。利益率が高いのか、資産効率が高いのか、借入によるレバレッジなのか、一時利益なのかを分けて見る必要がある。売買判断は、事業内容、株価水準、財務、キャッシュフロー、自分のリスク許容度まで含めて考える。

最終判断

ROE、ROA、自己資本比率は、P/LとB/Sをつなげて読むための指標である。

ROEは株主資本の効率を見る。ROAは会社全体の資産効率を見る。自己資本比率は財務の耐久力を見る。

高ROEは魅力的に見えやすい。だが、ROEだけでは危ない。ROAが低いなら、資産全体を効率よく使えていないかもしれない。自己資本比率が低いなら、借入や自己資本の薄さでROEが高く見えているだけかもしれない。

投資家が見るべきなのは、数字の高さではなく、なぜその数字になっているかだ。

次回からは、企業分析で学んだ数字の見方を、自分自身の家計と制度理解に向ける。投資を続けるには、家計、保険、年金、税金という足元の土台も欠かせない。

投資家の学習ロードマップ

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出典・参考