会社側は2027年2月期に売上高1,590.21億円(前期比+23.5%)、営業利益381.12億円(同+22.3%)、純利益278.09億円(同+46.0%)を見込んでいます。ここだけ見れば強い回復計画です。ただし、純利益の伸びには一過性費用の剥落も含まれるため、PEGレシオを機械的に「割安」と読むのは危険です。

結論として、ローツェはAI・HBM投資の周辺で中期的に確認したい銘柄です。ただし、足元株価はすでに期待を織り込み始めており、投資判断では「受注の再加速」「営業利益率の回復」「半導体設備投資サイクル」「為替と地政学リスク」をセットで見たい局面です。

本記事は個別銘柄の売買を推奨するものではありません。株式投資には価格変動、元本損失、流動性、為替、金利、業績悪化、半導体市況、地政学リスクなどがあります。PER、PBR、PEG、株価は時点や算定元により変動します。

ローツェは何をしている会社か

ローツェは、半導体・FPD関連装置を中心に、ウエハ搬送システム、マスク・レチクル搬送システム、ライフサイエンス関連装置などを手がける企業です。

投資家目線で見ると、同社の中心は「半導体製造ラインの中で、ウエハを汚さず、傷つけず、止めずに運ぶ技術」です。

半導体製造では、目に見えない微粒子、静電気、振動、位置ずれが歩留まりに影響します。特に先端ロジック、HBM、先端パッケージングでは、工程が複雑になり、装置間の搬送精度も重要になります。

ローツェの事業は派手なAIチップそのものではありません。GPUやHBMを直接作る会社でもありません。けれど、AI半導体を量産する工場の内側に入る装置メーカーです。ここが面白いところです。

2026年2月期決算の読み方

まずは決算の土台を確認します。

項目2026年2月期実績前期比
売上高1,287.94億円+3.5%
営業利益311.54億円-2.7%
経常利益326.21億円-8.0%
親会社株主に帰属する当期純利益190.48億円-19.4%
EPS109.33円-18.5%
営業利益率24.2%前期25.7%から低下
自己資本比率66.0%前期62.8%から改善
営業キャッシュ・フロー311.91億円前期367.91億円から減少

数字は少しねじれています。

売上は過去最高。営業利益率も24.2%あり、製造業としてはかなり高い水準です。一方で、営業利益と純利益は減少しています。

会社資料では、海外子会社の取込期間の影響や、当該子会社に係るのれん償却額などによる販管費増加、さらに訴訟損失引当金74.29億円の計上が説明されています。

つまり、2026年2月期だけを見て「成長が止まった」と判断するのは早いです。とはいえ、「一過性だから完全に無視してよい」とも言い切れません。買収後の費用、のれん償却、訴訟、米国事業の立ち上げコストは、今後も利益率の読み方に影響します。

受注とバックログは強いのか

半導体製造装置株を見るとき、売上高より先に見たいのが受注と受注残です。

ローツェの2026年2月期の受注実績は次の通りです。

項目受注高前期比受注残高前期比
半導体関連装置1,039.71億円+5.2%504.61億円-4.5%
分析装置32.04億円-10.2%31.96億円-9.9%
FPD関連装置53.81億円-28.2%16.78億円-35.3%
半導体・FPD関連装置事業合計1,125.58億円+2.4%553.36億円-6.2%
全社合計1,133.71億円+2.5%554.08億円-6.1%

ここは少し冷静に見たいところです。

半導体関連装置の受注高は増えています。AIサーバー向けの先端ロジックやメモリ投資、先端パッケージ関連設備投資の追い風はあります。

一方で、全社の受注残高は前年比で減少しています。したがって、「バックログが過去最高で、Book-to-Billが1を大きく超えている」といった強すぎる表現は避けた方が安全です。

現時点での見方はこうです。

  • 半導体関連装置の受注は底堅い
  • ただし、受注残は増勢一辺倒ではない
  • 2027年2月期会社予想の達成には、受注の再加速と出荷の円滑化が必要
  • FPD関連は弱く、成長ドライバーは半導体側に寄っている

この銘柄を追うなら、次回以降の決算で「受注高が売上を上回る局面に戻るか」を確認したいです。

2027年2月期の会社予想

会社側は、2027年2月期に大きな回復を見込んでいます。

項目2027年2月期会社予想前期比
売上高1,590.21億円+23.5%
営業利益381.12億円+22.3%
経常利益382.41億円+17.2%
親会社株主に帰属する当期純利益278.09億円+46.0%
EPS159.62円+46.0%
年間配当20円前期17円から増配予想

予想の見た目はかなり強いです。売上高、営業利益、純利益のすべてで大幅な伸びが計画されています。

ただし、純利益の+46.0%は、2026年2月期に訴訟損失引当金が重かった反動も含みます。営業利益の伸びは+22.3%で、こちらの方が本業の回復感を測るうえでは使いやすい数字です。

市場が次に見るのは、売上の伸びそのものより、営業利益率が再び25%台へ戻るかどうかでしょう。

ローツェの競争力はどこにあるか

ローツェの強みは、単なる「半導体関連」というラベルではありません。

1. ウエハ搬送という工程の重要性

先端半導体では、ウエハを移動させるだけでも高度な制御が必要です。搬送中の微粒子、静電気、微振動、位置ずれは、歩留まりやライン稼働率に影響します。

この工程は地味ですが、工場側から見ると止められない部分です。採用後に簡単に別メーカーへ切り替えにくい点は、ローツェの競争力を支えます。

2. 顧客との共同開発に近い構造

先端プロセスでは、装置メーカーが顧客の要求仕様に合わせて開発を進める場面が増えます。いったん量産ラインに入った装置は、再認証や歩留まり検証の負担が大きく、切り替えコストが高くなります。

この構造は、ローツェにとっての堀です。

3. 高い利益率

2026年2月期の営業利益率は24.2%です。前期から低下したとはいえ、依然として高水準です。

ここは市場がローツェを評価する大きな理由です。半導体設備投資サイクルに乗った時、売上成長が利益に落ちやすい体質を持っています。

競合・周辺銘柄との位置づけ

ローツェは、半導体装置株の中でも「装置内・工程内の搬送」に寄った銘柄です。

企業主な位置づけローツェとの違い
ローツェ(6323ウエハ搬送、クリーン搬送AI・先端工程のミクロ搬送に近い
平田機工(6258生産設備、ライン設備半導体専業ではなく、自動車・家電などにも分散
ダイフク(6383工場・物流システム、OHT工場全体のマクロ物流に強い
東京エレクトロン(8035前工程総合装置半導体装置の大型中核株
ディスコ(6146切断・研削、後工程AI/HBMの後工程ボトルネックに近い

ローツェは、東京エレクトロンやディスコのような市場の主役銘柄と比べると、テーマの中心から少し横にいます。

ただ、その分「AI半導体の工場投資が広がると、搬送装置にも資金が向かう」という二段目のテーマとして見られやすいです。

半導体株全体の中では、ローツェは「中期成長狙い」「テーマ性を許容する中小型寄りの候補」に近い位置づけです。大型中核株ほどの安定感はない一方、テーマの解像度が上がる局面では再評価されやすい銘柄です。

バリュエーション:PEGだけで割安とは言い切れない

添付稿では予想PER約22倍、PEGレシオ0.48という前提が置かれていました。

ただし、株価水準は日々変わります。Yahoo!ファイナンスでは、2026年6月8日15時30分時点で会社予想PER24.58倍、会社予想EPS160.35円と表示されています。

予想PER = 24.58倍
会社予想EPS = 160.35円
確認時点 = 2026年6月8日 15:30

このPERを純利益成長率46.0%で割ると、PEGレシオはおおむね0.53です。

PEG = 24.58 ÷ 46.0
    ≒ 0.53

数字だけ見れば、成長率対比で極端に高いとは言いにくい水準です。

ただし、このPEGはかなり扱いに注意が必要です。2027年2月期の純利益成長率には、2026年2月期の訴訟損失引当金など一過性費用の剥落が含まれます。純利益の+46.0%をそのまま持続成長率として使うと、株価の見方が甘くなります。

個人的には、ローツェのバリュエーションは「割安」と断定するより、次のように見る方が現実的です。

  • 予想PER24倍台は、半導体装置株としては高すぎるとは言えない
  • ただし、営業利益成長率+22.3%で見れば、PEG的な余裕は純利益ベースほど大きくない
  • 株価はAI・HBM期待をすでに織り込み始めている
  • 受注残の増勢確認がないままPERだけで買うと、期待先行に巻き込まれやすい

つまり、良い会社ではあります。ただ、良い会社を良いタイミングで買えるかは別問題です。

3つのシナリオで見る

強気シナリオ

AIサーバー投資が高水準で続き、HBM、先端ロジック、先端パッケージングの投資が広がるケースです。

この場合、ウエハ搬送装置の需要も増えやすく、2027年2月期の会社予想達成に加えて、2028年2月期の受注見通しも強くなります。営業利益率が25%台へ戻れば、市場はローツェを半導体装置の中核成長株として再評価しやすくなります。

ベースシナリオ

AI向けは堅調だが、スマートフォン、PC、汎用半導体の回復はまだら模様というケースです。

この場合、会社予想は一定程度達成できても、株価は受注の強弱に敏感になります。市場は「数字は良いが、次の受注が見えない」と感じると、PER拡大には慎重になります。

ローツェを見るうえでは、このベースシナリオがいちばん現実的です。

弱気シナリオ

AI設備投資の過熱感が後退し、TSMCや大手メモリメーカーの投資計画が抑制されるケースです。

この場合、受注残の減少が先に見え、売上よりも株価が先に反応する可能性があります。半導体装置株は、業績が悪化してから売られるのではなく、受注の鈍化を見て売られることが多いです。

リスク要因

半導体設備投資サイクル

ローツェは構造的な成長テーマを持ちますが、半導体設備投資のサイクルからは逃れられません。

AI向けが強くても、顧客の投資タイミングが遅れると、受注や売上の認識時期がずれます。

為替リスク

海外売上比率が高いため、急激な円高は収益の重しになります。

為替感応度は決算ごとに確認する必要があります。半導体株が強い局面でも、円高が進むと日本の輸出・外需株全体の評価が冷えやすくなります。

顧客集中と地政学リスク

2026年2月期の主な販売先にはApplied Materials, Inc.とTSMCがあり、TSMC向け売上は前期から大きく増えています。

大口顧客との関係は強みです。ただし、顧客の設備投資計画、地域分散、米中規制、台湾リスクの影響を受けやすい点もあります。

訴訟・買収関連費用

2026年2月期には訴訟損失引当金74.29億円が計上されました。Nanoverse関連ののれん償却や販管費増も利益率に影響しています。

今後は、本業の成長だけでなく、買収後の収益貢献と追加費用のバランスを見たいところです。

投資チェックポイント

ローツェを追うなら、次の順番で確認します。

チェック項目見る理由
四半期受注高売上より先に半導体設備投資の勢いが出る
受注残高翌期以降の売上視認性を測る
営業利益率高収益体質が維持されているかを見る
半導体関連装置の構成比成長ドライバーがどこにあるかを見る
主要顧客向け売上顧客集中と成長余地を同時に見る
為替前提円高時の下押しリスクを確認する
訴訟・買収関連費用一過性か、継続的な負担かを分ける

特に大事なのは、次の決算で「受注高が再び売上高を明確に上回るか」です。

ここが確認できれば、2027年2月期だけでなく、2028年2月期の見通しにも厚みが出ます。逆に、売上は伸びても受注が鈍い場合、市場は「ピークが近いのでは」と疑いやすくなります。

総合判断

ローツェ(6323)は、AI・HBM・先端パッケージング投資の周辺で中期的に確認したい半導体製造装置株です。

2026年2月期は売上が過去最高だった一方、利益面ではNanoverse関連費用や訴訟損失引当金の影響が出ました。2027年2月期は会社予想ベースで大幅増収増益を見込んでおり、数字だけ見れば回復局面にあります。

ただし、市場はすでにその回復をある程度織り込み始めています。2026年6月8日時点のYahoo!ファイナンス表示では、会社予想PERは24倍台です。PEGだけを見れば割高感は強くありませんが、純利益成長率には一過性費用の剥落が含まれます。

したがって、本記事の投資スタンスは「中立からやや強気」です。

事業の質は高い。テーマ性もある。財務も厚い。ただ、ここから強気に傾けるには、次回以降の四半期で受注の再加速と営業利益率の回復を確認したい。市場はそこを見ています。

出典

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。