まず結論
業績は強い。ただし、評価の中心を売上成長だけに置く段階は過ぎつつある。
2025年12月期は売上高342.85億円、営業利益27.68億円となり、ともに二桁成長だった。国内総小売売上高は679億円、国内店舗数は1,066店まで増えた。コロナ禍後の回復という説明だけでは足りず、店舗改装、出店、複数個買いの訴求、アプリ会員の拡大が数字に表れている。
ところが2026年1Qは、売上高が13.5%増えたのに営業利益は4.2%減った。粗利率は前年同期の51.0%から48.2%へ、営業利益率は6.4%から5.4%へ低下している。原材料高と円安、物流費、販売拠点拡大の費用が売上増の効果を上回ったためだ。
ここからは売上より利益率を見る局面である。会社計画も2026年12月期の営業利益を2.2%増と置いており、売上高4.5%増より伸びが鈍い。増収基調はすでに前提に入り、上振れ余地は粗利率と販管費の吸収力で決まる。
企業概要と利益構造
同社はアイスクリーム専門店のフランチャイズ本部であり、製品の製造・供給、店舗設備の賃貸、経営指導などを手掛ける。店舗の多くをフランチャイズで展開するため、小売店舗をすべて直営する業態とは固定費の持ち方が異なる。
ただし、単純な「資産を持たないロイヤリティー企業」ではない。工場、生産設備、フランチャイジー向け店舗設備を保有し、2025年12月期の投資キャッシュ・フローは43.36億円の支出だった。営業キャッシュ・フロー44.56億円とほぼ同規模で、製造能力や店舗網への投資負担は軽くない。
利益を見るときは、国内総小売売上高の伸びが製品販売やロイヤリティーにどう波及したか、その増分が原材料費、物流費、広告費、設備投資を上回ったかを追う必要がある。
直近業績:増収の質をどう見るか
| 指標 | 2025年12月期 | 2026年1Q | 見方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 342.85億円(前期比+11.7%) | 74.71億円(前年同期比+13.5%) | 店舗増と1店舗当たり売上の伸びが続く |
| 営業利益 | 27.68億円(+17.1%) | 4.03億円(-4.2%) | 1Qは増収でも営業減益 |
| 営業利益率 | 8.1% | 5.4% | 1Qは前年同期比1.0ポイント低下 |
| 経常利益 | 28.61億円(+19.9%) | 4.25億円(+12.3%) | 1Qは為替差益への反転も寄与 |
| 純利益 | 17.70億円(+14.7%) | 2.72億円(+12.4%) | 二桁増益だが本業利益とは分けて見る |
2026年1Qの経常利益は二桁増益だが、営業外では前年同期に39百万円の為替差損を計上したのに対し、当期は28百万円の為替差益となった。本業の採算を表す営業利益は減っている。見出しだけなら「増収・最終増益」だが、中身は「増収・粗利率低下・営業減益」だ。
会社は1Q営業利益について社内目標を上回ったとしており、通期予想も据え置いた。しかも通期計画の粗利率は48.0%で、2025年実績の49.6%から低下する前提である。1Qの48.2%は計画線に近く、ただちに業績失速と決めつける数字でもない。繁忙期に売上規模を稼ぎ、販管費率を抑えられるかが次の確認点になる。
市場動向:金額は伸びても数量は減っている
日本アイスクリーム協会によると、2025年度のアイスクリーム販売金額は6,631億円と前年比2.8%増え、6年連続で過去最高となった。対照的に販売物量は91万5,645キロリットルで2.2%減。リッター単価は5.1%上昇した。
市場は拡大している。ただ、その主因は数量の右肩上がりではなく、価格改定と高付加価値化だ。生活防衛意識が強まれば、プレミアム商品や外食型デザートの購入頻度が落ちる余地はある。アイスを「季節を問わないプチ贅沢」と捉える説明は消費者行動の一面を表すが、ディフェンシブと呼び切るのは少し乱暴だ。気温、休日、商業施設の客数、可処分所得の影響を受ける。
その中でサーティワンの2025年国内総小売売上高は前年を上回り、1店舗当たり年間小売売上高も6,449万円へ伸びた。業界統計とは期間も集計範囲も異なるため単純比較はできないが、同社は単なる市場価格上昇以上の施策を積み上げていると読める。
成長を支える三つの仕組み
複数個買いと「31パティスリー」
新作フレーバーを入口に、ダブルやバラエティボックスへ誘導する設計は、来店客数だけに頼らず購入点数を増やす。アイスクリームケーキの新カテゴリー「31パティスリー」も、自宅需要、手土産、誕生日など利用場面を広げる施策だ。
ここで見たいのはブランド名の広がりではなく、アイスクリームケーキを含む商品構成が平均購入額と粗利額を押し上げているか。商品が増えても製造や店舗オペレーションが複雑になれば、利益率には逆風となる。
アプリ会員を売上につなげる力
2026年1Q末の「31Club」会員数は1,100万人を超え、会員の購入額は売上全体の44.1%を占めた。会員数そのものより、購入頻度、クーポン利用後の再来店、モバイルオーダー比率を追いたい。
デジタル施策は広告費を使って会員を集めるだけでは利益にならない。需要予測、発注、シフト作成、注文待ち時間の短縮まで店舗運営へ落とし込めれば、人手不足と廃棄の抑制につながる。利益貢献は会員数ではなく、販管費率や1店舗当たり売上高で確認したい。
販売拠点の拡大
2026年1Q末の国内店舗数は1,078店で、前年同期末から40店増えた。通常店舗以外の国内販売拠点は431カ所、台湾・ハワイは52店で、総販売拠点は1,561カ所となった。
新規商業施設だけでなく、ロードサイド、駅前、ビジネス街、空港、サービスエリアへ接点を広げる戦略は、夏場や大型商業施設への依存を薄める。ただし、出店数だけでは判断できない。新店の立ち上がり、既存店へのカニバリゼーション、フランチャイジーの採算、改装投資の回収期間まで見て初めて成長の質が分かる。
株式市場での解釈
2026年7月22日終値4,110円と会社予想EPS186.80円から単純計算した予想PERは約22倍。2026年1Q末の1株当たり純資産を基準にしたPBRは約2.7倍となる。株価は2026年の年初来安値3,990円と高値4,175円の狭い範囲で推移しており、直近まで大きな方向感は出ていない。
この評価は、業績の安定性、ブランド、優待・配当への需要をある程度織り込んでいると考えた方がよい。会社予想の純利益成長率は1.6%にとどまり、PERだけを見て明確な割安とは言いにくい。良い売上が続いても、営業利益率が戻らなければ評価の切り上がりは限定されやすい。
反対に、粗利率の低下が会社想定内に収まり、繁忙期の販管費率が改善すれば見え方は変わる。市場が待っているのは、もう一段の売上記録ではなく、増収が再び営業増益へ転換する証拠だろう。
強気シナリオ
- 新作・コラボからダブル、バラエティボックス、アイスクリームケーキへの購入点数増が続く
- 31Clubとモバイルオーダーが来店頻度だけでなく店舗生産性を改善する
- 新店と通常店舗以外の販売拠点が既存店を侵食せず、国内総小売売上高を押し上げる
- 調達・製造効率化によって、原材料高と円安の影響を繁忙期に吸収する
この場合、2026年の増益率は会社計画を上回り、成長鈍化を前提にした見方が修正される余地が出る。
弱気シナリオ
- 価格・高付加価値化による市場成長に対し、消費者の購入数量がさらに落ちる
- 原材料、為替、物流費、人件費の上昇が続き、粗利率48%前後が定着する
- 出店と広告の先行費用が重く、新店の売上が想定ほど立ち上がらない
- コラボの反動や販促依存で、既存店売上と1店舗当たり売上の伸びが鈍る
特に気になるのは、2025年の好業績を受けた期待値が高いまま、利益成長だけが低い水準へ落ち着くケースだ。売上記録の更新が続いても、営業利益率が下がれば株価には新味が出にくい。
注目KPI
| KPI | 確認する理由 |
|---|---|
| 粗利率・営業利益率 | 2026年1Qの低下が計画内か、追加悪化かを判断する |
| 国内総小売売上高 | 店舗網全体の需要を見る |
| 既存店売上高 | 出店効果を除いたブランドの実力を見る |
| 1店舗当たり小売売上高 | 店舗数だけに頼らない成長かを確認する |
| 31Club会員売上構成比 | 会員獲得が実売上につながっているかを見る |
| モバイルオーダー比率・店舗生産性 | デジタル投資が販管費率を改善するかを見る |
| 国内店舗数・総販売拠点数 | 出店ペースと採算のバランスを追う |
| 営業CFと設備投資 | 工場・店舗投資後にも現金が残るかを見る |
まとめ
B-R サーティワン アイスクリームの売上成長は、業界の追い風だけでは説明できない。店舗網、改装、アプリ、複数個買い、コラボ商品が噛み合い、2025年通期と2026年1Qの売上記録につながった。
ただし、2026年1Qは粗利率が下がり、営業減益となった。経常利益と純利益の二桁増だけで本業を高く評価するのは早い。売上より利益、利益よりキャッシュ。次の決算では、繁忙期の売上が粗利率と営業キャッシュ・フローにどう変わったかを見たい。
関連ページ
出典
- B-R サーティワン アイスクリーム「IR情報」
- B-R サーティワン アイスクリーム「決算説明資料」
- B-R サーティワン アイスクリーム「サーティワン早わかり」
- 一般社団法人 日本アイスクリーム協会「2025年度 販売実績」
決算数値と施策は、2026年2月9日公表の2025年12月期決算資料および2026年4月23日公表の2026年12月期第1四半期決算資料に基づく。株価は2026年7月22日終値、PER・PBRは同終値と会社開示値からの単純計算。