海外送金とは
海外送金とは、日本と外国の間で銀行口座などを通じて資金を移動することです。
代表的な用途には、次のようなものがあります。
- 海外に住む家族への生活費
- 留学費用や学費
- 海外不動産の購入費
- 商品やサービスの代金
- 海外法人への出資
- 海外から日本への給与・報酬
- 日本から海外への投資資金
日本では、原則として外国送金や円と外貨の交換は自由です。ただし、経済制裁の対象となる取引や、外為法上の許可・報告対象となる取引は別途手続きが必要です。
海外送金の主な方法
海外送金には、大きく分けて次の方法があります。
1.銀行の海外送金
日本の銀行から、海外の銀行口座へSWIFTネットワークなどを利用して送金する方法です。
高額送金や法人間の取引では、銀行送金がよく使われます。
メリット
- 高額送金に対応しやすい
- 法人や不動産取引に向いている
- 対応している国や通貨が多い
- 銀行の窓口で相談できる
デメリット
- 送金手数料が比較的高い
- 中継銀行手数料が発生することがある
- 着金まで数営業日かかることがある
- 事前登録や書類提出が必要な場合がある
2.オンライン海外送金サービス
オンライン上で本人確認を行い、銀行よりも比較的安い手数料で送金するサービスです。
少額から中額の生活費、留学費用、個人間送金などで利用されています。
メリット
- 手続きがオンラインで完結しやすい
- 為替レートや手数料が分かりやすい
- 銀行送金より安い場合がある
- 着金が比較的早い場合がある
デメリット
- 国や通貨によって送金限度額が異なる
- 高額送金では追加審査が行われる
- 一部の送金目的に対応していない場合がある
- 送金先国の規制により利用できない場合がある
3.送金専門サービス
受取人が銀行口座を持っていない場合でも、現地の店舗や提携先で現金を受け取れるサービスがあります。
フィリピンなど、海外労働者から家族への送金需要が多い国で広く利用されています。
ただし、現金受取は詐欺や本人確認の問題もあるため、受取人情報を慎重に確認する必要があります。
海外送金の基本手続き
海外送金は、一般的に次の流れで行います。
手順1.受取人に必要情報を確認する
最初に、受取人または受取銀行から送金に必要な情報を取得します。
主に必要となる情報は次のとおりです。
- 受取人氏名
- 受取人住所
- 銀行名
- 銀行住所
- 支店名
- 口座番号
- SWIFTコードまたはBIC
- 国ごとの銀行コード
- 送金通貨
- 受取人の電話番号
- 送金目的
受取人氏名は、銀行口座の登録名義と完全に一致させることが重要です。
ローマ字のつづりや姓名の順序が異なると、銀行から確認を受けたり、送金が返金されたりすることがあります。
手順2.送金方法を選ぶ
次に、銀行送金とオンライン送金サービスを比較します。
比較する項目は、単純な送金手数料だけではありません。
- 送金手数料
- 為替レート
- 為替手数料
- 中継銀行手数料
- 受取銀行手数料
- 着金予定日
- 送金限度額
- 対応する送金目的
「送金手数料無料」と表示されていても、為替レートにコストが含まれている場合があります。
最終的に受取人の口座へいくら入金されるのかを確認することが重要です。
手順3.本人確認を行う
海外送金では、犯罪収益移転防止やマネーロンダリング対策のため、本人確認が行われます。
一般的に使用される書類は次のとおりです。
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- パスポート
- 在留カード
- 住民票
- 本人名義の銀行口座
法人の場合は、登記事項証明書、実質的支配者の確認書類、取引目的の資料などが必要になる場合があります。
手順4.送金目的を申告する
海外送金では、送金目的の入力や申告を求められます。
代表的な送金目的は次のとおりです。
- 家族への生活費
- 留学費用
- 医療費
- 商品購入代金
- サービス利用代金
- 不動産購入費
- 投資資金
- 給与・報酬
- 配当金
- 企業間取引
「その他」など曖昧な理由にすると、追加確認が行われる場合があります。
可能な限り、実際の取引内容を具体的に申告します。
手順5.資金の出所を確認する
送金額が大きい場合や、通常とは異なる取引の場合は、資金の出所を証明する書類を求められることがあります。
例としては次のような書類があります。
- 給与明細
- 預金通帳
- 確定申告書
- 納税証明書
- 不動産売買契約書
- 株式売却明細
- 相続関係書類
- 請求書
- 売買契約書
- 贈与契約書
銀行や送金サービスは、送金金額と利用者の収入・資産状況に不自然な点がないか確認します。
手順6.手数料の負担方法を選択する
銀行の海外送金では、手数料の負担方法として次のような選択肢があります。
OUR
送金人が送金手数料や中継銀行手数料を負担する方式です。
受取人に指定金額をなるべく満額届けたい場合に利用されます。ただし、すべての手数料が完全に固定されるとは限りません。
SHA
送金人と受取人が、それぞれの銀行で発生する手数料を負担する方式です。
送金人は送金銀行の手数料を支払い、中継銀行や受取銀行の手数料は受取金額から差し引かれる場合があります。
BEN
受取人が送金に関する手数料を負担する方式です。
送金額から手数料が差し引かれるため、受取額が少なくなる可能性があります。
手順7.送金内容を確認して実行する
入力後は、次の項目を再確認します。
- 受取人名
- 口座番号
- SWIFTコード
- IBANなどの国別コード
- 送金通貨
- 送金金額
- 送金目的
- 手数料負担区分
口座番号や銀行コードを間違えると、組戻しや再送金に時間と費用がかかります。
手順8.着金を確認する
送金後は、取引番号や送金控えを保存します。
銀行送金では、送金状況を確認するために取引照会番号が使われることがあります。
着金しない場合は、次の順番で確認します。
- 送金元銀行に送金完了を確認
- 中継銀行で保留されていないか確認
- 受取銀行に入金状況を確認
- 受取人名や口座番号の誤りを確認
- 追加資料の提出依頼が出ていないか確認
SWIFTコードとは
SWIFTコードは、国際送金で銀行を識別するために使用されるコードです。
BICとも呼ばれ、一般的には8文字または11文字の英数字で構成されます。
SWIFTコードは銀行を特定する情報であり、受取人本人の口座番号ではありません。送金には、SWIFTコードと受取人の口座番号の両方が必要になることが一般的です。
IBANとは
IBANは「International Bank Account Number」の略で、主に欧州や中東の一部で使用される国際銀行口座番号です。
IBANには、国コード、チェック数字、銀行情報、支店情報、口座番号などが組み込まれています。
国際送金の口座情報を標準化し、処理の自動化や入力ミスの防止を目的としています。
日本の銀行口座には通常、IBANはありません。
国ごとの海外送金手続きの違い
日本から中国への送金
日本から中国へ送金する場合、中国国内の銀行口座へ人民元、米ドル、日本円などで送金します。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 中国国内の住所
- 銀行名
- 支店名
- 口座番号
- SWIFTコード
- 受取人の電話番号
- 送金目的
- 場合によっては中国語の銀行名・支店名
注意点
中国では、外貨の受取や人民元への両替時に、受取人側の銀行が送金目的を確認することがあります。
特に次のような送金は、追加確認を受けやすい傾向があります。
- 高額送金
- 商品代金
- 不動産関連
- 投資関連
- 頻繁な個人間送金
- 送金人と受取人の関係が不明な送金
家族への生活費であっても、送金人との関係や資金用途を確認されることがあります。
日本側で送金が完了していても、中国側で受取手続きが終わるまで口座へ反映されない場合があります。
中国から日本への送金
中国から日本への送金は、日本から中国への送金より手続きが複雑になることがあります。
中国側では、人民元を外貨に交換して海外へ送るため、外貨管理に関する確認が行われます。
主に必要な情報
- 日本の受取銀行名
- 支店名
- 支店住所
- SWIFTコード
- 日本国内の口座番号
- 受取人氏名
- 受取人住所
- 受取人の電話番号
- 送金目的
- 資金の出所を示す書類
送金目的別に求められる可能性がある書類
留学費用
- 入学許可書
- 学費請求書
- 在学証明書
生活費
- 親族関係証明
- 受取人の在留・居住に関する書類
不動産売却代金
- 不動産売買契約書
- 納税証明書
- 所有権関係書類
給与や報酬
- 雇用契約書
- 給与明細
- 納税証明書
中国から高額送金を行う場合は、複数回に分ければ問題ないというものではありません。
規制や確認を避ける目的で送金を分割すると、かえって不審な取引として確認を受ける可能性があります。
日本からアメリカへの送金
アメリカへ送金する場合は、SWIFTコードに加えて、ABA Routing Numberを求められることがあります。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 受取人住所
- 銀行名
- 銀行住所
- 口座番号
- SWIFTコード
- ABA Routing Number
- Checking AccountまたはSavings Accountの区分
- 送金目的
ABA Routing Numberは、アメリカ国内で銀行や支店を識別する9桁の番号です。国際送金で必要な番号と、ACHなどの国内送金で使う番号が異なる銀行もあるため、受取銀行に確認する必要があります。ABAは米国の銀行コードとして使用され、IBANは主に欧州で使用されています。
ACHとSWIFTの違い
ACHは主にアメリカ国内の銀行間送金に利用されます。
一方、SWIFT送金は国境を越えた銀行間送金で利用されます。日本からアメリカへ送金する場合、送金サービスによってはアメリカ国内部分をACHで処理する場合があります。
アメリカから日本への送金
アメリカから日本へ送金する場合、日本側の銀行には通常、IBANやABA Routing Numberはありません。
送金人には、次の情報を伝えます。
- 日本の銀行名
- 支店名
- 銀行住所
- SWIFTコード
- 口座番号
- 受取人氏名
- 受取人住所
- 受取人電話番号
海外側の送金画面でIBANやRouting Numberが必須入力になっている場合は、その送金方法が日本向け国際送金に対応していない可能性があります。
日本の受取銀行に確認し、正しい国際送金経路を利用する必要があります。
欧州への送金
ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダなど、欧州の多くの国ではIBANが必要です。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 受取人住所
- IBAN
- SWIFTまたはBIC
- 銀行名
- 送金目的
IBANを1文字でも間違えると、送金が返金されたり、処理が遅れたりする可能性があります。
受取人から口頭で番号を聞くのではなく、銀行アプリや口座明細に表示されたIBANをコピーしてもらう方が安全です。
イギリスへの送金
イギリスでは、口座番号に加えてSort Codeが使われます。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- 口座番号
- Sort Code
- SWIFTコード
- IBAN
- 受取人住所
イギリスは欧州連合を離脱していますが、銀行口座にIBANが割り当てられている場合があります。
送金サービスによって、IBANを使う方法とSort Codeを使う方法が異なります。
オーストラリアへの送金
オーストラリアでは、BSBコードが使用されます。
BSBは、銀行と支店を識別する6桁の番号です。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- BSBコード
- 口座番号
- SWIFTコード
- 受取人住所
カナダへの送金
カナダでは、金融機関番号と支店番号で構成されるTransit Numberを求められることがあります。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- 口座番号
- Transit Number
- Institution Number
- SWIFTコード
- 受取人住所
インドへの送金
インドでは、銀行支店を特定するIFSCコードが使用されます。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- 支店名
- 口座番号
- IFSCコード
- SWIFTコード
- 送金目的
- 受取人住所
- 受取人電話番号
送金目的によっては、受取人側で税務申告や追加確認が必要になる場合があります。
メキシコへの送金
メキシコでは、18桁のCLABEが使用されます。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- CLABE
- SWIFTコード
- 受取人住所
ブラジルへの送金
ブラジルでは、受取人の税務番号であるCPFや、法人の場合はCNPJを求められることがあります。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- 支店番号
- 口座番号
- SWIFTコード
- CPFまたはCNPJ
- 送金目的
送金後、受取人が銀行へ送金目的や契約書を提出するまで入金されない場合があります。
シンガポールへの送金
シンガポールは国際送金のインフラが比較的整っており、銀行送金やオンライン送金サービスを利用しやすい国です。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- 口座番号
- SWIFTコード
- 受取人住所
フィリピンへの送金
フィリピンでは、銀行口座への送金だけでなく、現金受取や電子ウォレットでの受取に対応するサービスがあります。
主な受取方法
- 銀行口座
- 現金受取
- 電子ウォレット
- 提携店舗
受取方法によって必要な本人確認書類や受取限度額が異なります。
ベトナムへの送金
ベトナムでは、送金目的や受取通貨によって受取手続きが異なる場合があります。
主に必要な情報
- 受取人氏名
- 銀行名
- 支店名
- 口座番号
- SWIFTコード
- 受取人住所
- 送金目的
米ドルで送金しても、受取時にベトナムドンへ両替される場合があります。
国別に必要となる主な銀行コード
| 国・地域 | 主なコード | 用途 |
|---|---|---|
| 世界共通 | SWIFT・BIC | 銀行を識別 |
| 欧州 | IBAN | 銀行口座を識別 |
| アメリカ | ABA Routing Number | 銀行・支店を識別 |
| イギリス | Sort Code | 銀行・支店を識別 |
| オーストラリア | BSB | 銀行・支店を識別 |
| カナダ | Transit Number | 支店を識別 |
| インド | IFSC | 銀行支店を識別 |
| メキシコ | CLABE | 銀行口座を識別 |
| ブラジル | CPF・CNPJ | 受取人・法人を識別 |
| 日本 | SWIFT・口座番号 | 海外からの受取に使用 |
海外送金にかかる手数料
海外送金では、主に4種類のコストが発生します。
1.送金手数料
送金元の銀行や送金サービスへ支払う手数料です。
2.為替手数料
円を米ドルや人民元、ユーロなどへ交換するときに発生するコストです。
為替手数料が別項目として表示されず、適用レートに含まれている場合もあります。
3.中継銀行手数料
送金元銀行と受取銀行の間に別の銀行が入る場合、その中継銀行が手数料を差し引くことがあります。
4.受取銀行手数料
受取側の銀行が、海外送金の受取手数料を徴収する場合があります。
海外送金にかかる日数
着金までの日数は、送金方法、通貨、国、銀行、送金目的によって異なります。
一般的な目安は次のとおりです。
| 送金方法 | 着金の目安 |
|---|---|
| オンライン送金サービス | 即日~数営業日 |
| 銀行の海外送金 | 2~7営業日程度 |
| 現金受取型サービス | 数分~数日 |
| 高額・審査対象の送金 | 1週間以上かかる場合あり |
土日、祝日、時差、中継銀行、受取国の審査によって遅れることがあります。
3,000万円を超える海外送金
日本と海外の間で行う送金については、送金額が3,000万円相当額を超える場合、外為法に基づく事後報告が必要になることがあります。
日本銀行によると、「支払又は支払の受領に関する報告書」は、原則として取引実行後に提出します。銀行等を経由する個別報告では、書面の場合は取引実行日から10日以内、オンラインの場合は20日以内など、報告方法によって提出期限が異なります。
なお、基準は「3,000万円以上」ではなく、原則として「3,000万円相当額を超える場合」です。
ただし、特定の国・地域や取引内容については、別の規制や報告基準が適用される可能性があります。
高額送金で確認されやすいポイント
高額送金では、銀行や送金サービスから次の内容を確認されます。
- なぜ送金するのか
- 誰に送金するのか
- 受取人との関係
- 資金をどのように得たのか
- 送金額と収入・資産が見合っているか
- 契約や請求の実態があるか
- 制裁対象国や制裁対象者に関係しないか
確認を避けるために、送金を不自然に分割することは避けるべきです。
正当な送金であれば、送金目的と資金の出所を正確に説明し、必要な資料を提出します。
海外送金でよくある失敗
受取人名が銀行登録と一致していない
漢字、ローマ字、ミドルネーム、姓名の順番などを確認します。
SWIFTコードを間違えた
同じ銀行でも支店や地域によってコードが異なる場合があります。
IBANと口座番号を混同した
欧州では、通常の国内口座番号ではなくIBANの入力が必要になる場合があります。
手数料を考慮していなかった
中継銀行手数料などが差し引かれ、受取金額が不足することがあります。
送金目的が曖昧だった
「その他」などの記載では、銀行から追加資料を求められることがあります。
受取国の規制を確認していなかった
送金元で手続きが完了しても、受取国側の審査で保留されることがあります。
海外送金前のチェックリスト
送金前に、次の内容を確認します。
- 受取人名は銀行口座名義と一致しているか
- 受取銀行名と支店名は正しいか
- 口座番号は正しいか
- SWIFTコードは正しいか
- IBANやABAなど国別コードは必要か
- 送金通貨は正しいか
- 受取口座がその通貨に対応しているか
- 送金目的を説明できるか
- 資金の出所を証明できるか
- 中継銀行手数料は発生するか
- 最終的な受取金額はいくらか
- 着金予定日はいつか
- 受取人側で追加手続きが必要か
まとめ
海外送金の基本的な流れは、受取人情報を準備し、本人確認を行い、送金目的と金額を入力して送金するというものです。
ただし、国によって必要な情報は異なります。
- アメリカ:ABA Routing Number
- 欧州:IBAN
- イギリス:Sort Code
- オーストラリア:BSB
- カナダ:Transit Number
- インド:IFSC
- メキシコ:CLABE
- 中国:外貨管理と送金目的の確認
特に中国から日本への送金や、高額な不動産・投資関連の送金では、資金の出所や取引目的を証明する書類が重要になります。
海外送金では、単に手数料の安さだけで判断せず、為替レート、中継銀行手数料、受取手数料、送金限度額、着金日数、受取国の規制まで確認することが大切です。
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。実際の必要書類、送金限度額、税務・外為法上の手続きは、利用する金融機関、送金目的、金額、受取国によって異なります。送金前に銀行、送金サービス、税理士などへご確認ください。