まず結論
墓じまいは、一般墓の新設・維持から、撤去、行政手続き、遺骨の移送、永代供養、樹木葬へ支出が移るテーマです。ただし、需要増がそのまま上場企業の増益になるとは限りません。
撤去工事は単発で地域業者との競争も強い一方、相談の入口を押さえ、改葬先や相続・葬儀へ顧客をつなげる企業は、1件から複数の収益機会を得られます。
17万6,105件を市場規模に直結させない
厚生労働省の衛生行政報告例による2024年度の改葬数は17万6,105件です。増加傾向は需要の方向を示しますが、次の理由から「件数×平均費用」で市場規模を断定できません。
- 1つの墓所に複数の遺骨がある場合がある
- 改葬しても墓石撤去を伴わないケースがある
- 撤去費用と新しい納骨先の費用が混在しやすい
企業分析では統計より、相談数、成約率、顧客獲得費、受注単価、粗利、キャッシュフローを優先します。
関連3社の立ち位置
| コード | 企業 | テーマとの接点 | 確認したい数字 |
|---|---|---|---|
| 6184 | 鎌倉新書 | 終活情報・相談の入口 | 問い合わせ、成約、広告効率、クロスユース |
| 7578 | ニチリョク | 墓じまい、納骨堂、葬儀 | 受注、粗利、営業CF、希薄化 |
| 8230 | はせがわ | 墓石・仏壇、樹木葬の企画 | 区画販売、開発費、既存事業の減少 |
鎌倉新書:相談の入口を押さえる
鎌倉新書は「いいお墓」などを運営し、墓地・霊園探しや墓じまい業者の紹介に接点を持ちます。強みは自社で工事を大量に抱えることではなく、利用者と事業者をつなぐ送客基盤です。
ここで見るべきは改葬件数ではありません。検索広告費が上がっても成約採算を維持できるか、葬儀・相続・介護など別サービスへつなげられるかです。市場が伸びても、顧客獲得費が同じ速度で増えれば利益率は上がりません。
ニチリョク:テーマ純度は高いが資本政策が重い
ニチリョクは墓じまい、改葬、納骨堂、葬儀を直接扱います。入口から改葬先まで関与できる点ではテーマ純度が高い会社です。
ただし、小型株では売上より資金調達を先に見る必要があります。新株予約権等による潜在株式、営業キャッシュフロー、借入負担を確認しなければ、需要増が1株当たり利益の増加へ結びつくか判断できません。
はせがわ:一般墓の縮小と樹木葬の成長が同居
はせがわは仏壇・仏具・墓石を扱う一方、宗教法人向けに樹木葬墓地の企画提案も行っています。墓じまい後の受け皿を取り込める一方、一般墓石や仏壇の需要減少は逆風です。
樹木葬の販売区画だけでなく、開発費、販売速度、広告費、既存事業の減収を補える利益額まで見る必要があります。
強気・弱気シナリオ
強気シナリオ: 改葬需要が続き、相談から撤去、納骨先、相続まで一括提供する企業の成約率と顧客単価が上がる。
弱気シナリオ: 撤去の価格競争、広告費上昇、一般墓・仏壇の縮小、資本調達による希薄化が、新サービスの成長を打ち消す。
まとめ
墓じまいは社会構造に支えられた需要テーマですが、上場株としては純度が低く、既存事業の縮小も同時に進みます。「改葬が増えた」だけでなく、企業がどの工程で粗利とキャッシュを得ているかを見るべきテーマです。