まず結論
現金は分割と納税に使いやすく、株は将来の値上がりや配当を引き継げます。どちらが得かは一律に決まりません。
| 比較項目 | 現金・預金 | 上場株式 |
|---|---|---|
| 相続税評価 | 原則、額面・残高 | 課税時期の終値等で評価 |
| 価格変動 | 原則なし | あり |
| 売却時の税 | 通常なし | 譲渡益に原則20.315% |
| 分けやすさ | 高い | 株数と時価が変動 |
| 納税への利用 | そのまま使える | 売却が必要な場合あり |
納税資金や生活費を確保したうえで、株の取得価額と口座区分を確認する順番が現実的です。
上場株式の相続税評価
上場株式は原則として被相続人が亡くなった日の最終価格で評価します。ただし、その価格が次の月平均額のうち最も低いものを超える場合は、最も低い月平均額で評価できます。
- 死亡日の属する月
- その前月
- その前々月
そのため、死亡日時点の市場価格と相続税評価額が一致しないことがあります。相続後に株価が下がっても、通常は申告時点の安い価格へ置き換える制度ではありません。
課税口座の株は取得価額を引き継ぐ
課税口座で相続した株は、被相続人の取得価額を原則引き継ぎます。相続時の時価へ自動的に切り上がるわけではありません。
たとえば時価1,000万円、取得価額200万円の株を同額で売却し、手数料や損益通算を考慮しない場合、譲渡益は800万円です。税率を20.315%とすると税額の概算は162万5,200円、売却代金から差し引いた額は約837万4,800円です。
これは単純化した例です。実際には売却費用、他の取引との損益通算、取得費加算などで変わります。
NISA口座は扱いが異なる
被相続人のNISA口座にあった上場株式等は、相続人のNISA口座へそのまま移せません。特定口座または一般口座へ受け入れ、原則として相続開始日の終値が相続人の取得価額になります。
NISAでの保有期間中の含み益が、そのまま課税口座の取得価額として引き継がれるわけではない点は重要です。ただし、相続税評価とは別のルールです。
取得費加算の特例
相続税を納めた人が、相続した財産を一定期間内に売却した場合、相続税の一部を譲渡所得の取得費へ加算できることがあります。期限は、相続税の申告期限の翌日から3年以内です。一般には相続開始から約3年10か月が目安ですが、起算日を個別に確認する必要があります。
適用には確定申告が必要です。売却前に税理士や税務署へ確認した方が安全です。
遺産分割で確認したいこと
- 相続税・葬儀・生活費に必要な現金
- 株が課税口座かNISA口座か
- 被相続人の取得価額を証明する資料
- 現在の含み益・含み損
- 相続税評価額と現在時価の差
- 売却を想定した税引後価値
- 相続人が価格変動を受け入れられるか
法律上、将来の売却税を必ず差し引いて遺産分割するという意味ではありません。ただ、同じ時価1,000万円でも手取りが異なり得ることを共有すると、後の不公平感を減らせます。
まとめ
現金は確実性と使いやすさ、株は成長余地と配当が強みです。比較するときは額面ではなく、税引後価値、納税資金、取得価額、口座区分を並べます。税額は家族構成や他の財産でも変わるため、具体的な分割・売却は専門家へ確認してください。
出典
- 国税庁「No.4632 上場株式の評価」
- 国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」
- 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税」
- 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 日本証券業協会「NISAのよくある質問」