生化学工業の業績下方修正とSI-6603のCRL

まず結論

今回の下方修正で目を引くのは、売上高の減額47.5億円に対し、営業利益が41億円悪化したことです。会社が主因に挙げたのはロイヤリティー収入の大幅減少。修正資料に品目別の内訳はありませんが、ロイヤリティー収入の変動が営業利益に与えるインパクトの大きさは数字に表れています。

もう一つ、SI-6603は9月10日にFDAからCRLを受領しました。臨床データへの懸念ではなく製造施設の問題と説明されていますが、是正と再申請の時間は読めません。9月24日の業績修正理由はロイヤリティー減少で、会社はCRLとの直接の因果関係を示していません。足元と将来のリスクを一つにまとめない方がよさそうです。

9月24日、売上47.5億円減で営業利益41億円悪化

2027年3月期の通期予想は次のように変わりました。

項目修正前修正後修正幅
売上高418.5億円371億円▲47.5億円
営業利益20.5億円▲20.5億円▲41億円
経常利益42億円2億円▲40億円
純利益22.5億円▲18億円▲40.5億円
年間配当30円20円▲10円

営業利益は黒字予想から赤字予想へ転落。会社は売上高の減額理由としてロイヤリティーの大幅減少を挙げ、その減収に伴い営業利益も下がると説明しています。売上高の減額は47.5億円、営業利益の悪化は41億円。減収額と利益への打撃がかなり近い。会社の説明からは、ロイヤリティー収入の変動に対する利益感応度の高さがうかがえます。

会社は医薬品の販売を提携先に委ね、研究開発や製造に経営資源を振り向けるモデルです。決算短信では、自社の医薬品ロイヤリティーは研究開発や販売の進捗に応じて受け取るマイルストーン型が中心と説明しています。製品・案件別の内訳は公表されていませんが、今回の修正ではロイヤリティー収入の変動が営業利益に大きく響きました。

営業赤字でも経常黒字、その差はどこから来るか

修正後の営業損失は20.5億円ですが、経常利益は2億円の黒字予想です。両者の差は22.5億円。ここを「本業の赤字が経常段階で戻った」と読むのは違います。

これは数字上の例外ではありません。8月5日のQ1は営業損失9.43億円に対して経常利益1.08億円。営業外収益10.62億円には投資有価証券売却益6.99億円、為替差益0.74億円、受取配当金2.53億円などが含まれていました。5月の通期予想でも、会社は投資有価証券の売却を見込み、経常利益を42億円としていました。

9月24日の修正資料は、修正後の経常利益2億円を支える営業外損益の内訳までは示していません。Q1だけで修正後の通期予想の54%に達しましたが、そのQ1も投資有価証券売却益などが営業外収益に入っています。この進捗を本業の収益力と重ねて読むのは早い。営業損失20.5億円の方が、今期の稼ぐ力を読むうえでは厳しい数字です。

年間配当予想も30円から20円へ引き下げ。3分の1の減配です。業績悪化が株主還元にまで及びました。配当収入を重視する株主には軽くない修正です。

9月10日のCRLは、臨床ではなく製造施設の指摘

SI-6603のCRLについて、会社は二つの製造施設を挙げています。原薬製造施設では過去の査察指摘が完全に解消されていないこと、新たに製剤製造委託先のcGMP査察で改善を求められたことです。有効性・安全性を含む臨床試験結果への懸念や、追加臨床試験の要求は示されていません。

CRLという言葉は重いものの、今回の論点は薬効データではなく製造面の是正です。ただ、製造・品質管理が審査の壁になったのは今回が初めてではありません。2025年3月にもCRLを受け、会社は製造・品質管理上の指摘に対応して2026年3月に再申請しました。今回は原薬製造施設の指摘が残り、製剤製造委託先でも新たな指摘が出ています。再申請後の審査で再び製造施設が問題になった以上、承認時期を後ろへ置き直す投資家は多そうです。会社は早期再申請を検討するとしていますが、日程は示していません。

9月10日の発表時点で会社は、CRLが通期業績予想に与える影響を精査中としていました。その2週間後、9月24日に通期予想と配当を引き下げています。投資家からすれば9月に悪材料が続いた格好ですが、24日の修正理由はロイヤリティー収入の減少です。CRLを下方修正の直接原因と読むのは、会社資料上無理があります。

11月の中間決算で確認する三つ

会社は中間決算を11月上旬に予定しています。次の開示では、論点を三つに絞れます。

  • ロイヤリティー収入: 減収がどこまで続くのか。通期予想の底を見極める材料になる。
  • SI-6603: cGMP指摘への是正状況と、再申請の時期が示されるか。
  • 営業損失: 通期営業赤字20.5億円を前提に、ロイヤリティー減収後の製造・研究開発コストをどこまで吸収できるか。

まとめ

足元ではロイヤリティー減少が営業利益を押し下げ、年間配当も3分の1減りました。将来の材料であるSI-6603も、製造・品質管理の是正が再び課題になっています。再申請の時期はまだ示されていません。ロイヤリティーがどこで底を打ち、営業損失20.5億円をどこまで埋めるのか。この日程と数字が見えるまでは、回復の幅を描きにくい状況です。

関連記事

出典