株が下がる時は、債券が守ってくれるはずだった
資産を二種類持ったので、どちらかが必ず上がると思っていると、両方が下がった時の負担を見落とします。「シーソーの法則」は逆向きの関係のたとえです。固定利付債券の価格と市場利回りの関係を、株式と債券の運用収益へそのまま移すのは、対象の取り違えです。
分散には意味がありますが、いつでも完全に相殺する契約ではありません。何と何が反対だと想定したかを分けて読む必要があります。
二つが同時に下がる保有資産の仮例
架空の保有資産を100万円とし、株式60万円、債券40万円を持つとします。同じ期間に株式が20%、債券が10%下がれば、それぞれ48万円と36万円で、合計は84万円です。全体では16%の減少になります。
配当、利息、税、費用、途中の売買や資金追加はない比較で、実際に起きる下落率や確率を示したものではありません。配分も推奨値ではなく、反対に動かない場合の金額を確かめるための設定です。
債券を持つだけで損失がなくなるわけでも、下落したら分散が無意味だったと決まるわけでもありません。この期間の結果と、他の資産構成ならどうだったかという比較は別に残ります。
同時に下がる経路を省かない
物価上昇や金融引締めへの予想は、固定した受取額を持つ債券の価格へ下押しに働き得ます。株式も、将来利益を評価する金利や景気の見通しを通じて下がる可能性があります。共通の材料で二つが同方向に反応する場面です。
ECBの2022年の分析やBISの2023年の論考は、株式と債券の収益の相関が、物価や政策の環境で変わることを扱っています。過去の特定の市場の分析であり、現在の日本の全商品が同じ関係になるという予測ではありません。
チャートの見た目で、保証を作らない
相関を比べる際は、通貨、価格か利息等を含む収益か、日次か月次か、対象期間をそろえます。一部の期間だけ切り出して逆向きだったと示しても、別の環境でも続く保証にはなりません。相関は因果関係そのものでもありません。
また、債券の中にも、残る期間、信用、通貨の違いがあります。短い円建ての国債と、長い外貨建ての社債を同じ「安全側」とまとめると、どのリスクを減らしたつもりかが曖昧になります。
本人の近い支払いに使う資金まで、逆向きになる想定だけで運用すると、同時下落時に売らざるを得ない場合があります。保有期間と換金の予定も含め、相殺が外れた時に残る金額を見るための考え方です。
出典
- ECB Financial Stability Review(2022年11月)『Cross-asset correlations in a more inflationary environment and challenges for diversification strategies』(相関が変わる経路)
- BIS Quarterly Review(2023年12月)『Markets adjust to “higher for longer”』Box A(株式・債券収益の相関と物価環境)
- 米国SEC Investor.gov『Bonds - FAQs』(金利・価格・満期などのリスク)
出典確認日:2026年10月23日。