サンクコストと投資
下がった株を買い足し、平均取得単価が下がったので安心した。しかし、追加した資金は次の下落の影響も受けます。サンクコスト(埋没費用)は、すでに支出し、今後の選択では取り戻せない費用です。過去の支出を理由に、今後の見込みを読まず保有や追加を決めていないかを考えます。
株式は売却で回収できる価値を持つので、取得額の全てを現在も失われた費用として扱うわけではありません。現在の売却可能額は、これから選べる使途へ影響します。買値は損益や税の計算に必要でも、将来の価格の回復を保証する数字ではありません。
保有を続けるか売却するかを考えるときは、過去に払った金額ではなく、現在の情報を基に今後のリスクと見込みを比べます。企業の見通しが変わっていないか、保有資産の値動きが自分の計画に合っているか、別の選択肢があるかを確認します。買値は損益を把握する情報ですが、将来の価値を決めるものではありません。
よくある失敗
- 損失を認めたくないため、投資理由が崩れても保有を続ける
- すでに損をした分を取り返そうとして、追加資金を投じる
- 利益が出ている銘柄を、買値からの値上がりだけを理由に早く売る
- 過去の調査時間や手数料を、将来の判断に過度に持ち込む
売却が常に正しいわけではなく、保有継続にも根拠が必要です。「今日この資産を持っていなかったとして、今の情報でも買いたいか」と問い直すと、過去の支出とこれからの判断を分けやすくなります。これから生じる税金や手数料、資産全体の配分も比較に入れます。
ナンピンの理由に過去の損失を使わない
仮に1,000円で100株買い、株価が600円になった後、100株を追加すると平均取得単価は800円になります。買値が下がったように見えても、投資総額は10万円から16万円へ増えています。その後400円になれば、200株の評価額は8万円、損失は8万円です。追加しなければ損失は6万円でした。手数料は除いた仮想例です。
平均単価を下げることと、将来の損失を抑えることは同じではありません。「元を取り戻すまで続ける」という理由だけなら、既に払った費用が追加判断を支配している可能性があります。追加する資金は、別の候補や現金保有と比較します。
売却さえすれば合理的とも限らない
サンクコストを意識するあまり、値下がりした銘柄は即座に売るというルールに変えると、商品の目的や運用期間を見失います。業績や財務が想定から変わったか、価格の下落だけかを分けます。解約手数料や税など、これから発生する費用は過去の費用ではないので比較に入れます。
反省と保有判断を同じ場でしない
過去の判断の検証は再発防止に役立ちますが、後悔が強い最中に追加投資まで決めると、反省が取り返し行動へ変わりやすくなります。購入理由、崩れた前提、現在の選択肢を記録し、今後の判断の条件を先に書きます。「ここまで来たから」という一文しか残らない場合は、追加資金を急がないことです。