AIとインフレのリスク

関連事業が伸びても、費用の増加は残る

AIへの投資が増えると、関連する施設や機器を扱う企業には受注の機会が生まれます。しかし、注文が多いことと利益が多いことは同じではありません。電力、建設、人材などの供給が追いつかず、必要な費用が上がる場合があります。

販売価格が長期契約で決まっていれば、費用の上昇をすぐ顧客へ転嫁できないこともあります。成長分野にいるという説明だけでは、契約に含まれる負担の違いが見えません。

販売価格が一定の運用会社の仮例

独自の仮例として、年間の契約売上3,500万円、電力費2,000万円、その他の費用1,000万円の架空の会社を置きます。販売量と契約価格が変わらず、電力費だけが2,700万円へ増える場合を考えます。

項目変化前変化後
売上3,500万円3,500万円
電力費2,000万円2,700万円
その他の費用1,000万円1,000万円
利益500万円マイナス200万円

実在する企業の費用構成ではなく、電力相場の予測でもありません。売上が安定していても、固定された販売価格と変動する費用の組み合わせで利益が変わることを示しています。契約に価格改定の条項があれば、この設定自体が変わります。

短期の需要と将来の効率化は別の時期に起きる

FRBのLisa D Cook理事は2026年9月の講演で、AI関連投資の需要と、将来の生産性による物価への効果を分けて論じています。BISに掲載されていますが、BIS全体の公式予測という意味ではありません。

長期に供給する力が増えても、それまでに設備を作る需要が集中すれば、当面の費用負担が強まる可能性があります。逆に、需要が弱く、削減効果が広く価格へ回れば違う結果もあり得ます。時期や普及の範囲を外して、一つの方向に決めることはできません。

サービスの集中も費用の条件になる

少数の提供者に依存する場合、利用料の変更やサービス停止への対応が難しくなることがあります。別の仕組みへ移す費用が大きければ、当初見込んだ削減効果が薄れる可能性もあります。

長期契約であっても、更新時期、利用量による料金、解約や移行の条件は異なります。効率化の宣伝と、利用企業が実際に負担する支払いを分けて読む必要があります。

技術の期待と株価の期待を重ねない

事業が改善しても、株価が既に高い利益成長を見込んでいれば、実績との差で価格は下がる場合があります。AIの効果を評価する際は、契約、費用、資金の回収を読み、その前提に対してどこまで期待を払うかという問題が残ります。

出典

参考資料の確認日:2026年10月23日。