きれいに見える過去のルールが見つかったとき
過去の値動きを見ながらルールを変えていくと、その期間に合う売買方法を作れる場合があります。しかし、既に知っている結果へ合わせることと、未知の価格を予測することは違います。失敗したルールを除いて成功したものだけを見ると、偶然が見えにくくなります。
ランダムウォークの模型は、この違いを考える一つの材料です。実際の市場が完全にその模型通りという前提では使いません。
同じ履歴から枝分かれする独自の仮例
架空の値が200、205、210、215と続いた場面を置きます。その次の増分がプラス5またはマイナス5で、どちらも50%、過去とは独立という単純な条件を設定します。
図では、同じ215までの履歴から220と210へ分かれます。「3回続けて上がったら買う」というルールでも、模型の中では次の結果は一つに決まりません。上へ進んだ例だけを後から選べば、過去の上昇が強い予測力を持つように見せることもできてしまいます。
この図は実在市場の観測結果ではありません。上下の確率は説明のために置いた条件で、現在の株式市場へ適用する数値ではありません。
ルールを作る期間と、読む期間を分ける
現実の手法を検討するなら、どの期間の情報でルールを決め、どの別の期間で結果を見たかが関わります。後の結果を見てから設定を変えれば、未知のデータへ使えたことにはなりません。
当時は上場していたものの現在はなくなった企業を除くと、残った企業だけの良い結果になり得ます。株式分割や配当の扱い、発表前には知られていなかった決算情報も、時点をそろえる必要があります。
価格の変化と、実際の運用成績も違う
取引で使える価格と、チャート上の価格は一致しない場合があります。売買の費用や価格差、注文が成立する量を含めれば、紙の上の成績より小さくなることがあります。頻繁に売買するルールほど、その負担を省かないことが必要です。
過去に平均的な差が観測されたとしても、すべての銘柄や次の一回へ同じ結果を約束するものではありません。損失の大きさや、長く負けが続く可能性も別の問いです。
模型を、調査を止める理由にはしない
次の価格を確実に当てられなくても、投資先の事業、資産配分、費用、使う資金の時期は検討できます。同じ過去から違う先行きを並べる例は、予想が外れる場合も含めて計画するために使えます。現実の予測力を主張する際は、模型とは別に根拠が必要になります。
出典
- Burton G. Malkiel「The Efficient Market Hypothesis and Its Critics」Princeton CEPS Working Paper 91(2003年、冒頭の定義と議論)
- 金融庁「資産形成の基本」
参考資料の確認日:2026年10月23日。