所有の前後で評価が変わる
保有効果は、英語のendowment effectに対応する言葉です。研究では、ある物を手放すために求める金額と、それを入手するために払ってもよい金額の差が検討されています。Kahneman、Knetsch、Thalerによる解説論文は、この現象と損失回避、現状維持との関係を整理しています。
投資に当てはめるなら、同じ会社の同じ株でも、保有した途端に特別な価値を感じていないかを考える手がかりになります。これは株価の妥当な水準を計算する理論ではなく、所有によって評価が偏る可能性を点検する概念です。
売る価格と買う価格の隔たりを調べる
仮に、ある株を100株持つ人が「1株1,500円でも売りたくない」と言う一方、未保有なら「1,100円までしか払いたくない」と考えているとします。差は100株で4万円です。この差に、どのような理由があるかを調べます。
税負担、売買費用、流動性、配当の受取予定など、売る場合と新たに買う場合の条件は完全には同じではありません。したがって差があるだけで保有効果と断定できません。条件をそろえても「自分が選んだ株だから」という理由が残るなら、愛着が評価を押し上げている可能性があります。
今持つ価値を説明する
見直しでは、企業の稼ぐ力、今の価格、他の保有資産との重複、使う時期を確認します。「今持っていなければ買うか」という問いは有用ですが、答えが否でも即売却の指示にはなりません。買い増す金額と、既に持つ金額の違いもあるためです。
自分の銘柄にも未保有の候補にも同じ資料を使い、同じ基準で評価します。保有効果を知る意味は、愛着をなくすことより、愛着だけが価格や将来性の根拠になっていないかを確かめる点にあります。