大きく上がった値は、どこまで戻ると考えるのか
価格が高くなった時、平均へ戻りそうだと言われても、どの平均かが分からなければ確かめられません。平均回帰は、ある基準から離れた値が、その後その基準に近づく傾向を考える言葉です。市場では、何の指標の、どの期間の性質かを限定して使います。
以下は、仕組みを読むために基準と戻る速さを自分で置いた独自の模型です。特定の株式の実例や価格予測ではありません。
固定した中心へ近づく、架空の数値の模型
中心を100とし、次の期の予測値を「100+現在の100からの差×0.6」と計算するとします。現在値が140なら、次の期は100+40×0.6=124です。その値を次の計算へ入れると、100+24×0.6=114.4になります。
中心から離れた部分が、計算するたびに小さくなる形です。0.6や100は説明用に置いた値で、現実の推計結果ではありません。中心自体は変わらず、予測を外れる揺れや新しい情報も省いています。
実際の市場では、このような計算を期待値の模型として置けても、毎期その値どおりになるとは限りません。予測の誤差があれば、途中で中心からさらに離れる可能性もあります。戻る性質と、道筋が滑らかであることは別です。
実データで、模型の前提を確かめる部分
基準が株価の平均なのか、利益に対する価格の比率なのか、収益率の性質なのかで問いは変わります。株式分割を調整していない価格や、事業の内容が変わった期間をつなぐと、平均から離れた理由を取り違える場合もあります。
PoterbaとSummersの研究は、過去の複数市場等のデータから、短い期間と長い期間で収益の関係が違う可能性を検討しています。一社の株価が固定した過去平均へ、一定の速さで戻ることを証明した研究ではありません。Kimらの再検討は、時期を分けると証拠が弱まる点も報告しています。
過熱や売られすぎは、仮説の入口
平均からの距離は、普段と違う状態を調べるきっかけにはなります。しかし、利益、金利、競争条件が変わり、以前の中心が適切でなくなった可能性もあります。平均より低いというだけで割安、高いというだけで割高とは決められません。
過去の関係を調べるなら、対象、期間、調整方法、費用、試す前に決めた条件を残せます。戻った銘柄だけを集め、戻らず退出したものを除けば、傾向を強く見積もる恐れもあります。
この例は、何を仮定すると平均へ近づく計算になるかを示したものです。基準と速度を現実でも知れたことにはせず、さらに離れた時の保有額や使う予定の資金を、別に読める余地を残します。
出典
- Poterba・Summers『Mean Reversion in Stock Prices: Evidence and Implications』(NBER Working Paper 2343、1987年公開要旨。過去の市場・保有期間の検討)
- Kim・Nelson・Startz『Mean Reversion in Stock Prices? A Reappraisal of the Empirical Evidence』(NBER Working Paper 2795、1988年公開要旨。期間を分けた証拠の再検討)
出典確認日:2026年10月23日。