価格が平均線へ近づいたら、平均回帰と言えるか
株価と移動平均の差が縮まったので、平均回帰が起きたと読む場合があります。しかし、価格が動いたのか、平均線が動いたのかは分ける必要があります。平均回帰は、ある基準から離れた値が、その後基準へ近づく傾向を考える言葉です。移動平均そのものは、直近の観測値をまとめる計算です。
線を引いたことだけでは、次の価格がどちらへ動くかという性質は示せません。
価格が下がらなくても、差が縮む仮例
架空の価格が三期に100、110、120と動いたとします。三期の単純移動平均は110で、最新の120との差は10です。次の期も価格が120のままなら、計算対象は110、120、120となり、移動平均は約116.7になります。
最新価格は120のままでも、移動平均との差は約3.3へ縮みます。古い100が計算から外れたためです。説明用の価格で、配当や分割、費用、実際の売買は考えていません。
近づいたのは事実でも、価格が以前の平均110へ戻った例ではありません。平均も更新されることを忘れると、値動きについて確かめた範囲を広げてしまいます。
三つの説明の範囲をそろえる
| 言葉 | 主に読むもの | それだけでは言えないこと |
|---|---|---|
| 移動平均 | 直近の価格等をまとめた水準 | 平均への将来の反転 |
| 平均回帰 | 基準からの離れ方と、その後の関係 | 固定価格へ必ず戻る時期 |
| モメンタム | 過去の上昇・下落と、その後の継続 | 永久に同方向へ進むこと |
平均回帰とモメンタムも、同じ指標と期間を比較しなければ、正反対の主張かどうかは分かりません。短い期間で勢いが続き、長い期間で別の関係が観察される可能性もあります。
過去の研究を、そのまま今の売買へ移さない
PoterbaとSummersの研究やDe BondtとThalerの論考は、過去のデータで期間による収益の関係を扱っています。今の一銘柄の移動平均を使えば同じ利益を得られる、という検証ではありません。Kimらの再検討では、期間を分けると平均回帰の証拠が弱まる点も報告しています。
価格そのもの、収益率、利益に対する比率は違う対象です。上昇傾向のある価格系列に一本の固定平均を置くことが適切かも含め、何が戻ると考えているかを先に決める必要があります。
事業や金利の構造が変われば、以前の平均が参考にならない場合もあります。線との距離を過熱や売られすぎと呼ぶだけで終えず、その距離が生じた理由と、比較した期間を読むための区別です。
出典
- Poterba・Summers『Mean Reversion in Stock Prices: Evidence and Implications』(NBER Working Paper 2343、1987年公開要旨。過去の市場・保有期間の検討)
- Kim・Nelson・Startz『Mean Reversion in Stock Prices? A Reappraisal of the Empirical Evidence』(NBER Working Paper 2795、1988年公開要旨。期間を分けた証拠の再検討)
出典確認日:2026年10月23日。