貸出が増えたニュースを、利益と読んでよいか
銀行の貸出残高が増えたと聞いて、銀行の利益や自己資本も同じ額だけ増えたと思う場合があります。信用創造は、銀行が新たな融資を顧客の預金へ記帳することで、貸出と預金が生まれる関係を考える言葉です。誰の資産と負債かをそろえると、増えた数字の役割を読めます。
銀行の貸出は、借り手から元利金を受け取る側の資産です。顧客の預金は、銀行が顧客へ支払う義務を負う負債です。会社にとって預金は資産、銀行への借入は負債となり、同じ取引でも見る主体によって位置が変わります。
一つの融資と、同じ銀行全体の残高を読む仮例
架空の銀行が、融資500万円を新たに顧客の口座へ記帳するとします。銀行の貸出資産と預金負債が500万円ずつ増えます。差額の自己資本が500万円増えるわけではなく、貸出元本の増加は利益でもありません。
同じ銀行全体の貸出残高を、期初1,000億円、期末1,050億円と置くと、残高の伸びは5%です。その期間の新規融資が100億円、元本返済が50億円で、他の増減はなかった場合にも、この期末残高になります。先の500万円の融資は、この新規融資100億円に含まれるものとします。
一つの記帳と銀行全体の残高をつないだ独自の模型で、実在銀行の実績ではありません。5%は新規融資総額の比率ではなく、返済などの後に残った貸出の変化です。利益を読むには金利収入、調達費用、貸倒れ等の別の項目が残ります。
日銀当座預金と、家計の銀行預金を分ける
日銀当座預金は、金融機関などが日本銀行に持つ当座預金です。家計がスーパーの支払いへ直接使う自分の銀行預金と同じものではありません。銀行間の決済を支えるお金と、顧客が支払いに使う預金を区別します。
中央銀行の資金供給が増えたことから、家計の口座や企業の借入が同額だけ増えると機械的には計算できません。融資需要、採算、リスク、政策の条件などが関わります。
マネーや信用の記事では、対象の金融機関、預金を持つ部門、通貨、残高かフローか、比較期間を読みます。異なる主体の数字を一列に並べても、株価へ流れ込む資金の額にはなりません。貸出、預金、日銀当座預金、自己資本を分けるための比較です。