毎日予想が変わり、取引だけ増えた時
前日は上がると思い、翌日は下がると思って売買を重ねると、何を当てられたかより取引した記憶が残る場合があります。ランダムウォークは、ランダムな変化を積み重ねる価格のモデルです。過去の並びから次を容易に読めるとは限らない、と予想の自信を見直す材料になります。
利点は、考えることをすべてやめることではありません。明日の方向に関する予想と、負担する費用や資産の偏りを分けて扱えることです。後者には、予想が当たるかとは別に調べられる条件があります。
予想の成果を手元の金額で読む仮例
架空の一か月の売買で、価格差による損益を合計すると4千円の利益だったとします。その期間に五往復し、一往復につき900円の費用がかかる条件を置けば、費用は4,500円で、差し引きは500円の損失です。
税や他の負担を省き、価格差の損益は期間中の全取引を含む設定です。900円は実在する証券会社の料金ではありません。料金体系によって結果は変わり、無料の売買でも、希望した価格で成立するかという問題は残ります。
方向を当てた場面の記憶だけでは、この期間の手元の成果は分かりません。また、この一例から、取引をしなかった方が必ず良い、あるいは今後も同じ損失になるという結論も出せません。
予測へ割く負担を見直せる
短期の値動きへ答えを出し続けることが難しければ、保有する対象を広くする方法や、取引頻度を減らす方法を考える余地があります。ただし、分散は市場全体の下落をなくさず、費用の低さも将来の利益を保証しません。どの市場を持つか、資金をいつ使うかは残る選択です。
Malkielの論考は、価格の予測可能性と、リスクに見合う収益を超える機会を得られるかを論じています。模型の名前を覚えたことだけで、どんな分析も無意味だとは言えません。
現実に合うかという問いを残す
ランダムウォークがあらゆる市場で完全に成立していると確定したわけでもありません。LoとMacKinlayの過去の米国週次収益の研究には、模型を棄却する結果があります。対象と方法を伴う研究を、現在の一銘柄の次の値上がりへ直結させることはできません。
企業の財務を読み、商品の費用を比べる行為には、何を保有するかを理解する目的があります。予想の的中だけで全部を評価せず、実際に負った損失と費用を含めて、自分の取引の条件を振り返るために使える考え方です。
出典
- Burton G. Malkiel(2003)『The Efficient Market Hypothesis and Its Critics』(著者所属大学公開版、本文3〜5ページの定義と限界)
- Andrew W. Lo・A. Craig MacKinlay(1987)NBER Working Paper 2168(公開要旨、1962〜1985年の週次収益の検証)
出典確認日:2026年10月23日。