「分かっていた」は記憶だけでは確かめにくい
後知恵バイアスは、結果が分かった後に「最初からこうなると思っていた」と感じる傾向です。実際には複数の可能性を考えていたのに、起きた結果に合う予想だけを覚えていることがあります。売買前の短い記録を残すと、そのずれを照合できます。
予想が外れた自分を責めるための記録ではありません。確認不足だったこと、資料では判断できなかったこと、偶然の結果を区別し、次の作業を決めるために使います。心理の名前を知るだけで、記憶が正確になったり利益が増えたりするとは限りません。
決算前の予想を三つの条件で書く
架空のA社で、会社の年間営業利益予想が100億円だったとします。発表前のメモに「上がりそう」とだけ書く代わりに、「利益予想が110億円以上へ上がる」「90億円以上110億円未満」「90億円未満へ下がる」の三つを並べます。数字は説明用で、実在企業の適正な判断基準ではありません。
各場合に確認することも書きます。増益なら売上数量と一時利益、据置きなら進捗と費用増、下方修正なら原因と翌期への影響、といった形です。会社予想と市場の期待は一致しないので、上方修正なら必ず株価上昇とは決めません。価格の反応を予測したいなら、現在の株価に何が期待されているかも別に調べます。
結果が出た後も元の文章を残す
実際に営業利益予想が120億円となって株価が下がった場合、「上方修正があった」という事実と、「株価は下がった」という事実を分けて記録します。予想利益の方向が当たっても、株価の方向まで当たったことにはなりません。
逆に予想が80億円へ下がったのに株価が上がる場合もあり得ます。発表前にもっと悪い数字が想定されていた可能性などを調べられますが、それを最初から知っていたように書き直さないことです。「発表後に知った理由」の欄へ追記し、元の根拠との違いを残します。
一回の当たり外れから結論を急がない
振り返りは、資料を読めたか、条件を事前に決めたか、予定した保有量を守ったかの順に見ます。利益が出たかどうかとは別の欄にすると、無計画な売買がたまたま成功した場合も見つけられます。
記録には銘柄、日時、参照した資料の公表日、判断を変える条件を付けます。長文にせず、次の決算まで読み返せる量で続けます。複数の記録がたまったら、同じ見落としが繰り返されていないかを確認します。少数の成功例だけで自分の予測精度を決めず、見送った場面や未保有の候補も残すと、結果のよかった取引だけを選ぶ偏りを抑える助けになります。