「インフレなら株が上がる」は条件を省きすぎる
投資先が値上げを発表すると、売上も利益も伸びると考えたくなります。しかし、仕入れや人件費の増加を埋めるための値上げなら、利益はむしろ減っているかもしれません。インフレという大きな言葉だけでは、どの会社に何が残るかは分かりません。
「インフレ循環」は本記事では、物価と企業収益、賃金、消費などの相互作用を指します。決まった順番・周期で株価が上昇する公式を意味しません。需要が増えて単価も数量も伸びる局面と、輸入コストが先に上がり家計が買い控える局面は区別が必要です。
使いすぎの典型は、物価の上昇を確認しただけで、需要増、増益、株高までそろったと見なすことです。途中の条件が抜けています。
利益を見た後に、金利負担が残る
変動金利の借入れ、または同条件の借換えがある架空の会社で考えます。借入残高1,000万円、年間営業利益40万円が変わらず、適用金利だけ年1%から3%になったと仮定します。年間の利息は10万円から30万円へ増えます。
営業利益からその利息だけを引いた残りは30万円から10万円です。税金、他の営業外損益、返済元本は省いているため、実際の純利益や資金繰りそのものではありません。それでも、営業段階の稼ぎを維持できた会社にも別の負担が及ぶことが分かります。
既存の固定金利借入れが一斉に変わるという計算ではありません。借入条件、満期、借換え時期で影響は異なります。金利が上がりそうという見立てから、全社の利益を同じ比率で減らすのも誤りです。
価格転嫁の遅れと、数量の減少を落としやすい
価格転嫁とは、増えた費用を販売価格へ反映することです。改定交渉が終わるまで費用を自社で負担するなら、先に利幅が縮みます。内閣府の2023年の分析は、輸入価格が国内価格に伝わる際の時間差や、企業が費用を吸収する問題を扱っています。当時の平均的な観察を、特定企業の将来の転嫁時期に置き換えることはできません。
値上げが通っても、数量が減れば売上は期待ほど伸びません。決算では価格改定の有無だけでなく、既存店の客数、出荷数量、商品構成、売上総利益率まで見ると、単価と需要を分けやすくなります。
さらに、増益が見込まれていても、投資家がすでにより大きな利益を予想していれば株価は下がり得ます。企業業績の予想と、買う価格の妥当性は別に検討する項目です。
上昇率の鈍化も「安くなった」とは限らない
インフレ率が低下したというニュースは、価格水準が下がったこととは限りません。前年からの上がり方が緩くなっただけなら、家計の負担は高いままです。比較対象の前年が急騰した影響でも前年比は変わるため、指数の水準と内訳を併せて読みます。
日本銀行の説明では、金利上昇は借入れや経済活動を抑え、物価を押し下げる方向に働きます。ただし、原材料不足そのものが利上げですぐ解消するわけではありません。政策が必ず一定の順番で効くと決めつけず、自分の仮説を仕入れ・数量・利幅・資金調達に分けて確かめると、相場の物語への依存を減らせます。