インフレ循環を知るメリット|投資判断で役立つ場面

値上げの発表から、一歩先を読める

同じ日に二つの会社が価格改定を発表しても、その後の利益は同じようには動きません。値上げ幅が十分か、顧客が離れないか、仕入れの増加に追い付いているか。インフレ循環を知る実用上の利点は、この違いを決算の数字へ落とし込める点です。

インフレは、幅広い物やサービスの価格が継続的に上がる状態を指します。本記事の「循環」は、費用の上昇、価格改定、賃金、消費などが互いに作用する流れの説明です。何年ごとに訪れるという周期や、必ず利益が増える法則ではありません。

原材料費が増えるところだけを見ると負担しか見えず、販売単価が上がるところだけを見ると楽観しすぎます。両方を数量と組み合わせることで、業種名だけの「インフレに強い会社」から具体的な比較に進めます。

同じ費用上昇でも、値上げ幅で利益が分かれる

架空の商品を単価100円で1,000個販売し、1個当たりの変動費を70円、固定費を2万円とします。営業段階の利益は(100−70)×1,000−20,000=1万円です。税金や利息は省いた単純な商売の例です。

次の期に変動費が75円へ増え、値上げ後の販売数量は950個になったと仮定します。A社が単価110円にすると利益は(110−75)×950−20,000=1万3,250円。一方、単価105円にとどめたB社は8,500円です。共通の条件で値上げ幅だけを変えています。

費用が増え、数量が減っても、A社は増益、B社は減益になります。ただし、現実にA社の方が顧客を維持できる保証はありません。ブランドや代替品の有無で数量の反応が違うため、価格改定率だけでは比較を終えられません。

決算で確認する順序が具体的になる

最初は売上を単価と数量に分けます。企業が分解を開示していなければ、出荷量、客数、客単価など、事業に合う指標が補助になります。値上げと高価格商品の売上増が混ざっていることもあるため、何が単価を押し上げたのかまで読みます。

次に、売上総利益率や事業別利益を確認します。コストを転嫁できたと会社が説明していても、物流費や人件費が別に増えていれば最終的な営業利益は残りにくくなります。内閣府の2023年の分析は、仕入れ段階から消費者価格までの波及に時間差があることを示しており、一四半期だけで転嫁力を決める際の注意材料になります。

最後は現金の動きです。売掛金の回収前に高くなった仕入れ代を払う会社では、利益が出ても運転資金が必要になります。棚卸資産や営業キャッシュフローも見ると、値上げの成果が帳簿上だけなのかを点検できます。

企業を見る利点と、株の買い時は別に残る

価格転嫁を追えるようになると、同業他社と条件をそろえたり、会社の計画がどの費用や数量を前提にしているかを質問したりできます。これは利益見通しを具体化する利点です。そのまま株価上昇の保証にはなりません。

金利の上昇が借入負担や消費に及ぼす影響もあるため、単価が上がり続けるだけの予想には無理があります。日本銀行の解説する金利と経済活動の経路も踏まえ、数量が想定以上に減る場合や仕入れが再上昇する場合まで考えます。決算で仮説を修正できる形にしておくことが、この見方の使い道です。

出典