アンカリングの実例|相場でどう見ればいいか

買値が価値の基準になってしまう

アンカリングは、最初に示された数字や印象に残った数字を基準にし、その後に情報が増えても調整が十分にできなくなる傾向です。投資では、自分の取得価格や過去の最高値が基準として残りやすくなります。取得価格は自分の損益を計算するために必要ですが、会社の将来利益を決める数字ではありません。

「2,000円で買ったので、少なくとも2,000円の価値がある」という説明は、買付時の判断が正しかったことを前提にしています。新しい決算や事業環境が変わったときには、その前提から見直す必要があります。

株価が25%下がってもPERは上がる例

架空の会社で、購入時の株価が2,000円、予想EPSが100円だったとします。EPSは1株当たりの利益で、株価をEPSで割るPERは20倍です。その後、株価が1,500円へ下がり、予想EPSも50円へ修正された場合、予想PERは30倍になります。

株価は25%安くなりましたが、予想利益に対する倍率は上がっています。仮に倍率20倍を維持して計算するなら、EPS50円に対応する株価は1,000円です。これは目標株価の提示ではありません。利益見通しや妥当な倍率をどう置くかで評価が変わり、2,000円という買値だけでは割安か判断できないことを示す計算です。

過去の高値と目標株価にも基準が隠れる

保有していなくても「去年3,000円だった株が半値だから安い」と感じる場合があります。当時の利益が一時的な特需だったなら、最高値を通常の価値とみなす根拠は弱くなります。逆に、利益と競争力が伸びている会社なら、高値を更新しただけで割高と決まるわけでもありません。

他人の目標株価も同様です。先に示された数字へ自分の見積もりを少し寄せるだけでは、独立に調べたように見えても同じ基準を引き継ぎます。比較する際は、対象年度の利益、株式数、評価倍率、その見積もりが作成された日を確認します。

買値を隠した評価と注文価格を分ける

まず取得価格を別欄へ移し、現在価格と最新の利益見通し、借入、事業上の変化を並べます。その条件だけで見積もる価格の範囲を出し、強気と弱気の仮定で幅がどう動くかを確かめます。過去の価格を使う場合は、当時と現在で何が同じかも書きます。

過去の高値や安値は、売買が集まった価格帯を知る手掛かりになる場合があります。ただし、市場がその価格へ戻る義務はありません。指値を置く価格と、会社の価値を見積もる計算を分け、注文が成立しない場合や見通しが崩れた場合の対応も決めます。基準の数字を変えるだけでなく、その数字を採用した理由を確認するための点検です。

出典