反対に動く、という言葉の条件を確かめる
金利が上がれば債券価格が下がる、円高なら輸出企業の収益を押し下げる。こうした説明を、片方が上がると片方が下がるシーソーにたとえることがあります。ここでは仕組みを考える比喩として用い、全市場を一つの式で予測する投資法という意味では使いません。
異なる関係を同じシーソーで説明すると、前提を忘れやすくなります。将来の受取額を固定した債券の評価と、将来の利益自体も変わる企業の株価は同じ仕組みではありません。まず、何が変わり、ほかに何が変わらない設定かを読む必要があります。
一年後の受取額が決まった独自の債券例
架空の債券が一年後に1万円を返し、途中の利払いはないとします。返済は確実で、信用状態や残りの期間は変わらず、税や費用もありません。現在の理論価格を、一年後の1万円を求める収益率で割り戻して考えます。実在の国債や社債の取引条件ではありません。
求める年収益率が1%なら、理論価格は1万円÷1.01=約9,901円です。3%なら1万円÷1.03=約9,709円です。どちらも満期の受取額は同じなので、より高い収益率を得るには、今払う価格が低い必要があります。二つの価格は、同じ時点で収益率の条件だけを替えた比較であり、一年の間に順番に売買した記録ではありません。
債券の利率と、今買う人の利回りも違う
例のように、買う価格が変われば、同じ受取額でも新たな買い手の利回りは変わります。既に決まった利率や満期の支払額が、市場価格と同じように書き換わるという意味ではありません。また、途中で売る人には、その時の市場価格が売却の成果へ関わります。
実際の債券では、返済への不安、売買のしやすさ、残る期間なども価格へ影響します。変動する利払いの条件や外貨の換算も入るなら、例で固定した条件から外れます。金利の一つの数字だけで、あらゆる債券の円での損益を確定することはできません。
株価や為替へ、そのまま広げない
企業の株価には、金利だけでなく、将来の利益や成長への評価も関わります。景気や販売の見込みも変わる場面で、「金利上昇だから株価下落」と一律に決めると、ほかの経路を落としてしまいます。円高の影響も、輸入する費用や為替予約の条件で違います。
二つの資産を持てば損益が必ず打ち消し合う、という話にもなりません。逆向きに働く要因を一つ見つけた段階と、実際の価格全体を説明できる段階を分けます。シーソーのたとえは、売買の結論より、比べる条件を具体化するところに役割があります。