反脆弱性とは?投資心理との関係でわかる投資判断の使い方

損をした経験を、反脆弱性の証拠にしない

値下がりを経験して「自分は鍛えられている」と考えることと、その投資が値動きから利益を得る構造であることは別です。経験から学べる場合もありますが、損失そのものが次の利益を生むわけではありません。借入や投資額を増やして受ける衝撃を大きくしても、反脆弱性が高まったとは言えません。

ナシーム・ニコラス・タレブが述べる反脆弱性は、単に衝撃に耐えて元の状態を保つ頑健さと区別されます。どの種類の変動に、どの範囲で、結果がどう反応するかという性質です。あらゆる衝撃が大きいほど常に得をする、という無制限の主張へ広げると意味が変わります。

限定した権利の損益を置く独自の仮例

仕組みの違いを読むため、架空の権利を作ります。初めに5,000円を払い、一か月後だけ、架空の株を1株1,000円で100株買える権利です。ほかの費用や税はなく、行使してすぐ同じ時点の株価で売れると仮定します。実在の商品や、その時点の適正価格を示すものではありません。

一か月後の株価権利を使った利益から最初の支払額を引いた損益
800円権利を使わず、マイナス5,000円
1,000円権利を使わず、マイナス5,000円
1,200円差額2万円から支払額を引き、プラス1万5,000円

この設定では下落しても権利の買い手に追加の支払いはなく、上昇した場合には利益が伸びます。ただし、上の三つの結果が起きる確率は置いていません。この表だけでは期待利益も、購入すべきかも判断できません。

損失が小さければ、何度繰り返してもよいのか

例の権利は期限までに値動きが足りなければ、支払額を失います。「失う額は限られている」という安心だけで何度も買うと、その都度の支払額が積み重なります。利益側に大きな可能性が見えても、それに対して払う価格と、結果の起こり方を無視できません。

また、この仮例の権利の買い手と、反対側で権利を売る人の損益構造は同じではありません。実際の商品には取引単位、期限、売買の条件などもあります。「オプション性がある」という言葉だけで、どんな取引も損失限定になると判断することはできません。

現金余力や分散は、別の役割として読む

資金に余地があれば、値下がりした資産を生活費のために急いで売る必要を減らせる場合があります。分散も、一つの見通しの誤りへ依存する度合いを変えます。ただし、現金を持つことや銘柄を増やすことだけで、あらゆる変動から利益が出ると証明したことにはなりません。

心理面で点検するなら、「損失を認めたくないために概念を持ち出していないか」「利益側だけを見て支払額や期限を忘れていないか」といった問いになります。気持ちの強さを測るより、失える額、繰り返した際の負担、途中で資金が必要になる可能性を具体的に読むほうが、概念の誤用を減らせます。

出典