会社が古いことと、事業が続くことは違う
創業百年と聞けば、景気の変化を乗り越えてきた強さを感じます。しかし、その百年間、同じ商品や顧客関係が続いていたとは限りません。会社の名称、法人としての存続、商品の需要、株主が得る利益は、それぞれ別の対象です。
リンディ効果は、過去の存続期間と今後の存続期間の見積りを結び付ける考え方です。Toby Ordの研究は、その成立条件や複数の定義を検討しています。あらゆる対象について、過去の年数と同じだけ未来も続くと断定できる法則ではありません。
歴史の異なる二社を比べる独自例
架空のA社は創業百年ですが、以前の主力製品をやめ、二年前に始めたサービスへ事業を転換したとします。B社は創業十年で、同じ製品を継続販売しています。A社の会社史の長さを、その新サービスの百年の実績として数えるのは誤りです。
A社には蓄積した人材や取引関係が役立つ可能性があります。その一方で、新サービスの需要や収益性は別途調べる必要があります。B社も十年販売できたことだけで将来は保証されません。代替製品の登場や主要顧客の変化があれば、過去の継続を支えた条件が変わるからです。
生存者バイアス、反脆弱性との比較
生存者バイアスは、現在残っている対象だけを見て、消えた対象を除外することで判断が偏る問題です。今残る老舗だけを並べて「長く営業すれば失敗しない」と結論づけても、同じ頃に創業して廃業した会社はその比較に入っていません。観察する集団の選び方の問題です。
反脆弱性は、揺さぶりや変動への単なる耐久性にとどまらず、それを通じて改善・強化される性質を指す考え方です。存続が長い事実だけでは、危機によって事業が強くなった原因まで証明できません。リンディ効果、生存者バイアス、反脆弱性は同じ意味の言い換えではありません。
企業比較では、年齢以外の資料が要る
実際に比較するなら、会社史のどの期間に現在の事業が生まれたか、顧客や技術の条件が続いているかを調べるところから始められます。規制、販売方法、資金繰りが変われば、長い実績の読み方も変わります。年齢だけから倒産確率や将来の株価を計算することはできません。
また、事業が存続しても、株価が高すぎれば良い投資になるとは限りません。過去の耐久性は調べる手掛かりですが、現在の価格の妥当性や利益の見通しを置き換えるものではありません。A社とB社なら、会社の年齢を比べる前に、同じ事業について同じ期間の資料を読んでいるかが最初の問いになります。