昔の成功理由を今の決算へ当てはめるとき
五年前には高収益だった商品でも、競合の登場で採算が変わることがあります。昔の成功例を覚えているほど、新しい悪材料を例外として扱いやすくなります。
確証バイアスは、自分の考えに合う情報を重く扱い、反対の証拠を軽く扱う傾向です。情報をたくさん集めても、集め方が偏れば判断は改善しません。保有年数の長さそのものは、その会社の将来が安全である証拠にはなりません。
購入時の仮説を一年ごとに更新する
購入時に「主力商品が伸び、利益率も維持できる」と考えたなら、その二つを別々に追います。仮に売上高が100から120へ増え、営業利益が10から8へ減れば、営業利益率は10%から約6.7%へ下がっています。売上の伸びだけを成功の証拠として保存すると、利益率を維持するという元の条件が消えてしまいます。
長く持つことは、購入時の説明をそのまま守り続けることではありません。新しい開示を読み、当時の仮説が今も支持されるのか、違う事業へ変わったのかを確認します。元のメモを消さずに日付を付けて更新すれば、理由を後から都合よく差し替えたかも見返せます。
悪い四半期を見ても即売却とは決めない
反対材料を読むことは、悪い数字が一つ出るたびに売ることではありません。工場の稼働前費用や一時的な値引きで利益率が下がる場合と、競争激化で採算が継続して落ちる場合では、その後に確かめる数字が違います。会社の説明を受け入れるなら、費用がいつ減る予定か、利益率がどの程度戻る想定かを具体的に残します。
次の開示でも説明した回復が確認できないなら、仮説を見直す材料が増えたことになります。「長期だから待つ」という言葉だけで条件を先送りしません。保有継続と一部売却を比較する際は、今の価格、保有比率、使う予定の資金も並べます。長期の方針を守ることと、反証を無視することは区別できます。
同じ条件の資料で変化を追う
見直しでは、過去と今回の数字が同じ事業範囲かを確かめます。買収で連結範囲が増えた売上と、既存商品の売上は同じ意味ではありません。会社が都合よく選んだ数字だけでなく、変更前後の説明や比較表を確認します。
反対材料を同じ数だけ集めれば公平になるわけでもありません。資料の新しさ、対象期間、実績と予想の違いを合わせ、確認できた事実と自分の解釈を分けます。購入前に残したメモへ、今回分かったことと分からないことを書き足すと、保有理由を後から差し替えていないかを見返せます。