仕事のつらさが、買う理由へすり替わる時
昇給しない、転職がうまく進まない。そんな時に他人の運用益を見ると、投資なら状況を早く変えられると感じるかもしれません。生活を変えたいという希望そのものと、いま選ぶ商品がその希望を満たすかは、別の問いです。
仕事と投資の心理を考えるとは、職場での感情が売買額や収益への期待にどう入り込んでいるかを見直すことです。気持ちが強いから判断が必ず誤りという意味でも、仕事に満足していれば冷静という意味でもありません。
欲しい月収を、元本に対する率へ直す
独自の仮例で、運用に回せる資金が100万円あり、毎月5万円の利益を得たいとします。年間の希望額は60万円なので、元本100万円に対して単純計算で年60%に当たります。
これは希望額を率に置き換えただけです。利益を毎月取り出し、元本の基準は変えず、複利や費用、税金は考えていません。実際にその収益を得られる商品や方法がある、という予測ではありません。
必要額が大きいほど高い収益を求めたくなりますが、必要だから市場が応えてくれるわけではありません。不足を埋めるために借入や売買額を増やすと、狙いが外れた時には家計の不足がさらに広がる場合があります。
他人の利益と、自分の働き方を同じ尺度で比べない
MoneySenseは、周囲の利益を逃したくない感情や、好調な運用を自分の技量と考える偏りを説明しています。ただし、画面に出ている利益だけでは、その人の元本、保有期間、過去の損失までは分かりません。給与と、一度の売却益や含み益を同じ月収として比べることにも無理があります。
仕事の評価が不満だから、その反対側にある売買の成功で自分を証明する、という課題を作ると、損失を認めることまで難しくなります。購入時の見立てを変える情報が出たかどうかは、職場で受けた評価とは別に判断する材料です。
働き方の選択肢と、運用の見立てを別に残す
まず不満が収入、仕事内容、拘束時間のどこにあるかを言葉にすると、転職、学習、副業、支出の見直しなど、相場以外の選択肢も比較できます。それぞれ実行に費用や時間がかかり、成功が約束されるわけではありません。
投資については、何を根拠に保有するか、生活費はいつ必要か、見立てが変わった時にどう対応するかを残します。買う理由と買わない理由を同じ数だけ並べる必要はなく、結論を変え得る事実を探す方が有用です。仕事への感情が落ち着いた後にも同じ根拠が残るかが、一つの点検になります。