役に立つのは、取引を振り返る視点
売った後に値上がりすると「判断は全部間違っていた」と感じ、偶然利益が出ると「根拠も正しかった」と思いがちです。米国の投機家ジェシー・リバモアを紹介したRichard Smittenの著書には、取引を記録して振り返る記述があります。人物から学ぶ利点は、結果の印象だけで終わらせず、自分の判断を点検するきっかけになることです。
記録があると、注文前の想定と後から付け足した理由を比べられます。記録そのものが利益を生むという意味ではありません。買う条件が誤っていた可能性や、売買するほど費用が増える問題も残ります。
株数を含めて損失の想定を作る
以下は本人の実取引ではなく、国内株を現物で買う独自の仮例です。1株1,000円で100株を購入し、950円まで下がったら売却を検討するとします。両価格で全株売買できた場合、購入代金10万円に対し、損失は(1,000−950)×100=5,000円です。手数料、配当、税金は除きます。
同じ価格条件でも300株なら想定損失は1万5,000円です。損切りの割合だけを決め、株数を増やせば、家計が受ける金額の負担は増えます。逆に100株が売買単位の銘柄で、その単位では負担が大きいなら、無理に注文しないという選択もあります。
撤退条件と約定価格は一致するとは限らない
この例で950円を条件とする逆指値を使っても、950円で必ず売れるわけではありません。条件到達後に成行や指値の実注文が出る仕組みで、急落や売買の少なさによって、予想外の価格で成立したり、全部を売れなかったりします。
したがって5,000円は、前提どおりに売買できた場合の試算です。最大損失を固定する保険ではありません。翌朝に大きく下放れて始まる場合なども考え、注文の種類、数量、有効期間を記録に残すと、判断と執行のどこが想定と違ったかを分けられます。
規律を守った取引でも、検証は続く
振り返るときは、決めた条件を守れたかと、その条件に合理性があったかを別々に読みます。ルールを守った一度の損失で直ちに全否定する必要はなく、一度の利益だけで使える方法とも断定できません。
値動きを見続けられる人の取引を、仕事中に注文を確認できない人がそのまま写すのも難しい話です。学ぶ対象を人物の大胆さに置くより、売買前の記録、株数、実行結果の差に絞るほうが、自分の誤りを具体的に直せます。回数を重ねた検証にも過去の成績の限界があり、将来の利益は確定しません。