NISA口座で「損失回避バイアス」を考えるときの注意点

非課税だから損を取り戻せるわけではない

「NISAの枠を使ったから、プラスになるまで売れない」と感じることがあります。

損失回避バイアスは、同じ額の利益より損失を強く嫌いやすい傾向です。NISAでは「せっかく非課税枠を使ったのだから、利益が出るまで売れない」と感じることがあります。しかし、税制が非課税にするのは対象商品の運用益です。事業が悪化した株価を元へ戻したり、投資元本を保証したりする仕組みではありません。

含み損でも保有を続ける判断自体が誤りとは限りません。長期の購入目的と商品の中身が変わらず、家計にも無理がないなら継続する理由はあります。確かめるべきなのは、非課税という言葉だけで商品や保有比率の点検を省いていないかです。

30万円が24万円になったときの比較

架空の例として、NISAで30万円分購入した商品が24万円になったとします。手数料と分配金を除く含み損は6万円です。売れば6万円の損失が確定しますが、売らない場合も、現在換金できる価値が24万円である点は変わりません。元の30万円へ戻るには、今の価格から25%の上昇が必要です。

「6万円を確定したくない」という理由と、「今から24万円をこの商品へ投じたい」という理由を別々に書きます。後者が説明できないなら、購入時の価格に判断が引きずられている可能性があります。一方、別の商品へ乗り換えても値上がりは保証されません。売買費用、保有先の重複、資金を使う時期も含めて比較します。

損失の税務と翌年の枠は別に考える

2026年10月22日時点で、NISA口座内の譲渡損失は、課税口座の利益や配当との損益通算、翌年以降への繰越控除の対象になりません。課税口座の利益が別に6万円あっても、この例のNISA損失6万円を差し引くことはできません。損失確定で税金が戻ると考えて売却しないようにします。

2024年からのNISAでは、売却した商品の取得金額に相当する非課税保有限度額を翌年以降に再利用できます。この例では売却額24万円ではなく、取得金額30万円が計算の基準です。ただし同年の年間投資枠が売却で戻るわけではなく、翌年の買付けもその年の年間投資枠の範囲内です。枠が再利用できることと、失った6万円が戻ることは別です。

残った枠より家計と保有先を確認する

年末に枠が余っていても、使い切る義務はありません。含み損を薄めるために別の生活資金を入れると、税制上の上限に収まっていても家計の許容額を超えることがあります。購入前に、近い将来に使う預金を除き、追加後の資産配分を確認します。

個別株であれば業績や財務、投資信託であれば運用対象・費用・資産配分を見直します。値下がりだけを理由に買い増さず、当初の想定と何が変わったかを一文にします。口座の選択と商品の保有判断を分けると、非課税の期待に引っ張られた取引を点検しやすくなります。

出典