長く持つ間に、企業の中で何が起こるか
株価を見る回数を減らして長く保有しても、企業の価値が自動的に増えるわけではありません。利益を生み続ける仕組みがあるか、その利益を事業の拡大や株主への還元にどう振り向けるかで、持分の中身は変わります。ここでいう長期投資は、企業の経済的な成果を継続して読む考え方です。
バフェットの2023年の株主向け書簡では、持続する事業の稼ぐ力に加え、追加の資金を投じて高い成果を得られる企業を重視する姿勢が示されています。一方、勝ち残る企業を見分ける難しさにも触れています。過去の成功企業と似ているだけで、同じ将来を期待できるわけではありません。
利益の再投資を追う独自の仮例
架空の会社Aが、新しい製造設備へ1,000万円を投じるとします。その設備から一年間に増える現金収入について、運転に必要な支出、維持費、税などを引いた後で200万円が残る、という計画を置きます。初期の1,000万円はこの200万円から再び引かず、設備導入前の基準と比べた増分として考えます。
初期支出に対する一年の増加額は200万円÷1,000万円=20%です。ただし、これは説明用の単純な比較で、会社全体の投下資本利益率や、設備の全期間を評価する内部収益率ではありません。設備の寿命、追加投資、売却価値を設定していないため、将来の価値全体は計算できません。毎年同じ成果が出るという約束でもありません。
計画と実績を、同じ範囲で比べる
例の会社で追うなら、設備が予定どおり稼働したか、販売数量や原価が計画とどう違ったか、追加の資金が必要になったかが問いになります。会社全体の利益が増えていても、別事業の好調や一時的な資産売却による場合、設備の計画が成功したとはまだ言えません。
逆に、稼働直後の負担だけで長期の成果を否定するのも早計です。計画時点でいつ成果を見込んでいたかと、遅れの理由を比べます。ただし「将来のため」という説明だけで、繰り返す未達を無期限に先送りする必要はありません。1992年の本人書簡にも、長期志向を実績不足の説明に使う経営への注意があります。
良い再投資先でも、価格と家計の条件は残る
企業の再投資が成功しても、その成功を大きく先取りした価格で株を買えば、投資家の利益が十分になるとは限りません。事業の成長率、株価の上昇率、自分の受取利益は同じ数字ではありません。追加発行による持分の変化や、資金調達の負担も読む対象です。
保有を続ける理由は、以前に買った価格よりも、今後の稼ぐ力と現在の条件から考え直せます。同時に、自分が資金を使う予定の時期も変わり得ます。企業の再投資に長い時間を与えられることと、家計が途中の下落や換金の難しさに耐えられることの両方が、長期保有の条件になります。