ハワード・マークスを長期投資に生かす視点

十年後に伸びる会社でも、来年の返済がある

「長期で保有するから、目先の悪化は気にしない」と決めても、投資先が当面の支払いを続けられるかは残ります。運用会社オークツリーの共同創業者ハワード・マークスは、資金を借りやすい時期と借りにくい時期の変化を論じています。これが信用サイクルを考える一つの入口です。

信用は、借り手が約束どおり返済できると貸し手が判断して資金を提供する関係です。景気への期待や貸し手の慎重さ、金利などで条件は変わります。一定年数で機械的に繰り返す周期ではなく、次の転換日を確定するカレンダーにはなりません。

成長計画より先に、支払いの不足を読む例

以下は単純化した架空企業の一年間の資金繰りです。期首の現金が3,000万円、年内の営業上の入金見込みが6,000万円、営業費用などの支払いが7,000万円、借入金の元本返済が4,000万円とします。他の入出金を除けば、残高は3,000+6,000−7,000−4,000=マイナス2,000万円です。

不足を埋める借換え、資産売却、追加の出資などが必要になります。過去に借りられたという実績だけで、今回も借換えできるとは決まりません。なお、これは年単位の合計だけを見た試算です。支払いが入金より先なら、年末の不足額より大きな現金を途中で必要とする場合もあります。

長期の成長予想があっても、条件は変わる

例の会社に将来売上が増える計画があっても、その入金が返済日に間に合うとは限りません。借換えできても金利が上がれば利益を圧迫し、資産売却では将来の収益源を手放す場合があります。増資で資金を調達するなら、既存株主の持分が薄まる可能性もあります。

調べる対象は、利益の予想だけではありません。現金、借入金の返済予定、借入条件、未使用の融資枠の条件などが候補になります。契約や開示にない資金提供まで、好意的に仮定して埋めない読み方が必要です。

株主の時間と、企業が使える時間は違う

投資家に売る予定がなくても、企業の倒産や事業の収益力の低下による損失が、時間の経過だけで解消するわけではありません。短期の株価の上下を許容することと、返済能力の悪化を放置することを分けて考えます。

長期で見る際は、当初期待した需要や競争力が残っているかと、その実現まで資金が続くかを併せて読みます。慎重に見る姿勢も、借入れのある会社をすべて避ける一律の規則ではありません。返済原資と期限がどう対応しているかを具体的に調べることが、この視点の使い方になります。

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