山谷の位置と、一定期間の平均は、見ているものが違う
ダウ理論で使うトレンドの見方は、価格の高値と安値がどちらへ移っているかに注目します。移動平均は、指定した期間の価格を平均し、日々の細かな動きをならして読みます。同じチャートに表示できても、計算や観察の対象は同じではありません。
ダウ理論には、長短の流れや指数・出来高の確認という考えも含まれます。山谷と移動平均を比べることは、そのうち価格の方向を読む部分についての比較です。
五つの終値から、単純移動平均を出す仮例
独自の仮例で、連続5営業日の終値を1,000円、1,050円、1,020円、1,080円、1,030円とします。合計5,180円を5で割ると、この日の5日単純移動平均は1,036円です。最後の終値はその平均を6円下回ります。
ここから分かるのは、その日の価格が、直近の五つの平均より低いということです。前日の移動平均を計算するための、それ以前の終値は置いていないので、移動平均線が下向きだとまでは言えません。
また、終値が平均を下回っただけで、高値と安値がともに切り下がる構造や、より長い期間の転換まで確かめたことにはなりません。この例は実在銘柄の価格や売買結果ではなく、指標の答える問いを分ける設定です。
平均の期間を変えて、都合のよい結論を探さない
単純移動平均は期間を長くすると変化が滑らかになりますが、最近の価格へ反応するまでの遅れも大きくなります。山谷の見方でも、小さな揺れを採るか、大きな節目だけを採るかで、見える方向が変わることがあります。
判断が合わなかった後に期間だけを切り替えると、事前に同じ方法を使ったことにはなりません。比較する足の長さ、終値や高安の種類、山谷を採る基準をそろえて残す必要があります。
価格から読む方向と、事業から読む価値を分ける
企業の売上、費用、現金収支などから見通しを考える分析は、主に価格を読む方法とは別の問いを扱います。チャートが上向きでも利益の持続性が確かとは限らず、事業が成長していても買値次第で運用結果は変わります。
山谷と移動平均が同じ方向を示しても、どちらも同じ価格データに基づく部分があります。独立した二つの事実が追加されたと数えることはできません。方向を読む材料と、投資先や資金配分を決める材料をつないで検討することになります。