似た心理でも生じる時点が違う
後知恵バイアスは、結果を見た後に「最初から予測できた」と過去の見通しを捉え直す傾向です。これに対し、確証バイアスは、もともとの考えに合う情報を集めたり、反対の材料を軽く扱ったりする傾向です。売買前に材料を選ぶ段階と、売買後に振り返る段階で分けると区別できます。
両方が同じ取引で起きることもあります。心理の名前を一つだけ付けることより、どの段階の資料や記録を直せばよいかを見つけるために比較します。
増収決算で上がると考えた架空例
A社について「売上が10%増えれば株価も上がる」と予想したとします。発表前に増収を示す受注資料だけ読み、利益率が下がる可能性を示す会社説明を無視したなら、確証バイアスを疑う場面です。まだ株価の結果を知る前でも、情報の扱いが偏っています。
発表後、実際には売上が10%増えたものの利益率が下がり、株価が下落しました。そこで「利益率悪化だから下がるのは分かっていた」と言い直すなら、後知恵バイアスに近い振り返りです。元の予想が残っていれば、見通しが変わった時点を確かめられます。後から利益率の説明ができることと、事前に下落を予測できたことは同じではありません。
結果がよければ良い判断とは限らない
結果の損益だけで意思決定を評価する問題もあります。調査せずに資金を一社へ集中し、偶然の材料で値上がりした取引でも、「利益が出たので判断は正しかった」と結論してしまう場面です。これは将来の同じ集中投資まで正当化しかねません。
後知恵バイアスが「当時どこまで予測できたか」の認識に関わるのに対し、この採点は「判断の手順が適切だったか」を結果で置き換えています。反対に、資料を確認して上限内に抑えても、予測できない出来事で損失が出る場合はあります。結果と手順を別々に評価すれば、損失をすべて調査不足と決めることも避けられます。
情報選びと振り返りを別々に直す
確証バイアスを点検するなら、注文前に自分の見通しへ反する資料を探し、売上だけでなく利益率や借入も確認します。後知恵バイアスを点検するなら、予想の原文と資料の公表日を保存し、結果が出た後の説明を別欄へ追記します。結果による採点を避けたいなら、保有量や事前の条件を守ったかも記録します。
これらの作業は予測を当てる保証ではありません。調べた事実と不確実な仮定を分け、自分が制御できる手順を振り返る方法です。他人の失敗を後から評価する際にも、その人が当時入手できた情報を確認してから、何が不足していたかを考えます。