良い会社なら、いくらで買ってもよいのか
身近な商品が人気で、経営への信頼もある。そこから「長く持てば購入価格は気にしなくてよい」と進むと、事業の評価と投資の評価が混ざります。バフェットの投資哲学では、事業が生むお金と、その持分を手に入れるために払う価格の関係を考えます。長期保有だけを取り出した売買規則ではありません。
本人の1992年の株主向け書簡でも、将来の現金収支を見積もる難しさを説明しています。手順を知ることと、将来を正しく予測できることは違います。数字を細かく計算しても、前提の確かさが増すとは限りません。
一年後の受取額だけを変えた独自の計算
予測が価格の判断へ及ぼす影響を、小さな仮例で考えます。架空の権利が一年後に一度だけ現金を支払い、その後は消滅するとします。ほかの受取額や残存価値はなく、税・費用も除きます。現在の価値を考えるための要求収益率を、説明用に年5%へ固定します。実在の商品や、現在の適正な利率の提示ではありません。
受取額を1万円と見込むなら、現在価値は1万円÷1.05=約9,524円です。見込みを8,000円へ修正すると、8,000円÷1.05=約7,619円へ下がります。9,000円で買えるとき、最初の予測では割安に見えても、修正後の予測ではそう見えません。両方の受取額が同時に実現するという設定ではなく、予測の置き方の比較です。
安全余裕を置いても、見誤りは残る
例は一回の現金受取りだけですが、企業の持分では、その先の売上、費用、設備投資、借入の返済なども関わります。将来の事業をこの一回払いの式だけで評価したことにはなりません。要求収益率を変えても計算結果は変わり、その率を選ぶ判断自体にも幅があります。
見積りより安く買うという安全余裕の考え方も、損失の保証ではありません。元の予測が大きく外れれば、余裕があると思った価格でも損失が生じます。「本人なら買うはず」という想像や、著名投資家の保有情報は、自分の価格評価の代わりにはなりません。
理解できない部分を、保有期間で埋めない
事業を調べる時間や、比較できる資料には個人差があります。売上の源泉や必要な追加資金を説明できない場合、長期で待つだけでは分析の不足は埋まりません。取得後も主要顧客、競争環境、財務の条件が変わっていないかを読み直す作業が残ります。
この哲学の実践上の負担は、買う前の調査だけでなく、持っている間も予測と事実を比べる点にあります。分析に自信があることと、一社へ大きく資金を寄せてよいことも別です。生活で使う資金の期限や、一つの見誤りが家計へ及ぼす額まで含めて考える必要があります。